簿記検定とは|1級まで取ったほうがいい?
更新日:2025.01.08スタッフブログ簿記検定は、簿記や経理・会計の知識・能力が問われる資格試験です。いくつか等級があり、そのレベルに応じて試験の難易度は異なります。初学者は、資格を取得するまでに時間がかかる場合もあるため、1級まで取ったほうがよいか不安を感じるかもしれません。それぞれの等級について難易度などを確認しておけば、試験勉強を進めるうえで参考になるでしょう。そこで今回は、簿記検定の概要を解説した後、試験の難易度・必要勉強時間や1級取得のメリット・デメリットなどをご紹介します。
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目次
簿記検定の資格の概要
簿記検定というと、一般的に日商簿記が有名です。ただし、実際には、複数の検定試験が行われています。
簿記検定の種類
簿記検定の種類は、大きく分けると、日商簿記に加えて全経簿記と全商簿記(簿記実務検定試験)の3種類です。それぞれの試験は、商工会議所・全国経理教育協会・全国商業高等学校協会が実施しています。これらのうち日商簿記の等級は、1~3級と簿記初級・原価計算初級の5段階です。
また、全経簿記は上級と1~3級、全商簿記は1級会計・1級原価計算と2級・3級に区分けされています。各試験の具体的な内容は共通でなく、問題のレベルも試験の等級に応じて変わってきます。
商工会議所 簿記|商工会議所の検定試験 (参照2024-12)
公益社団法人全国経理教育協会 全経簿記能力検定(参照2024-12)
公益財団法人全国商業高等学校協会 簿記実務検定試験 (参照2024₋12)
日程
2025年度の試験日程は、日商簿記について、商工会議所から次の通りに公表されています。残り2つの試験日は、各実施機関の公式ホームページを見る限り、2024年12月時点ではまだ提示されていません。
日商簿記1~3級(統一試験)
・第170回:2025年6月8日(日)
・第171回:2025年11月16日(日)
・第172回:2026年2月22日(日)
日商簿記の統一試験は、統一日に実施される検定試験です。簿記2級・3級は、団体試験とネット試験も行われています。また、簿記初級と原価計算初級は、ネット試験のみ実施予定です。
なお、団体試験とネット試験は日程を調整中とされています。簿記2級・3級は2025年4月1日(火)~13日(日)・6月2日(月)~11日(水)・11月10日(月)~19日(水)・2026年2月16日(月)~25日(水)が休止期間となっています。
商工会議所 2025年度試験日程カレンダー (参照 2024-12)
ネット試験
簿記検定のネット試験は、所定のネット試験会場で行われている試験方法です。現在は、日商簿記と全経簿記において導入されています。日商簿記の場合、ネット試験の検定対象は、上記の通り簿記2級・3級・初級と原価計算初級です。
また、全経簿記では、2級の商業簿記・工業簿記と3級の商業簿記が対象となっています。どちらも試験日は一律でなく、随時にわたり実施される方式です。日商簿記は、試験会場が全国に140以上あり、各会場が任意に設定するスケジュールで定期的に行われています。
また、試験内容や出題範囲は、各実施機関の問い合わせ窓口や公式ホームページで確認できます。
商工会議所 日商簿記検定試験(2級・3級)ネット試験について (参照 2024-12)
商工会議所 ネット試験の受験方法 (参照 2024-12)
公益社団法人全国経理教育協会 ネット試験のご案内 (参照 2024-12)
合格率、受験資格など
簿記検定の合格率は、ここ1~2年の資料を見ると、日商簿記の1~3級が約1割~4割でした。それに対し、全経簿記の上級・1~3級は1割半ば・約2割~約9割、全商簿記は約3割~約7割と違いが見られます。各実施機関が示した合格率の詳細は、以下の通りです。
1.日商簿記(2024年度、統一試験は第167回・ネット試験は4~6月のデータ)
・1級(統一試験):10.5%/2級(統一試験):22.9%/2級(ネット試験):39.8%/3級(統一試験):40.7%/3級(ネット試験):40.3%
2.全経簿記(2024年度、第214・215・216回の順、上級は第215回のみ)
・上級:15.49%/1級商財:25.95%・32.64%・52.53%/1級原管:57.08%・60.00%・61.67%/2級商簿:47.60%・41.71%・56.60%/2級工簿:90.99%・85.67%・88.77%/3級:59.10%・62.24%・66.00%
3.全商簿記(2023年度、第96回・97回の順)
・1級会計:39.9%・46.9%/1級原計:45.1%・34.2%/2級:35.3%・52.2%/3級:52.6%・72.6%
日商簿記1級は、2022年度の合格率が第161回:10.1%・第162回:10.4%、2023年度は第164回:12.5%・第165回:16.8%でした。2024年度まで含めて2割に届かず、合格率は低めと考えられます。
同2級(統一試験)は、2023年度の第163~166回が24.8%・21.1%・11.9%・15.5%でした。また、ネット試験は2022年度:37.1%・2023年度:35.2%であり、第165回と166回の統一試験を除いて合格率が2割を超えています。
同3級は、統一試験の第163~166回:36.5%・34.0%・33.6%・36.3%。2022年度と2023年度のネット試験:41.2%・37.1となりました。いずれも3割超であり、合格率は比較的に高めと考えられます。全経簿記の場合、上級の合格率は、2023年度(第211・213回)も1割半ばにとどまりました。また、1~3級は約4割~9割となり、全体的に2024年度と近い数値を示しているといえるでしょう。
全商簿記は、2022年度の第94・95回を見ると、1級会計:35.0%・38.5%・1級原計:40.2%・42.6%・2級:38.8%・57.6%・3級:50.4%・76.7%でした。試験によって数値の変動は見られますが、概して合格率は高めと考えられます。
なお、日商簿記・全経簿記・全商簿記とも、受験資格については公式ホームページで言及されていません。受験申込の時に年齢・学歴や国籍は問われないため、受験資格の制限はないと理解してよいでしょう。
商工会議所 受験者データ (参照 2024-12)
公益社団法人全国経理教育協会 受験データ・合格率 (参照 2024-12)
公益財団法人全国商業高等学校協会 令和5年度|各種検定試験申込者・受験者・合格者数集計表 (参照 2024-12)
公益財団法人全国商業高等学校協会 令和4年度|第94・95回受験者申込者数・受験者数・合格者数集計 (参照 2024-12)
簿記検定|資格取得に向けて
簿記検定は、試験の等級に応じて、合格率に多少の差異が見られる状況です。検定試験の難易度には違いがあるため、資格取得に向けて必要となる勉強時間は変わってくるといわれています。
難易度
簿記検定の難易度は、日商簿記の1級と全経簿記の上級が高く、その他はやや高めから比較的に低めとの見方が一般的です。日商簿記の1級と全経簿記の上級は、近年の合格率が約1割~1割半ばであり、難関レベルの試験と考えられます。資格関係の情報サイトでも、これら2つの難易度は同じ程度であり、簡単には合格できないとの見解が示されています。
次いで、やや高めのレベルとされる試験は、日商簿記2級と全経簿記・全商簿記の1級です。最近の合格率は2割を超える傾向にあり、日商簿記1級・全経簿記の上級に比べて合格しやすいと見られています。
また、日商簿記3級と全経簿記・全商簿記の2級・3級は、ここ2~3年の合格率が3割超であり、日商簿記2級などに比べても難易度は低いと考えられます。試験の難易度をふまえた場合、日商簿記1級と全経簿記上級の壁は高いため、最初は難易度が低めのレベルから挑戦するのが得策といえるでしょう。
必要勉強時間
簿記検定で試験合格に必要とされる勉強時間は、およそ100~2000時間です。日商簿記の場合、簿記1級で合格するには、500時間以上~2,000時間近くの勉強が必要になるといわれています。学習方法によって時間の目安は変わりますが、500時間以上でも、1日1.5時間ペースの勉強が欠かせない計算です。
一方、簿記2級の合格に求められる勉強時間は、100時間以上~350時間前後が目安です。100時間以上なら1日1時間ペースで4カ月はかからず、350時間前後でも1年間あれば達成できます。
また、簿記3級は、50~100時間以上が試験合格の目安とされる勉強時間です。この場合、1日1時間ペースなら2~3カ月ほど、1日30分程度でも半年以上あれば到達できるでしょう。具体的な学習方法は、独学や通信教育が選択可能です。どの方法を選ぶかは、自分の好みや生活スタイルに合わせて問題ありません。ただし、いずれにしても、日々にわたり計画性をもって勉強を続けることが大切と考えられます。
1級を取得するメリット・デメリット
簿記検定のうち日商簿記で1級を取得するメリットは、他の資格取得に活かせるところなどです。とはいえ、他所のデメリットもあると指摘されています。
【メリット】
日商簿記の1級取得は、税理士試験の受験資格を認められる点が大きなメリットです。商工会議所の説明によれば、1級合格者は、特典として税理士試験の受験資格が与えられます。検定試験では簿記や会計に関する高度な専門知識が問われるため、税理士や公認会計士といった国家資格への登竜門と認識されています。
また、職業能力開発促進法の指導員資格試験を受ける場合、事務科の試験科目のうち一部は免除可能です。受験科目の一部が免除されると、試験勉強の手間や負担は減少し、合格する可能性は高まると期待できます。
これらの利点から、税理士・公認会計士や職業能力開発の指導員を目指すなら、1級を取得する価値は大きいと考えられます。
【デメリット】
日商簿記1級の取得に伴う大きなデメリットは、試験が難しく資格取得に時間がかかりやすい点です。一般的な見解として、日商簿記の1級合格には、少なくとも500時間以上の勉強が必要といわれています。この勉強時間は、2級合格の目安になる100時間以上~350時間前後と比べても、約1.5~5倍の時間数です。さらに、一般企業の経理職であれば、日商簿記の2級・3級レベルで十分との声が多く聞かれます。
3級レベルの資格なら、試験合格に向けた勉強時間は、2級よりも少なくて済むでしょう。日商簿記1級は経理関係で必須とは限らないため、多くの時間をかけて取得する必要があるかは、十分に検討したほうがよいかもしれません。
1級を目指すのはどんな人?
簿記検定で日商簿記の1級レベルを目指す人としては、税理士・公認会計士を志す人などが挙げられるでしょう。
税理士や公認会計士を目指す人
税理士・公認会計士を志す人は、日商簿記で1級取得を目指す人の代表例です。日商簿記の1級は、上記の通り、合格者に税理士試験の受験資格を与える特典が設けられています。また、税理士や公認会計士の登竜門とされ、これらの資格を目指すうえで1級を受験するケースは多いと見られています。
大企業の経理部門で高度な業務に携わりたい人
日商簿記1級は、大企業の経理部門で専門性の高い業務を扱うのに有用です。1級の場合、試験範囲に、商業簿記・会計学・工業簿記や原価計算の高度な内容が含まれます。ハイレベルな知識が求められるため、2級や3級では扱いにくい難解な業務を手がける時にも役立つといわれています。
会計の専門家として独立したい人
会計の専門家を志向するケースも、1級を目指す代表的な事例でしょう。日商簿記の1級取得に向けた試験勉強は、商業簿記や会計学の理解を深めるのに役立ちます。会計に関わる高度な知識を増やせるため、この分野の専門家として独立する際にも活かせる場合があります。
簿記の知識を極めたい人
簿記の知識を極めたい人も、1級取得を目指す傾向がある代表例の一つです。日商簿記の3級・2級は難易度が低め~やや高めといわれるため、この分野を極めるには物足りないかもしれません。それに対し、1級は最難関であり、最高レベルの知識を求める人が挑戦するケースも多いのでしょう。なお、日商簿記の1級取得は、ほとんどの人にとってオーバースペックになる可能性があります。
この点を考慮した場合、あまり無理せず、ビジネスの場で需要が高い2級や3級を目指すのが賢明と考えられます。
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