2019年施行の有給休暇取得の義務化について
更新日:2023.04.17スタッフブログ働き方改革法案の成立に伴い労働基準法が改正されました。2019年4月から年10日以上有給休暇の権利がある労働者に対して、そのうち5日間は基準日から1年以内に時季を指定して年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。今回は有給休暇取得義務化について詳しく見ていきましょう。
目次
有給休暇と法改正の意義について
まず、有給休暇とは「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現に資するという趣旨」の制度と記されています。給与を得ながら休むことが出来る制度のことです。
今回の改正で重要なのは、有給休暇の取得を「労働者の権利」としたことではなく「会社の義務」としたことだと思います。
「労働者の権利」だとした場合は、労働者から会社に有給休暇の希望を申告して取得しなければいけません。そうなると今のまま、休まない文化、休めない事情、休ませない組織は変わりません。日本の有給休暇取得率は低いままで終わってしまいます。働き方改革法案の意味がありません。
結局、労働者は上司の顔色を見て、会社や同僚に遠慮をして、有給休暇の取得を見送らなくてはいけません。「会社の義務」としたことで、会社が自発的に労働者の希望を聞いて有給休暇を取得させなければいけなくなりました。これはとても大きなことだと思います。
これまで、有給休暇を使用するかどうかは労働者に任され、1日も有給休暇を取得しなくてもかまいませんでした。ところが2019年4月以降は、1年間に最低5日間は有給休暇を取得しないと労働基準法違反になります。中小企業のための適用猶予制度もありません。違反すると6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられます。
有給休暇取得の対象者
有給休暇取得対象となるのは以下の労働者です。
- 入社後6か月が経過している正社員、またはフルタイムの契約社員
- 入社後6か月が経過している週30時間以上出勤のパート社員
- 入社後3年半以上が経過している週4日出勤のパート社員
- 入社後5年半以上が経過している週3日出勤のパート社員
但し、全労働日の8割以上出勤していることが条件です。ですので、入社して半年を経過していても、出勤した日数が8割未満の場合、有給休暇は取得できません。業務上のケガや病気で休んでいる期間、法律上の育児休暇期間、介護休暇期間を取得している場合は出勤扱いになります。また、会社の都合で休業していた期間があるならば、会社の休業日数は全労働日数より差し引いて計算する必要があります。
休み方改革のポイント
人手不足なのに休みを増やさなければいけないなんて、会社にとっては泣きたくなるような今回の労働基準法改正。ピンチはチャンスといいます。この機会に会社の雰囲気をガラリと変えてしまうのも、ひとつの対策ではないかと思うのです。誰かが休んでも業務がいつも通りにこなせるような会社の態勢にすれば良いのです。そうなれば、緊急事態に強い会社に成長できます。
また、有給休暇がしっかり取得できる会社になれば、社員が働きやすい会社にもなれます。そうなると新しい人材の採用率も上がるでしょう。そして離職率の低下にもつながります。会社として次の様なことを、前向きに取り組むべきチャンスだと思います。
休むことは良いことだという雰囲気づくりが大事です
上司が自分から率先して休みを取る。また、率先して有給休暇取得を促すことも大切です。部下からの有給休暇申請は喜んで受け、決して嫌な顔をしてはいけません。部下からは有給休暇申請はしにくいものだという認識を上司が持つことが大切です。
休んだことで業務に弊害が出ない仕組みを作る
誰もが有給休暇を取得したいと思っていても簡単には言えません。なぜなら、自分が有給休暇を取得することによって、周りの人に迷惑がかかってしまうからです。そして運よく有給休暇を取得できたとしても、休み明けが大変多忙になってしまう。そういうことも考えれば有給休暇を取得しなくてもいいやと思う人が多いのです。会社としては休む人がいるという前提で業務マニュアルを準備していくことが必要です。
また、資料もみんなで共有できるようにすることも必要になってくるでしょう。ひとつの仕事に対して2人の担当者が付くことができる仕組みができれば、お互いにカバーできるので理想的です。
有給休暇取得の義務化によって会社側からするべきこと
計画年休制度を利用する
計画年休制度を利用する場合は、労働者の代表と労使協定を結ぶ必要があります。役所等への届け出は必要ありませんので社内で協定を保管しておけば問題ありません。
メリットは労働者の有給休暇取得日数を会社が個別に管理しなくてもよいことです。計画年休制度ですと、社内で一斉に有給休暇の日を定めることができます。また、部署ごとにも、個人別にも有給休暇取得日を定めることが可能です。デメリットは労使協定で決めた有給休暇取得日を会社側の都合では変更することが出来ないことです。
業務に支障が無いように休みを指定することが難しい業種の場合は、計画年休制度を利用することは厳しくなるでしょう。また、普段から有給休暇を取得している人は、更に有給休暇取得日数が増えますので相対的に見て有給休暇消化日数が増えてしまいます。
個別に指定する方式
労働者一人一人について個別で有給休暇取得日を決めていく方式です。この場合のメリットは、労使協定は必要ありませんので、労働者と会社が個別に話し合い有給休暇取得日を決めることができます。
普段から5日以上有給休暇を取得している労働者に対しては、会社から有給休暇を指定する必要が無くなります。デメリットは労働者一人一人の有給休暇取得日数を管理しなくてはいけないので、管理が大変です。うっかり忘れてしまわないようにしないといけません。
どちらの方式が良いのかは会社によって違うと思います。普段から有給休暇を取得している労働者が多い場合は個別方式が良いかもしれません。有給休暇を取得している労働者が少ない場合は、労使協定を結び計画年休制度を利用する方が効率は良いかと思います。
有給休暇取得に関しての疑問点について
連続で有給休暇を取得することは可能なのか?
可能です。ただ、会社の事業が正常に運営できない場合においては、他の時季に与えることができるとされていますので、会社との話し合い次第になるでしょう。
分割して取得することは可能か?
基本的に有給休暇は1労働日単位です。日数を分割して取得することも可能です。時間単位で取得となると難しいかと思われます。但し、労使協定に定めがあれば時間単位で取得することも可能でしょう。
有給休暇の有効期限は?
今後、変更になる可能性は高いですが、現在は2年間と定められています。
有給休暇の買い上げはできるのか?
原則としてできません。「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現に資するという趣旨」に沿わないからです。但し、退職時には対応しているケースが多々見られます。
有給休暇の取得理由の報告義務はある?
ありません。ですが、今後もお世話になる会社ですから、取得の理由を当たり障りのないように報告しておくのが得策ではないでしょうか。
今回は労働基準法改正に伴う有給休暇取得義務化について説明しました。中小企業にも適用猶予はなく2019年4月施行です。違反した企業には罰則も適用される可能性がありますので、すぐに自社にあった対策を取る必要があります。いろいろと思うところはあるかもしれませんが、今回の改正が、会社にとっても労働者にとっても、プラスになることを期待しています。
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