今こそ高めたい職場のエンゲージメント

更新日:2023.03.17ビジネス豆知識

組織に対する愛着

人手不足が深刻化する今、従業員のエンゲージメント向上に取り組む企業が増えています。エンゲージメントは企業への愛着度を示す概念であり、人事担当者にとって見過ごせない要因のひとつです。本記事では、エンゲージメントの基礎知識と重要視されるようになった時代背景、具体的な調査方法をご紹介します

エンゲージメントとは?

ビジネス領域におけるエンゲージメント(Engagement)とは、組織に対する愛着や思い入れの強さ、貢献心を表す言葉です。1990年代に米国で誕生した概念であり、企業(組織)と従業員が互いに絆を深め、人間的な関係性を構築した状態を指します。なお、企業および従業員の関係性においては「従業員エンゲージメント」、企業と顧客間では「顧客エンゲージメント」という言葉を使います。

エンゲージメントを知る上で、従業員満足度とロイヤリティへの理解は欠かせません。これらは度々混合されますが、完全に別物です。一度整理してみましょう。

□従業員満足度:職場環境や待遇、報酬への満足度を表す市場
□ロイヤリティ:企業に対する忠誠度を表す概念
□エンゲージメント:企業への愛着度や愛社精神を表す概念

従業員満足度は、組織が提供する労働環境・労働条件への満足度を表す指標です。これは職場環境や待遇、報酬などの観点から従業員が評価します。従業員満足度を測定することで、自社に対する居心地の良さが見えてきます。
ロイヤリティは、所属企業への忠誠心を表す概念です。企業と従業員が主従関係にある状態で、終身雇用制度のある企業で重視されます。横ではなく縦の関係性にあるため、従業員満足度やエンゲージメントとは性質が異なります。
エンゲージメントは、従業員の企業に対する愛着度、愛社精神を表します。端的にいうと「所属企業が好きかどうか」です。たとえ従業員満足度の高い企業であっても、そこに愛着が生まれるとは限りません。これはロイヤリティも例に漏れず、忠誠度と愛着度はイコールになりません。

各概念・指標の違いを分かりやすくまとめると、以下の様になります。

□従業員満足度:友達(仲間)
□ロイヤリティ:学校の先生や先輩
□エンゲージメント:親友や恋人

つまりは、関係性の方向と深さに違いがあるわけです。企業と従業員が、横のつながりがあり、かつ深い関係性にある場合、「エンゲージメントが高い」といえます。

なぜエンゲージメントが重視される様になったのか?

今から20年以上前に生まれた概念ですが、日本ではほとんど浸透しませんでした。国内企業がエンゲージメントを重視するようになったのも、ここ数年の話です。その背景には、日本社会における人事評価制度の変移があります。高度経済成長期以降、多くの国内企業は勤続年数や役職に応じて報酬を支払う「年功序列制度」を導入しました。人材確保戦略の一環で導入された制度であり、戦後の経済発展に大きく寄与します。一方、バブル崩壊後は人件費の維持が困難となりました。経済不況が続く中、年功序列制度に変わる新たな人事評価制度が模索されます。

大企業が目を付けたのは、米国で一般的な賃金制度である「成果主義」でした。これを人権評価制度に採用した結果、人件費のコストカットに成功します。しかし、年功序列が一般的であった日本人が、成果主義を受け入れるまでには時間がかかりました。一般に定着したのは、2010年以降のことです。年功序列から成果主義にシフトする国内企業が増える中、人々の働き方も変わります。自身の働き方にマッチする職場を求め、従来では考えられなかった転職を選ぶ人が増えたのです。その結果、企業側は人材不足・人材流出、離職率上昇などの課題を抱えるようになります。

そこで注目されたのが、従業員エンゲージメントです。自社への愛着度を高める取り組みにより、離職率を下げるのが狙いでした。その過程において、自社の業績アップにつながるさまざまな「効果」が見えてきました。ひとつは、組織力の向上です。エンゲージメントの高い授業員は、自ら課題解決に取り組んだり、積極的な意見交換に参加したりする傾向があります。自発的に動ける従業員が増えるほど、組織は活性化するものです。

またエンゲージメントの高まりにともない、従業員のモチベーション向上や業務効率改善、定着率向上(離職率低下)が期待できます。これらの理由により、エンゲージメントを高める取り組みに力を入れる企業は、加速度的に増えています。

エンゲージメントを高めるには?

ここでは、エンゲージメントを高める3つの方法をご紹介します。

1.経営ビジョンの浸透

経営ビジョンを共有し、「自分達はどのような企業で何を目指しているのか」を伝えることが大切です。自分の仕事が誰のために、何のために役立つのか知ることで、仕事にやりがいが生まれます。併せて従業員の将来ビジョンなど、個人的な目標を共有してもらうと良いでしょう。自社と従業員の目標に共通点があれば、エンゲージメントがより高まりやすくなります。

2.ワークライフバランスの実現

“働き方改革”の推進にともない、ワークライフバランスを重視する人が増えました。ワークライフバランスとは、仕事とプライベートの調和を大切にし、人生を充実させるための生き方、働き方を指します。ワークライフバランスを実現する施策として、「ノー残業デー」や「出産・育児支援」、「リモートワークの導入」などが挙げられます。さまざまな角度から働きやすい職場環境を提供し、従業員の帰属意識、ひいてはエンゲージメントの向上を狙います。

3.社内コミュニケーションの円滑化

人間関係は、エンゲージメントを左右する大きな要因です。従業員が良好な人間関係を構築できるよう、さまざまな施策を実施します。例えば、社会問題化しているハラスメント行為への対策が挙げられます。パワハラ・セクハラ・マタハラ(マタニティハラスメント)などの防止策を社内規則に取り入れ、全従業員に浸透させましょう。また、部下の自発的な行動を許さない上司は少なくありません。そのような職場環境では主体性を発揮できず、エンゲージメントの低下につながります。マネジメントを改善し、従業員が当事者意識を持って働ける職場環境の構築が求められます。

エンゲージメントを把握する方法

従業員のエンゲージメントを把握するには、社内調査の一種である「エンゲージメントサーベイ」を実施するのが一般的です。アンケート形式で複数の質問を用意し、従業員から回答を得て下さい。想定される質問例は、以下の通りです。

□自分に期待されているものが
□上司や部下から頼りにされていると感じるか
□仕事を応援してくれる人はいるか
□担当した仕事を褒められたことがあるか
□自分の意見が通るか

従業員一人ひとりのエンゲージメントを“見える化”し、自社が抱える課題を洗い出します。例えば、「自分の意見が通るか」、「担当した仕事を褒められたことがあるか」の回答結果が著しく悪い場合、社内コミュニケーションに問題があるかもしれません。エンゲージメント向上を阻害する要因は何なのか、さまざまな観点から分析します。調査結果は、従業員に必ず公表しましょう。内容の良し悪しに関わらず自社の現状と課題を共有することが大切です。逆に結果を伏せてしまうと、不信感からエンゲージメントが低下する可能性があります。企業と従業員が一体となって、目の前の課題に向き合う姿勢を見せましょう。

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