パワハラ防止法とは?企業の義務や注意点
更新日:2022.11.18スタッフブログパワハラ防止法は、その名の通り職場におけるパワハラの防止が主な目的です。新たな改正法は、これまでよりも適用範囲が広がりました。今後は大企業だけでなく中小企業まで法的義務を課されるため、詳しい規定内容を再確認しておくと社内体制の見直しなどに役立つでしょう。そこで今回は、パワハラ防止法の概要、改正法で追加される適用対象、具体的に企業が求められる義務をご紹介します。
目次
パワハラ防止法の概要や成立の背景
パワハラ防止法は、職場のパワハラを防ぐため2019年に成立した法律です。背景には、パワハラ問題に関する相談の増加があります。
パワハラ防止法の成立と施行
もともとパワハラ防止法は、元号が平成から令和に変わった2019年の5月に成立しました。最初は大企業のみの適用でしたが、のちに中小企業にも適用されました。「パワハラ防止法」という呼び方は、ビジネスシーンを中心に国内で広く使われている通称です。正式には、「改正労働施策総合推進法」と呼ばれます。「パワハラ」の具体的な内容について規定し、企業に防止義務を課しています。
大企業での施行は、同法が成立した翌年の2020年6月です。およそ2年後の2022年4月からは、中小企業も適用対象になりました。現在は企業規模を問わず、職場でのパワハラを防止するため必要な対策を実施する義務が生じています。いまのところ罰則規定は設けられていませんが、問題の発覚後に改善が見られないと企業名が公表されます。
法律が成立した背景
近年になり日本でパワハラ防止法が成立した主な背景は、相談件数の増加です。同法が成立する2年前の2017年4月、厚生労働省により「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」が公表されました。そのなかで、従業員が企業に訴える悩みや不満の3割以上をパワーハラスメントが占めると判明しています。
調査対象は相談窓口を設置する企業3365社であり、従業員から相談の多いテーマについて上位2項目までの複数回答を求めています。結果はパワーハラスメントが32.4%に達し、メンタルヘルス(28.1%)や勤労条件(18.2%)を上回り最多となりました。他の調査からも職場環境は悪化する傾向にあると認識され、国は法律制定を進めたと見られています。
法規定によるパワハラの定義
パワハラ防止法の規定によると、パワハラ指針で示されたパワハラの定義は次の3つの要件を満たすケースです。
- 優先的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
最初の要件は、受け手となる従業員が抵抗・拒絶できない関係のもとでの言動を指します。2番目は、業務を遂行するうえで明確に不要あるいは不適切な行為です。3番目は、従業員が働きにくくなるほど重大かつ看過できない支障が該当します。
いずれかのケースが職場で発生した場合、パワハラ防止法により企業は何らかの防止措置を実施しなければなりません。
厚生労働省が示したパワハラの典型例
現在、厚生労働省が「職場のパワーハラスメント」として示している典型例は、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個への侵害」の6つです。
身体的な攻撃
厚生労働省の基準によると、身体的な攻撃は「暴行」や「傷害」と見なされる行為を指します。いくつか具体的な攻撃方法を挙げると、殴打、足蹴り、備品などで身体を叩く、何かを投げつけるなどです。いずれも傷害を負わせる恐れがあり、身体的な攻撃と判断されます。
精神的な攻撃
精神的な攻撃は、「ひどい暴言」「侮辱」「名誉毀損」「脅迫」をはじめ人格否定につながる言動全般です。実際には、不必要と思われるほど長時間にわたり厳しく叱責を続けるケースや、他の従業員を前に大声で威圧的に非難する場合が挙げられます。またメールなども、不必要に特定の個人を責める文面は問題です。
人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しは、いろいろな手段により従業員を職場内で孤立させる行為です。正当な理由によらない長期にわたる別室への隔離や自宅研修、個人的な嫌悪感からの仕事外し、周りからの助言やサポートを禁止する事例などが当てはまります。たとえ一緒に働いていても、無視は許されません。
過大な要求
過大な要求は、明らかに遂行できないと分かるほどの業務内容を強制的に割り当てることです。このケースには、入社したばかりで業務経験のない新人に大量のノルマを課す、あるいは気に入らない従業員に業務と関係ない面倒な作業や個人的な雑用を押しつけるパターンなどが該当します。
過小な要求
過小な要求は、一定の能力や役職を有する従業員に社内での評価や立場に見合わない簡単な仕事のみを命じる、また重要な仕事を与えない行為です。この場合、簡単な仕事しか用意できないかどうかは関係ありません。それぞれの労働者のスキルや業務経験を考慮したケースとも、大きく異なります。とにかく嫌がらせ目的で、配分する業務を取捨選択するパターンです。
個への侵害
個への侵害は、仕事に関わる範囲にとどまらずプライベートの領域まで侵害するケースです。労働者をサポートする目的などがないまま職場外でも無断で監視したり、本人の了解を得ずに個人情報を口外したりする行為が当たります。パワハラかどうかは原則的に労働者の感じ方が判断基準であり、上記以外の事例も該当する可能性あるため、職場では臨機応変に対応する必要があると考えられます。
改正法の適用範囲や具体的な義務
2022年4月から施行の改正法は、大企業とともに中小企業も適用されます。ここ数年はパワハラの報告例が増える傾向にあり、企業の規模を問わず社内の体制整備が欠かせないと指摘されています。
改正法の適用範囲
今回の改正法によると、新たな適用範囲になる中小企業は、大まかに製造業その他、卸売業、小売業、サービス業の4つに分けられます。
製造業その他は、資本金か出資総額が3億円以下または常時の従業員数が300人以下の会社・個人事業が含まれます。卸売業は同じく1億円以下または100人以下、小売業は5千万円以下または50人以下、サービス業は5千万円以下または100人以下です。
今後、以上の業種および事業規模に分類される中小企業は、いずれもパワハラ防止法の規制対象です。現時点で罰則はないものの企業名が公表されればイメージダウンにつながるため、社内体制の見直しが急がれるといわれています。
具体的に求められる義務
改正法の適用により企業が求められる義務は、厚生労働省が定めた指針のなかで示されています。同省が掲げる予防措置の具体的な内容は、次の4項目です。
- 事業主の方針等の明確化及び周知・啓発
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 上記の措置と併せて講ずべき措置
1つ目は、パワハラの内容ならびに職場で禁じる姿勢の明確化と労働者への周知・啓発を意味します。次は、相談窓口の設置と適切に対応する体制の整備、および労働者への周知です。
3番目は問題発生後の事実関係の迅速かつ正確な把握また被害者への適切な対応、さらに再発防止の措置まで含みます。最後の項目は、当事者のプライバシー保護や相談を理由とした解雇の禁止、また各種事項に関する社内での周知・啓発です。
パワハラは離職者を生み出す原因にもなっています。国内で人材確保が難しくなるなか、貴重な労働力を失わないためにも、それぞれの企業にとってパワハラ防止の措置は重要性が増しているといえるでしょう。
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