人事評価や社員管理で生かしたい「ハロー効果」
更新日:2023.03.16ビジネス豆知識ハロー効果は、何かを評価する時に深層心理の働きで印象を歪める現象です。ビジネスではメリットとして作用するとともに、人事評価でエラーを招くデメリットも有しています。ハロー効果について理解を深めておくと、ビジネスに活かせるだけでなく印象による誤った人事評価の防止にも役立つでしょう。そこで今回はハロー効果の概要を解説し、ビジネスでのメリットやデメリット、人事評価でのポイントや注意点をご紹介します。
目次
ハロー効果とは
ハロー効果とは、人や物に対する印象や評価が周辺情報の影響により歪められる心理現象です。
周辺情報で印象や評価が歪む?
日常生活を送っていれば、仕事関係に限らずいろいろな場面で人や物を評価する機会があります。できるだけ客観的に評価しようと思っても、多くの場合にバイアスがかかります。評価を歪ませるバイアスの一種が、周辺情報です。人の場合には容姿や学歴、物の場合には誰が使用しているかといった点があげられます。
見た目の美しさや学歴の高さは、その人の性格や能力についても評価を高めることがあります。物であれば、興味のなかった商品を好きなタレントがもっていると聞き、急に欲しくなった経験のある方は少なくないでしょう。特定の情報が無関係な部分の評価を高めるとポジティブ・ハロー効果、逆に評価を低めればネガティブ・ハロー効果と呼ばれます。
よく知られるハロー効果
ハロー効果が分かりやすいケースとしてよく知られている代表例が、選挙演説やテレビCMです。街頭で行われる選挙演説には、好感度の高い有名人が応援に参加することもあります。政治家が掲げる政策について語らなくても、「応援しています」のひと言は政策のイメージまで向上させる場合が少なくないといわれています。
テレビCMは、ハロー効果を見込んだ宣伝方法の好例です。商品のイメージをよくするため、ほとんどの場合にドラマやバラエティー番組で多くの人気を集めている芸能人を起用しています。これらの事例からは、政治政策やCM商品のイメージがその中身でなく有名人や芸能人の人気に大きく影響を受けると理解できます。
ビジネスシーンに現れるハロー効果
ビジネスシーンにおいてハロー効果がはっきり現れるとよく指摘されるのは、面接の場面です。会社の採用面接において、身だしなみは社会人としての節度をもっているか判断する基準になります。容姿そのものは、仕事の能力と直接には関わってきません。それでも、面接官は身だしなみでなく容姿に目を向けるケースがあるといわれます。
時には、出身地や出身校も能力評価に影響を及ぼす可能性があります。面接を受けている人物が面接官と同郷また母校が同じと分かると、性格や能力に対しても印象がよくなる場合があるとの話です。日常生活から選挙演説やテレビCM、さらに採用面接での状況もふまえると、ハロー効果の影響力は決して小さいとはいえません。
メリットとデメリット
ビジネスにおいて、ハロー効果はメリットとデメリットのいずれももたらします。仕事に取り入れるには、この2面性を理解しておくことが大切です。
好印象をもたらすハロー効果
ハロー効果は一般的に印象を歪める心理現象と表現されますが、会社の好感度を高められる意味ではメリットと考えられます。ハロー効果は、目立ちやすい特徴が他の部分に大きく影響する現象です。会社が自分達の強みを取引先やお客様にアピールすれば、あまり知られていない分野についても評価が高まり仕事への信頼を得やすくなると期待できます。新規顧客を獲得する際にも、ハロー効果は有効です。
この場合、親しみやすさをアピールすると会社への信頼感や安心感を与えることにつながります。これまで面識がなくても心を開いてもらえる可能性が高まり、良好な関係性を築くのに役立ちます。会社が、取引先やお客様の印象をよくするのは簡単ではありません。なかなか有効な方法が見つからない場合、ハロー効果に期待してみる価値はあるでしょう。
イメージダウンも招くハロー効果
ハロー効果は、好印象をもたらすばかりではありません。場合によっては、イメージダウンを招く恐れもあります。このケースについては、テレビCMで思い当たる方も多いでしょう。CMに出演中のタレントが、何か騒動を起こすと姿を見せなくなる事態はよく見られます。タレントの好感度が低下すると、それに合わせ商品のイメージも落ちると考えられているためです。
ひとつの商品トラブルも、他の商品の売上に大きく影響する場合があります。最近は通信環境が整った影響もあり、悪い評判はネットなどですぐに広まります。放置すると、商品だけでなく会社のイメージも悪くなることが珍しくありません。自社の商品にトラブルがあったら、イメージ回復のため迅速な対応が不可欠です。
口コミではハロー効果が顕著になる
ハロー効果はさまざまな場面で現れますが、とくに商品の購入時に影響力をもつのが口コミです。口コミで多くの高評価を得た商品は、それを根拠に購入予定者から「良い商品」と思われる傾向があります。まだ実物を手に取っていなくてもイメージが先行し、購入意欲が高まるケースも見られます。悪い評価が増えると、その逆になります。
「良くない商品」との情報が購入予定者の耳に数多く入れば、興味が薄れても不思議ではありません。場合によっては、そのまま買ってもらえなくなります。ハロー効果は、よくも悪くもビジネスに大きく影響します。多くのメリットを期待できますが、デメリットの作用も忘れてはいけません。
人事評価におけるポイントや注意点
人事評価を適切に実施するには、ハロー効果について覚えておきたいポイントや注意点があります。
人事評価でのポイント
人事評価では、ハロー効果の性質をよく認識しておくことがポイントです。社員を評価する際、ハロー効果は基本的にバイアスとして働きます。評価対象の目立つ部分が、採点結果を多少なりとも左右します。深層心理が原因と考えられ、とくに注意しなければ影響を避けるのは困難です。
長所の印象が強ければ、その影響で欠点を含めた全体評価がプラス方向に偏りがちです。短所が目につけば、それに引きずられ本来はプラス評価になる要素も印象が悪くなるおそれがあります。できるだけ適切な評価を下すには、ハロー効果の影響を抑えるための注意が必要です。
覚えておきたい注意点
人事評価でハロー効果が影響しやすい要素としては、かつての勤務先や過去の業績があげられます。以前の勤務先が大企業であった場合、ハロー効果により無条件で仕事ができる人材と見なされる可能性があります。苦手分野があっても、高い能力があると評価してしまうかもしれません。誤った評価にもとづき不得意な業務を任せれば、業績の悪化につながります。
過去の業績に関しても、十分に注意しなければいけないでしょう。これまで業績が振るわなかったからと、その印象のまま評価するのは判断を誤る原因です。社員の努力により業績が上向いているか把握するには、過去だけでなく現状にも着目する必要があります。人事評価では、ハロー効果によるエラーを避けるため過去にばかり目を向けない姿勢が欠かせないでしょう。
ハロー効果によるエラーを防ぐには
ハロー効果は普通に起きる心理現象であり、どれほど注意していても完全に取り除くのは難しいといわれています。人事評価の場合、ハロー効果のエラーを防ぐために重要と考えられている方法が評価基準や評価項目の明確化です。この点がはっきりすると、同じ評価対象に対しては誰が採点しても大きな差が生まれにくくなると期待できます。
客観性を高めようと考えるなら、評価者のトレーニングも大切です。講義を通してエラーが起きやすいケースを伝え、グループワークやロールプレイングにより客観的に評価する能力の育成を図ります。これらの取り組みを実施すれば、何も対策しないよりもハロー効果の影響を受けず社員がもつ能力を的確に評価できるでしょう。
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