ベーシックインカムがビジネスにもたらす影響とは

2020.07.21ビジネス豆知識
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最近、所得格差や貧困問題が拡大するなか世界的に注目され始めた制度がベーシックインカムです。導入実績や成功例は少なく、未知の政策ともいわれています。ビジネスにとってはメリットとデメリットがともにあると指摘されており、さまざまな意見が交わされています。もし導入されたとしたら、働き方が変わる可能性もあります。この制度が始まったらどういった社会になるのか、考えておくのがおすすめです。今回は、ベーシックインカムの基礎知識やビジネスへの影響をご紹介します。

収入

 

ベーシックインカムの基礎知識

ベーシックインカムとは、最低限度の国民生活を保障するため政府が現金を給付するシステムを指します。

 

ベーシックインカムの仕組み

ベーシックインカムの主目的は、国民生活を営むうえで必要となる最低限の収入を補償することです。

現在、この目的を果たすため、国によっては生活保護や失業保険、医療扶助などが実施されています。ベーシックインカムの場合、これらの制度を一元化したうえで包括的に政府がお金を支給します。

支給対象は国民すべてです。生活保護をはじめとする貧困対策制度とは異なり、世帯の所得レベルも関係なくお金を受け取れます。

また、支給金額が足りないと思えば自分で働くのは自由です。共産主義的な政策とは異なり、市場原理が残っているところも、ベーシックインカムならではの仕組みといえます。

 

ベーシックインカムが注目される要因

近年になってベーシックインカムが世界的に注目を集めている主な要因は、貧富の差の拡大とAIの飛躍的な進化です。

現在、世界各地ではワーキングプアや失業率の高さが大きな問題になっています。生活保護や失業者向けの社会保障は条件が厳しくなる傾向にあり、働いていると所得が少なくても給付金を受け取れないケースが増えました。結果的に、給付条件を満たすため仕事に就かないといった問題が生じています。

AIは以前に比べると性能が大幅に進化し、さまざまな分野で導入が盛んです。やがて、ほとんどの仕事がAIに置き換えられるだろうとまで予想されています。人々は仕事を失う可能性があり、将来への不安は膨らむ一方です。

AIの進出により失業者がさらに増加する可能性もあるため、多くの国はベーシックインカムへの関心を高めています。

 

ビジネスにもたらす影響1:メリット編

ベーシックインカムに期待される主なメリットは、貧困問題の解消、労働意欲の向上、労働環境の改善です。

 

貧困問題の解消

この給付制度が実現した場合、すべての国民は働いているかどうかに関係なく無条件で必要最低限の収入を得られます。

近年、フルタイムで働いても低所得しか得られず、貧困に悩まされるワーキングプアは増加傾向にあります。ただ、現行の社会保障制度ではワーキングプア層のすべてを救済することはできません。

ベーシックインカムによって無条件で最低限の収入が得られるなら、ワーキングプア層も現状からの脱却を見込めます。

 

労働意欲の向上

ベーシックインカムはいまの生活保護と異なり、労働による所得が一定レベルを超えても給付は打ち切られません。自分で仕事を見つけ働けば、その分だけ収入は増えるシステムです。働くことで逆に生活が苦しくなる心配はなくなるため、労働意欲の向上につながると考えられています。

 

給付対象は、即戦力の労働者である成人に限られません。子どもまで含まれるので、家族の多い世帯ほど増収になる計算です。育児にかかるお金の負担が軽減すれば少子化に歯止めがかかる可能性もあり、将来的には労働者不足も解決するかもしれません。

 

労働環境の改善

最低限の生活が保障されると、雇用条件のよくない職場で無理に働く必要はありません。今より、待遇面に恵まれた仕事を選びやすくなるわけです。採用側は好条件で採用する必要に迫られるため、労働環境の改善をもたらすといわれています。

AIの進出も、労働者の環境改善に好影響を及ぼす可能性があります。辛い仕事をAIに任せられれば、国民は好きな仕事を担当できるためです。日々の単純作業の繰り返しから開放され、AIには苦手とされるクリエイティブな業務に打ち込めると期待されています。

 

ビジネスにもたらす影響2:デメリット

ベーシックインカムの導入により生じる大きなデメリットは、財源確保の問題です。無条件で支給されるため、労働意欲の低下や社会全体の停滞も懸念されています。

 

税源確保の問題

全国民に一律で給付となれば、多額の財源確保が不可欠です。ほとんどの国では、現在の税収で対処できる金額ではないと指摘されています。

日本も、例外ではありません。2013年の社会保障費を見た場合、総額110兆円、そのうち医療費を除く年金、失業保険や生活保護に配分された費用は75兆円です。これら全額をベーシックインカムに投入しても1人あたりの毎月の支給額は約6万円にとどまり、必要最低限の収入とは評価できません。

ベーシックインカムの導入が決まった際には、大幅な増税を始めとして税制改革が避けられないと予想されています。

 

労働意欲の低下

無条件で給付金をもらえると、最低限の生活を送るための労働は不要です。収入増による生活レベルの向上を望まなければ、無理に仕事を探さなくて済みます。

クリエイティブな仕事を好条件で選べるとしても、すべての国民が仕事を求めるとは限りません。収入は最低限度でも、無理に働かなくて済むなら自宅でのんびり過ごしたいと望むケースも出てくる可能性はあります。

国民がとくに働きたいと考えない場合、無条件での支給は労働意欲の低下を促すと不安視されています。

労働意欲の低下から派生する可能性のある問題が、社会全体の停滞です。多くの国民がベーシックインカムの収入で満足した場合、買い物は最低限にとどまると考えられます。働かず家にこもる時間が増えれば職場や地域活動でコミュニケーションを取る機会も減り、社会全体の停滞を招くかもしれません。

 

世界の導入事例

ベーシックインカムはメリットだけでなくデメリットも指摘されますが、いくつかの国ではこの制度を実際に導入しています。

 

カナダの成功例

カナダでは、1974~1979年にベーシックインカムが実験的に導入されました。最低限の生活のため必要なお金を毎月支給する内容であり、「Mincome」と呼ばれます。

この取り組みは政権交代により消滅しますが、成功例として知られるケースです。国民にはポジティブな効果があったといわれ、ワーキングプア層の生活が安定するとともに実施後も労働時間の目立った減少はないとの調査結果が残されました。

この実験に限れば、デメリットに挙げた労働意欲の低下は起きていないと見られます。

 

カリフォルニア州の事例

カリフォルニア州ストックトンでの実験的な導入は、2019年から始まりました。調査対象となる125人の住民に、月額500ドルが支給されるシステムです。

ストックトンには財政破綻した経緯があり、収入低下や犯罪多発を解決するため実施されたといわれています。財源は、ベーシックインカム支援団体「Economic Security Project」から提供されました。

3年間にわたる実施を予定しており、今後のどんな結果がもたらされるか関心が向けられています。

 

スイスでも実施を検討されましたが、国民投票により否決されました。主な理由は、財源確保に不安があり給付に制限も設けられたためと指摘されています。これからベーシックインカムを導入するには、議論を深めたうえで国民の理解を得る必要があると考えられています。

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