企業主導型保育とは?普通の保育園とどう違う?

更新日:2023.03.16スタッフブログ

保育園

近年注目される保育事業形態のひとつに、「企業主導型保育所」があります。待機児童問題解消や女性の社会進出加速を後押しすると期待されており、ここ数年でさまざまな企業が保育所を開設しているようです。そこで今回は、企業主導型保育所の基礎知識や、企業内保育所(事業所内保育所)との違いを解説します

企業主導型保育所とは?

企業主導型保育所とは、2016年に開始された企業主導型保育事業に制度に沿って、一般企業が設立・運営する「認可外保育施設」です。女性の社会進出促進、近年問題視されている待機児童解消を目的に設立される“企業による従業員のための保育施設”となります。

企業主導型保育所の特徴は、大きく分けて4つあります。

□自治体(市町区村)に設立の認可を必要としない
□国から設立・運営にともなう助成金が出る
□近隣住民の子どもが通える「地域枠」を設定できる
□複数の事業者で共同設置・共同運営が可能

企業主導型保育所は認可外保育施設に分類され、市町区村による認可を必要としません。また、施設の工事費用に対する「整備費」、月々の運営費用に対する「運営費」といった2種類の助成金を利用できます。企業が運営する保育施設でありながら、一般的な認可保育施設と同等の公的補助が受けられます。

“企業による従業員のための保育施設”とお伝えしましたが、任意で従業員以外の子どもの受け入れも可能です。保育所の利用枠には「従業員枠」と「地域枠」があり、後者は定員の50%未満の範囲に設定する要件があります。しかし、2019年3月に地域枠を50%以上に設定できる“弾力措置”が取られ、従業員以外の子どものさらなる受け入れが可能となりました。また、単独または複数の事業者で保育所の設立が可能です。詳しくは後述しますが、自社ニーズに合わせた柔軟な運営体制を構築できます。

企業主導型保育事業が開始された背景

企業主導型事業が開始された背景には、1990年以降に急増した待機児童の問題があります。2012年に「待機児童解消加速化プラン」を策定した政府は、50万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童問題の解消に乗り出しました。

その取り組みの一環で、5万人分については企業主導型保育事業で対応する方針となりました。また、企業主導型保育事業が仕事と子育てを両立支援し、女性の社会進出を加速させます。待機児童問題、子育て中の女性の離職問題も同時にカバーできる点から、企業主導型保育事業は年々注目されています。

企業主導型保育所を設立するための要件

企業主導型保育所を設置するには、以下の要件を満たす必要があります。

□一般的事業者であること
□2016年4月以降に新たな保育施設を設置すること

ここでいう一般事業者とは、「子ども・子育て拠出金」を負担している企業を指します。主な要件は上記2項目のみですが、今後の申請には注意が必要です。2019年6月時点、内閣府による検討委員会報告を受けて「令和元年度の施設の新規募集」が未定となりました。

2020年以降も新規募集は未定となっており、現在は実施方針および募集時期の見直しが進められています。今後自社で企業主導型保育所の設立・運用を検討する場合、正式な発表を待ってから整備着工に移る様にしましょう。

企業主導型保育所の運営形態

企業主導型保育所の運営形態として、以下が想定されます。

【企業主導型保育所の設立・運営例】

□パターン1:A社が単独で設立・運営
□パターン2:A社が単独で設立し、B社に運営を委託
□パターン3:A社とB社が共同で設立・運営
□パターン4:A社が設立・運用し、B社と利用契約を締結(保育事業者設置型)

もっともスタンダードなのは、A社が単独で設立・運営するパターン1です。ただし本事業は、保育所の運営の委託が認められています。運営コストと相談し、自社で賄うか、他社に委ねるか決めることになります。委託した場合、A社はB社に月々の運営費用を支払います。契約内容によりますが、保育所を利用できるのはA社およびB社の従業員の子どもです。さらに地域枠を設定すると、地域住民の子どもも入所できます。

パターン3の場合、A社とB社が共同で設立・運営します。よってA社およびB社の従業員の子ども、地域住民の子どもが入所対象となります。パターン4は、A社がB社に保育サービスを提供する形です。利用契約を締結することで、A社とB社の従業員の子ども、あるいは地域住民の子どもが入所できます。

上記運営パターンから分かる通り、自社がやりやすい形で運営体制を構築できるのが特徴です。例えば、「保育所は欲しいが従業員(子ども)の人数が少ない」「設立・運用コストの負担が大きい」という場合、他社との共同設立・運用が望ましいでしょう。コスト削減につながるほか、設立後の定員割れを防ぎやすくなります。

企業内保育所と企業主導型保育所の違い

ここでは、企業内保育所と企業主導型保育所の違いを解説します。

認可事業かどうか

企業内保育所は、都道府県と市町区村が指導監査する認可保育施設であり、職員数・保育士の割合・敷地面積・施設設備などの設置基準が設けられています。各基準を満たさなければ、設立が難しいようです。なお、一般的に「保育園」とされる施設も認可保育施設に分類されます。

対する企業主導型保育所は、企業内保育所と設置基準がほぼ変わりません。ただし認可外保育園に分類されるため、市町区村による検査を省けます。企業内保育所に比べると設立のハードルが低く、開所までの時間も大幅に削減できます。

対象年齢の違い

企業内保育所における制度上の対象年齢は、0歳~2歳未満の乳児です。3歳以上の幼児に関しては、提携しているほかの保育施設に入園させることになります。その提携先を見つけるのが、企業内保育所の運用者の課題です。一方、企業主導型保育所に対象年齢の制限なく、3歳以上幼児を受け入れる施設も数多く存在します。

保育の質

“保育の質”は、認可保育施設である企業主導型保育所に軍配が上がります。というのも企業主導型保育所は、市町区村への届け出のみで設立できるためです。自治体の指導監査が入らない分、“保育の質”が事業者に左右される現状があります。その中には、助成金を不正受給するために“ずさんな経営”を続ける企業も少なくありません。

また企業主導型保育所は、保育士の資格を持つ職員が全体の1/2以上いれば設立できます。保育の専門知識やノウハウを持つ職員が少なくても、運営できてしまう点が問題です。さらに公的保険への加入も認められておらず、万が一発生した賠償責任も、すべて事業者が負うことになります。

企業主導型保育所は、定員が20人以上であれば職員全員が保育士の資格を保有していなければなりません。たとえ19人以下であっても、子どもの人数に対する配置基準+1人が必要です(※注)。企業主導型保育所に比べ、資格所有者や専門知識のある職員をそろえなければなりません。設置要件こそ厳しいですが、その分だけ“保育の質”は担保されます。

※認可保育施設における保育士の配置基準・・・乳児は3人あたり1人以上、満1歳以上3歳に満たない幼児は6人あたり1人以上、満3歳以上4歳に満たない幼児は20人あたり1人以上、満4歳以上の幼児は30人あたり1人以上の保育士の配置が必要

地域枠の違い

企業主導型保育所は、2019年3月に取られた“弾力措置”にともない、定員の50%以上を地域枠に設定できます。ただし、これは一時期的な対応であり、今後の方針次第では50%ではなくなる可能性もあるため注意が必要です。一方の企業内保育所は、定員の25%程度を地域枠として開放する義務があります。元より地域型保育事業として創設されたため、このルールに従うほかありません。したがって、地域枠の設定において自由度が高いのは、企業主導型保育所となります。地域枠を50%以上に開放したり、従業員枠を100%にしたりと、柔軟な定員設定が可能です。

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