成功する事業承継とは?活用すべき補助金制度など
更新日:2023.03.16ビジネス豆知識少子高齢化の影響から、事業承継問題に直面する経営者が増えています。廃業を回避するためにも、心から信頼できる後継者に会社を任せたいところです。そこで今回は事業承継の基礎知識と成功に導くポイント、また活用すべき補助金制度をご紹介します。
事業承継とは
事業承継とは、会社経営を後継者に引き継ぐことを指します。これまで培ってきた経営資源(ヒト・カネ・モノ)を後継者にゆだね、次世代へとつなげる経営者の責務です。一般的に事業承継は、以下の3つの要素から構成されます。
◇経営承継:社長業を後継者に引き継ぐこと
◇所有承継:自社ビルや株式といった経営資源を引き継ぐこと
◇後継者教育:後継者を育てるための取り組み
中小企業の経営課題として、自社の経営と株式を「誰」に引き継ぎ、「どの様に後継者を育てるか」が挙げられます。社長業の交替は「経営承認」、経営資源の引き継ぎを「所有承継」といい、さらに社長自身が「後継者教育」に取り組まなければなりません。
【経営承継】誰を後継者にするのか?
近年、製造業を中心“後継者不足”が問題視されています。「誰」を後継者にするのかはもちろんのこと、「後継者にふさわしい人材の確保」も容易ではありません。一般的に考えられる、経営承継の選択肢は3つです。
◇息子や娘などの親族に承継する(親族内承継)
◇親族以外の従業員に承継する(親族外承継)
◇M&Aで承継する
中小企業庁が公表した「事業承継に関する現状と課題」によると、1980年代における親族内承継の割合は83.5%でした。それが時代とともに、親族内承継と親族外承継(M&Aも含む)の割合が逆転しています。例えば直近10年においては、親族内承継が26.5%、親族外承継が65.7%となりました。
親族内承継が激減した理由は、“子どもに事業を継がせる不幸”を意識する経営者が増えたからです。一時期に比べて景気が好転したとはいえ、いまだ人材不足や業績不振に悩まされる中小企業は少なくありません。その経営状態のまま親族に引き継ぐのは、酷と考える経営者が多いようです。
また1980年当時に比べると、経営者の思考も変わりつつあります。「子どもが会社を引き継ぐのは当たり前」といった経営者は減り、「子どもには自由な道を選ばせたい」と考える方が増えた印象です。経営者と親族の間に“かい離”が発生していることもあります。「いつかは会社を継ぐだろう」と思い込んだまま、引退時期を迎えてしまうケースです。結果、子どもへの後継者教育がままならないため、親族外に承継せざるを得ません。
直近10年で増加した親族外承継ですが、割合としては従業員への承継が26.4%、第三者(M&A)が39.3%です。従業員への承継に関しては、経営者が株式を保有した状態で社長業のみ引き継ぐ傾向が見られます。一方で。個人保証・担保保証や自社株の売買問題が解決せず、先送りとなるケースが少なくありません。
そのため、友好的M&Aにより事業承継問題を解決するパターンが増えています。従来のM&Aへのイメージは「従業員がリストラされる」「M&Aは中小企業を対象としない」といったものが中心でした。しかし近年のM&Aの浸透にともない、そのメリットが見直される様になったのです。会社と経営資源を次世代に残すため、M&Aに踏み切るのは有効な選択肢でしょう。
出典:事業承継に関する現状と課題
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf
【所有承継】何を引き継ぐのか?
所有承継で引き継ぐ“モノ”は、大きくわけて3つあります。
◇物的資産:株式・預貯金・建物・事業用設備など
◇知的資産:人材・技術力・経営理念・組織力など
◇関係資産:人脈・コネクションなど
これらは「有形資産」および「無形資産」に大別できますが、いずれも後継者に引き継ぐ“モノ”に変わりありません。承継に関わるポイントもいくつかあるので押さえておきましょう。物的資産の所有承継においては、贈与税や相続税が発生します。株式や事業用資産の承継が分かりやすい例です。資産状況によって多額の税金が発生するため、税負担を考慮した承継法を検討しましょう。
知的資産とは、経営理念などの書類上では表せない資源を指します。「経営理念を引き継ぐ必要はあるのか?」と考える後継者もいますが、中小企業は経営者と従業員の関係性により成り立っています。仮に経営者の交替タイミングで企業理念が変わった場合、従業員との信頼関係が失われ、多くが辞職するケースもあります。これは関係資産にも通じる部分がありますので、目に見えない“会社の強み”は、慎重に引き継ぐ必要があるでしょう。
【後継者教育】どの様に後継者を育てるのか?
後継者教育は、経営者と後継者の情報共有および認識のすり合わせからはじめます。とりわけ親族内承継においては、「息子(娘)が本当に引き継いでくれるのか」「親は会社を継がせたがっているのか」など、双方が本音で話し合うシーンが少ない傾向にあります。まずは経営理念と後継者候補の話し合いから取り組みましょう。経営者は、会社の歴史や経営理念への想いなどを後継者に伝えます。また後継者は、それを承認したうえで経営方針や新たな事業構想を伝えて下さい。それを議事録に残すなど、“見える化”して共有することが大切です。
情報共有と双方理解が進んだら、特定の事業部の責任者に命じます。一定期間で所属部門をローテションさせると、自社における業務プロセスの理解が進むでしょう。その後、常務取締役や専務取締役などに任命し、経営陣としての育成をはじめます。
在職の経営者がフォローしつつ、経営者としての責任感やリーダーシップを身につけさせます。後継者教育において重要なのは、一つひとつの段階を踏むことです。最初から業務未経験の息子・娘を役人に任命する経営者もいますが、極めてリスキーです。業務経験や従業員との関係性が構築されていないため、現場では使いものになりません。はやい段階で教育体制を整え、一人前の経営者に育てあげましょう。
事業承継を成功させるポイント
ここでは、事業承継を成功に導くポイントをご紹介します。
1.事業承継プランの策定
事業承継プランを策定することで、スムーズかつ不備のない事業承継が可能です。経営資産を引き継ぐタイミング・節税対策・他株主との調整などを盛り込みます。必要に応じて弁護士や税理士など、専門家の力を借りることも大切です。従業員や取引先にもかかわらず重要事項ですので、慎重に進めて下さい。
2.従業員や取引先に理解を得る
事業承継は経営者、後継者の双方で進めるのが基本です。一方で、所属従業員や取引先の理解得ることも忘れてはなりません。後継者と従業員・取引先の関係が円滑になるよう、経営者のフォローが必要です。
3.はやい段階から着手する
事業承継には相当な引き継ぎ期間が発生します。予期せぬトラブルの発生も考えられるため、はやい段階から着手すべきです。また会社の経営状況によっては、経営改善が必要になることもあります。担保設定の負担や債務保証など、後継者の負担を軽くする取り組みが求められます。
事業承継補助金について
これから事業承継を検討するにあたって、中小企業庁による「事業承継補助金」を活用するのも手です。事業承継補助金とは、経営者交代後に行う“新たな取り組み”をサポートする補助金のことです。最大500万円(平成30年度)の補助が受けられ、事業拡大にともなう人件費や機械調達費、賃料などの経費に充てられます。なお、補助金の申請には、認定支援機関が作成した確認書が必要です。経済産業省による認定税理士に相談してみましょう。
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