経験学習とは?基礎知識や人材育成のポイント
更新日:2023.06.14ビジネス豆知識経験学習は、その名の通り経験を通して学習する方法です。ビジネスシーンでは、人材育成の方法のひとつとして従業員の能力開発や将来的な成長に活かせると期待されています。職場で取り組む場合は、学習方法の概要や導入時のポイントを理解しておくと役立つでしょう。そこで今回は、経験学習の基礎知識を踏まえたうえで、基本サイクルや導入時に意識したいポイントなどをご紹介します。
目次
経験学習とは?
経験学習は、日々の経験から学びを得る学習スタイルです。ビジネスの場では、様々な現場経験が従業員の成長につながり、通常の業務に活かされる人材育成のプロセスを意味します。
理論的な概要
大まかに表現すると、経験学習は過去の経験から得た学びを将来的な成長に結びつける方法です。これまでに積み重ねた経験を後の行動に活かすプロセスは理論化され、「経験学習モデル」と呼ばれています。レヴィンやピアジェに代表される経験主義者の研究をデイビッド・コルブが発展させ、学習理論の全体的なモデルをまとめました。
経験学習は、いろいろな経験が単なる過去の記憶にとどまらず、将来的な成長への糧として活用されるところが特徴的です。
ビジネスシーンでの意味
ビジネスシーンにおいて経験学習とは、現場での業務経験を従業員の能力開発に活用する人材育成方法を指します。ほとんどの企業では、入社時の新人研修や定期的なセミナー開催により従業員の育成に取り組んでいます。ただ座学は参加者が担当講師の話を聞くだけのスタイルになりやすく、以前から実務で必要となる成果が十分に上がらないと指摘されてきました。
その解決策として注目されている人材育成の方法が、現場経験の学びを成長の糧とする経験学習です。現場は研修やセミナーで得られないものを学べる機会が多く、座学の問題点を補えると評価されています。
経験学習の効果
経営コンサルタントの研究によると、ビジネスシーンで経験学習から得られる学びは全体の約7割を占めるといいます。先輩・上司からの助言やフィードバックからは約2割、残りの1割を研修などのトレーニングから学ぶとの考えが記されています。
これは、「7・2・1の法則」として知られる概念です。周りのアドバイスや研修について、不要と述べているわけではありません。ビジネスの場では、座学などによって得られた学びの質を高める方法として経験学習が重視されているのです。
経験学習の基本サイクル
経験学習を構成する基本サイクルは、「経験 → 省察 → 概念化 → 実践」の流れです。企業で活用する時は、これら4段階のプロセスを通して従業員の能力開発やスキル向上を目指します。
プロセス1:経験
理論化された学習モデルの基本的な流れのうち、4つの段階の先頭に位置するプロセスは経験そのものです。ビジネスシーンに限らず、経験学習は何かを経験するところから始まります。
いずれの経験も将来的な成長の糧になる可能性を秘めていると考えられ、無価値ではないといわれています。プロセスの名称が示す通り、第一段階で経験は必須要素です。どれほど今後の成長につながると期待される内容でも、頭のなかで理論を構築していても、経験と呼べる行動を起こさなければ、何も意味がありません。
プロセス2:省察
経験学習の理論モデルで、経験に続くプロセスは行動の結果を振り返りながら反省する省察です。通常、何かしら行動を起こすと結果が伴います。どんな結果が生じたか見直すとともに、自分の内面に目を向けて成功の理由あるいは失敗した原因について多角的な視点から熟考するプロセスが省察です。
成功理由が分かると、さらに成功し続けやすくなります。また失敗した原因を究明しておけば、同じミスの繰り返しを防ぐのに有効です。いずれにしても経験を成長へつなげるには、結果の良し悪しに関係なく、適切に省察する必要があります。
プロセス3:概念化
省察を済ませた後は、一通りの反省内容を他の場面でも応用できる形に概念化しましょう。経験学習では、個々の経験の結果について反省した内容を以後の成長につなげることが求められます。
自分の個人的な反省点を上手に概念化する場合、すでに数々の場面で応用されている過去の類例を参考にする方法があります。一般論に概念化すると聞くと、世界的に通用する優れた理論の構築を思い浮かべるかもしれません。実際は誰もが評価する理論を生み出す必要はなく、自分の身の回りで使えれば十分と考えられています。
プロセス4:実践
経験学習の最後のプロセスは、ここまでの作業が高い効果を発揮するか実践を通して確かめる段階です。個人的な反省点の概念化から生まれた理論は仮説であり、どれほど将来的な成長につながる効果があるか定かではありません。仮説の将来性を判断するには、実践の場で検証する必要があります。
この時どんな検証結果でも、現実に目を向けることが大切です。思わしくない結果になった場合、そのまま後々の現場経験に応用しても将来的な成長は見込めないでしょう。どこに問題点があるか確認し、仮説の不備を手直しする作業は不可欠です。最初は満足できる結果が得られなくても、一連のサイクルを何回か繰り返せば応用力に長けた理論に発展すると期待されています。
職場で導入する時のポイント
経験学習を職場で導入する時、とくに意識したい大切なポイントは積極的に現場経験を促す姿勢です。省察や概念化の作業を本人に任せず、活発にコミュニケーションを取ることも求められます。
現場経験を促進
職場で人材育成する方法として経験学習を取り入れる場合、現場経験の促進は必須といえるポイントです。普段、すべての従業員は多くの担当業務を抱えています。次々に仕事の納期が迫ってくるなか、今後のスキルアップに向けて自分から現場経験を志願する余裕は生まれないと予想されます。
そんな状況を想定した場合、従業員を職場全体でフォローする体制づくりは欠かせません。職場は従業員が各々の担当業務から気兼ねなく離れられる環境を整え、普段の作業では身につけがたい学びが得られる貴重な現場経験を促す姿勢が望まれます。
コミュニケーションを活性化
現場経験を終えた従業員が以降のプロセスに進んだ時は、周りが活発にコミュニケーションを取ることも重要です。第二段階の省察では多角的な視点が求められ、第三段階の概念化では過去の類例について情報があると理論構築に役立ちます。とはいえ、1人で作業すると視野は狭くなりやすく、情報収集にも時間がかかるため簡単ではないと指摘されています。
周りが各自の意見や考え方を述べると、現場経験した本人の視野を広げるのに効果的です。さらに個々の経験談を話せば理論構築の助けになり、コミュニケーションの活性化には大きな意味があると見られています。
検証作業も怠れない
経験学習の導入時には、実践での検証作業も怠れません。現場経験した本人に余裕がなければ、他の従業員が代わりを務める選択肢もあります。現場経験した本人が日々の業務に追われていると、時間の都合から実践段階まで進むのは難しくなるかもしれません。周りでフォローするにも限界があり、現実的には本人が検証できずに終わる可能性は小さくないと考えられます。
企業は経験学習そのものを最後のプロセスまで続ける必要があります。仮説段階の理論が他の従業員の育成に使えるかチェックすれば、どれくらい企業内で通用するかを判断できるでしょう。検証作業は、他の従業員が代わっても問題ありません。諸事情で本人が途中から不参加になっても、企業は最後まで経験学習を遂行することが求められます。
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