【個人事業主向け】はじめての青色申告
更新日:2024.07.12ビジネス豆知識青色申告は、白色申告とともに対象者に義務付けられている、確定申告の方法の一つです。この申告方法は、白色申告に比べて節税しやすいという特徴があります。ただし適用には条件があり、それを満たすのは簡単とはいえません。個人事業主が初めて青色申告する場合、具体的な内容について理解を深めておくと役立つでしょう。そこで今回は、青色申告の概要や白色申告との違いについてご紹介します。
目次
青色申告とは
青色申告は、確定申告で多くの特典が適用され、大きな節税効果につながる申告納税制度です。以下では、この申告方法を選択できる対象者や青色申告までの流れについてご紹介します。
対象となる人(開業後何年目まで使えるか)
確定申告で青色申告を選択できる対象者は、「事業所得※1」「不動産所得※2」あるいは「山林所得※3」がある人たちです。国税庁によれば、「事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う方」と説明されています。海外に居住している場合も、国内で上記の条件を満たす業務を行っていれば、青色申告による手続きが可能です。
なお、申請が承認されると、その後は青色申告の対象者と見なされます。何らかの理由で承認が取り消されなければ、開業から何年が経過しても、この方式のまま確定申告できます。
参照:国税庁 青色申告制度 (参照 2024-01-01)
説明
※1 事業所得:農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。(参照:国税庁 事業所得の課税のしくみ 参照日 2024-01-01)
※2 不動産所得:土地や建物などの不動産の貸付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け、船舶や航空機の貸付けまでの所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除きます。)をいいます。(参照:国税庁 不動産収入を受け取ったとき 参照日 2024-01-01)
※3 山林所得:山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいいます。(参照:国税庁 山林所得 参照日 2024-01-01)
青色申告までの流れ
個人事業主や法人組織が青色申告を選択する場合、事前に「所得税の青色申告承認申請手続※4」が必要です。事業所得や不動産所得があり青色申告を申請する際、申請者は申請書の作成と提出を求められます。所定の申請書は、パソコンやスマホから「e-Taxソフト」にログインすると作成できます。
※ 青色申告の必要書類や作成方法については「3.1 必要書類や作成方法」で紹介しております。
申請手続きの期日は、原則、青色申告で確定申告することになる年の3月15日です。また、同年の1月16日以降に新規事業などを開始した時は、各種業務の開始日から2カ月以内と定められています。
参照:国税庁 青色申告制度 (参照 2024-01-01)
説明
※4 所得税の青色申告承認申請手続:青色申告の承認を受けようとする場合の手続です。(参照:国税庁 所得税の青色申告承認申請手続 参照日 2024-01-01)
青色申告の控除について
青色申告で確定申告すると受けられる税控除は、青色申告特別控除などです。青色申告特別控除は、一定の要件を満たすと、年間所得のうち55万円・65万円・10万円のいずれかが課税額から控除される制度を指します。具体的な適用条件は、控除額に応じて変わってきます。
また、青色申告は、事業専用家事按分や損失の繰越控除も可能です。事業専用家事按分は、業務に関わる費用を必要経費として計上できる仕組みです。個人事業主は、事業用と家事用の家賃や光熱費が混在している場合、業務関連の支出を仕事上の経費に含めて申告できます。
損失の繰越控除は、事業で損失が生じた際、純損失を翌年以降の所得から差し引ける制度です。基本的に3年間は繰越が認められ、災害時に所定の条件を満たすと、繰越期間は翌年から5年間までに延長されます。個人事業主が青色申告を選択すると、各種の控除が適用され、確定申告での節税対策につながります。
青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告の大きな違いは、特別控除の有無や記帳方法の差異です。以下では、それぞれの申告方法の主な違いやメリット・デメリットをご紹介します。
違いについて
特別控除の有無は、青色申告と白色申告を分ける特徴的な違いです。基本的に青色申告者は、特別控除の対象になります。10万円以上の所得があれば10万円、それ未満でも所得の合計額まで控除を受けられます。
また、次の3つの条件を満たした場合、55万円が控除可能です。
- 事業所得や不動産所得が発生する業務を運営
- 日々の取引を正規の簿記の原則で記帳
- 所定の記帳方法で作成した書類を確定申告で提出
正規の簿記の原則による記帳は、一般的に複式簿記を指します。また、所定の記帳方法で作成する提出書類は、賃貸対照表や損益計算書です。個人事業主が複式簿記にもとづき作成した必要書類を確定申告書に添えれば、55万円の控除が認められます。
一方、白色申告は、特別控除の対象外です。記帳方法は簡易な方式で問題ありませんが、控除項目は、保険料控除・配偶者控除や基礎控除にとどまります。青色申告は事業所得が控除対象に含まれるため、課税対象になる所得額は、白色申告に比べて大幅に減少する傾向が見られます。
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
対象 | 事業所得などがある人 | 納税者全般 |
保険・配偶者控除等 | あり | あり |
特別控除 | 10万・55万・65万円 | なし |
事業所得の控除額 | 複式簿記が望ましい | 0円 |
記帳方法 | 複式簿記が望ましい | 制約なし |
青色申告のメリットとデメリット
青色申告は、特別控除に加えて損失の繰越控除なども受けられる点が大きなメリットです。個人事業主が青色申告した場合、年間の事業所得から一定金額を控除できるうえ、損失は翌年以降の所得から差し引けます。さらに、事業専用家事按分が適用され、家賃や光熱費の一部も業務関連の支出として申告できます。
ただし、新たに青色申告する時は、承認を受けるために申請書の作成と提出が不可欠です。また、55万円か65万円の特別控除を受けるには、日々の取引を複式簿記で記帳する必要があります。申請書を作成・提出しても、審査を通らず受理されなければ、青色申告は認められません。さらに、複式簿記は簡易な方式より記帳方法が複雑であり、時間や手間がかかるという難点もあります。
白色申告のメリットとデメリット
白色申告は、青色申告ほど時間や手間をかけずに確定申告できる点が主なメリットです。個人事業主は、白色申告する時、青色申告のように承認を受けるため事前に申請書を提出する必要はありません。また、記帳方法の制約はなく、簡易な単式簿記で確定申告できるところも大きな利点といえます。
ただし、白色申告は、記帳方法に関係なく特別控除の適用外です。単式簿記より複雑な複式簿記で記帳していても、青色申告と見なされないため、事業所得の控除は受けられません。事業所得の控除により節税対策するなら、申請書の提出や複式簿記での記帳に手間がかかっても、白色申告でなく青色申告を選択するのが得策と考えられます。なお、複式簿記と単式簿記の詳細については、以下の記事などをご参照ください。
参照:創業手帳様 複式簿記とは?単式簿記との違いからメリット・デメリットまで解説 (参照 2024-01-01)
具体的な手続きについて
青色申告を申請する場合、所定の申請書を作成・提出し、審査を通過して承認されることが必要です。以下では、必要書類・作成方法や65万円の控除を受ける場合の注意点をご紹介します。
必要書類や作成方法
青色申告の申請手続きでは、所定の申請書を作成・提出する必要があります。現在、所定の申請書となる「所得税の青色申告承認申請書」は、e-Taxソフトにログインすればパソコンやスマホで作成可能です。また、e-Taxを初めて利用する場合、先に利用者識別番号の取得が必要になります。
申請書の提出先は、納税地を管轄する税務署長です。受付時間は、e-Taxの利用可能時間、もしくは税務署の開庁時間となっています。また、提出方法は、e-Taxのマイページから申請するほか、書面を受付窓口に持参・送付する選択肢もあります。なお、e-Taxソフトやe-Taxの利用時間の詳細については、公式ホームページでご確認ください。
e-Taxの公式ホームページはこちら「e-Tax 国税電子申告・納税システム」
65万円の控除を受ける場合の注意点
青色申告で65万円の控除を受ける場合、適用条件について注意が必要です。この特別控除を受けるには、まず55万円の控除で求められる3つの適用条件を満たさなければなりません。事業所得などのある業務を営み、複式簿記による記帳をもとに賃貸対照表や損益計算書を作成する必要があります。
さらに、e-Taxでの確定申告、または優良な電子帳簿による仕訳帳と総勘定元帳の保存が適用条件に加わります。電子帳簿が優良と見なされるには、システムの概要書・操作説明書や記録事項を明瞭に確認できるモニターの備付けが欠かせません。そのうえ、e-Taxによる申告は、青色申告決算書の提出も不可欠です。また、電子帳簿を利用する場合、65万円の控除を受ける届出書の提出が求められます。
確定申告で青色申告決算書か65万円控除の届出書を用意しないと、適用条件を満たせないため、気をつける必要があります。
参照:国税庁 e-Taxによる申告又は優良な電子帳簿の保存により65万円の青色申告特別控除を適用しましょう! (参照 2024-01-01)
個人で手続きするのに不安な場合は?
個人で青色申告の手続きを進めるのに不安がある場合、会計ソフトを活用したり税理士に依頼したりするとよいでしょう。複式簿記での記帳は手間のかかりやすい作業ですが、会計ソフトを使うと、業務負担を軽減するのに役立ちます。個人事業主向けなら、「弥生」や「マネーフォワードクラウド」のソフトがおすすめです。また、税理士は税の専門家であり、所得の計算から納税額の算出まで安心して任せられます。青色申告を不安なく済ませたい時は、会計ソフトの活用や税理士への依頼をおすすめします。
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