女性活躍推進法改正のポイントと取組事例

更新日:2022.11.08スタッフブログ

女性活躍推進法改正のポイントと取組事例

女性活躍推進法は、女性が活躍しやすい環境を実現するため2016年に施行された法律です。2019年の法改正に続き、2022年4月から適用対象が拡大されることもあり、多くの企業に注目されています。何が変わるか理解しておくと、これから女性活躍推進の取組を進める際に役立つでしょう。そこで今回は、女性活躍推進法の概要を解説するとともに、今回の改正の注目ポイントや具体的な取組事例をご紹介します

女性活躍推進法の概要

女性活躍推進法の概要

女性活躍推進法は、その名の通り女性が活躍できる就労環境の実現を目指して制定された法律です。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」であり、2016年の施行時点では目標達成の期限が10年後の2026年に設定されていました。

法律制定の目的と企業に求められる姿勢

2016年に政府が女性活躍推進法を作成した主な目的は、女性が活躍しやすい職場環境をつくることです。この目的にもとづき、企業は大きく分けて以下の3つの姿勢が求められています。

1.性別により活躍する機会の差を生まないこと

ここで求められるのは、「女性であること」を理由に担当業務の分担で男性と区別しない姿勢です。とくに能力的な差異が見られない場合、企業は男女を問わず仕事の担当者になるチャンスを等しく与える必要があります。

2.仕事と家庭生活を両立しやすくすること

次に企業には、仕事と家庭生活が両立しやすい職場づくりが求められています。いまのところ多くの女性は、仕事を抱えながら子育てや親の介護に関わるケースが珍しくありません。そのため職場で活躍するには、いずれも継続できる環境が不可欠です。

3.女性本人の気持ちが尊重される風土をつくること

上記の2つとともに企業に求められる姿勢は、女性本人の気持ちが尊重される風土づくりです。子育てや親の介護がある場合、以前と同じように働くことは困難になることが予想されます。どんな働き方を希望するか、本人の気持ちが重んじられる企業風土の整備も怠れません。政府は、これら3つの姿勢を心がける企業努力が女性にとって活躍しやすい職場環境づくりの実現につながると考えています。

法律が生み出された背景

近年、国内で女性活躍推進法が生み出された背景には、女性管理職に関する日本と海外との大きな差異があります。調査によると、2020年11月の時点で日本国内の女性労働者が管理職に占める割合は14.8%でした。欧米諸国は約30~40%を占めているのが主流になっており、国際的な流れに比べると日本の数値の低さは問題視されています。

また政府は、「2020年までに女性管理職割合を30%程度になるようにする」との目標を2003年に掲げていました。実際は、当時の目標値の5割に届かず、女性活躍推進法は時限立法として目的の達成が急がれています。そんな背景から、2019年5月の法改正に続き、2022年4月からは適用対象となる企業が拡大するなど、未施行であった部分も実施される見通しです。

2022年の法律改正の注目ポイント

2022年の法律改正の注目ポイント

女性活躍推進法について、2022年4月から実施される法律改正の注目ポイントは、適用範囲に含まれる企業が拡大する点です。同時に、実績を公表する義務規定も以前より強化されます。

新たな適用対象

2022年4月から女性活躍推進法が新たに適用される対象は、通常の労働者数が101人以上かつ300人以下の企業です。最初に法律が施行された時点では、適用対象は「常時雇用する労働者の数が301人以上の大企業」と記されていました。対象企業は、女性の活躍に関する状況把握と課題分析をふまえ、行動計画を策定・届出するとともに、情報を公表する義務が課されています。

当初、常時雇用の労働者数が300人以下の企業については、行動計画の策定などが「努力義務」の範囲にとどめられていました。今回の法改正では、これまで努力義務の範囲にあった企業のうち「101人以上」の規模まで義務規定の適用範囲が広がります。

以前と変わらず努力義務にとどまるのは、100人以下の企業のみです。なお常時雇用の労働者は、「期間を定めず雇用している労働者」を意味します。正社員からアルバイトまで含まれ、とくに雇用形態は問われません。実際に行動計画を策定する場合は、計画期間、数値目標、取組内容、取組の実施時期を盛り込む必要があります。

実績を公表する義務は強化

企業の実績について情報を公表する義務は、今回の法改正で以前より規定内容が強化されます。2016年4月の施行当時、実績については「働きがい」と「働きやすさ」の2カテゴリーのうち「全14項目から1つ以上の情報を公表すること」と規定されていました。改正後は、同カテゴリー15項目に変更されます。

具体的に情報公表の義務が規定された15項目の内訳を示すと、以下の通りです。

1.「働きがい」:女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
  • 係長級にある女性労働者の割合
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性労働者の割合
  • 男女別の職種、または雇用形態の転換実績
  • 男女別の再雇用または中途採用の実績

2.「働きやすさ」:職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備

  • 男女の平均勤続年数の差異
  • 10事業年度前、および、その前後の事業年度に採用された労働者の男女別継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率
  • 労働者の1カ月あたりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の1カ月あたりの平均残業時間
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

実績に関する情報を公表する義務は、企業規模に応じて異なります。301人以上の企業は2つのカテゴリーのいずれも各1つ以上、101人以上かつ300人以下の企業は両カテゴリーのうちから1つ以上の実績公表が必須です。

中小企業に見られる取組事例

中小企業に見られる取組事例

ここでは、厚生労働省が2018年に公表した中小企業に見られる女性活躍推進の取組事例をいくつかご紹介します。

ホテル業の取組事例

ホテル業の取組事例は、社員105名の企業で女性管理職(マネージャー職)の増加を目指したケースです。この目標を掲げた当初、組織内には女性の管理職がいない状況でした。また女性活躍推進の意識は全社的に低く、女性登用の取組を始めた当時は盛り上がりに欠けていたと指摘されています。

社内の状況を改めるため力を入れたポイントは、女性社員も「管理職になれる、なりたい」と思える仕掛けづくりです。具体的な取組としては、パートを含む全女性社員に向けて、キャリアプランに関するアンケートや個別面談の実施などです。一連の改善策は、新人事制度の検討や女性活躍に対する意欲向上につながり、将来的なキャリアとして管理職を視野に入れる女性社員が増えているといいます。

自動車機械メーカーの取組事例

自動車機械メーカーの取組事例は、社員74名の企業が技術・営業職で女性の雇用数の増加を目指したケースです。
当時、職場は「男性社員ばかりの機械作業がメイン」など固い雰囲気があり、新卒採用時における女性の応募の少なさが課題となっていました。女性視点の企画開発は新たな成果をもたらすとの認識もあったため、女性の雇用推進の取組が始まります。

実際に重視されたポイントは、女性が働きやすい環境の整備です。同時に女性社員の活動内容を求人サイトで積極的に発信し、就職説明会では女性技術者を発表者として抜擢しました。中途採用の女性メンバーを異例のスピードで海外出張に参加させるなどの努力も評価され、現在は「女性が活躍し実績を挙げている企業」との認知が広まっています。

2022年4月の法改正に合わせ企業で女性活躍推進の取組を始める時は、上記の事例などを参考に進めていくことをおすすめします。

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