不動産業界が恐れる2020年問題…その影響と対策
更新日:2022.03.24スタッフブログ2020年は東京で史上2回目のオリンピックが開催されます。これによって、多くの業界が様々な消費ニーズに期待しているわけですが、実は不動産業界では「2020年問題」と呼ばれる問題に大きな懸念を抱いているのです。2020年問題とは、現段階で人口構成の多くを占めるいわゆる「団塊ジュニア世代」の高齢化が進むことで起こる多元的な社会構造のことを称して呼んでいます。よく言われるものとして、人件費の増加やポスト不足などが挙げられると言われています。日本ではとりわけ不動産業界がこの2020年問題を恐れていますが、ここではその理由や対策方法について見てみましょう。
目次
不動産業界に起こる2020年問題とその影響
不動産業界が「2020年問題」を恐れている理由
なぜ不動産業界は2020年問題を恐れているのか、その背景について説明していきます。かつて、不動産業界は日本でも鉄板の業界であり、人口の自然増によって自ずと需要が満たされる業界でもありました。しかし、ここにきて大きな問題に突き当たっているのです。
消費意欲旺盛な世代が高齢化して不動産の需要が低迷する可能性
2020年問題のキーマンである団塊ジュニア世代は、バブル期をギリギリ経験した世代が含まれ、実際にバブルの恩恵を受けた世代の背中を見てきた経験もあります。そのため、消費意欲は旺盛である人も多いのですが、その後の世代では消費意欲の低迷が顕著です。これにより、不動産業界は団塊ジュニア世代の高齢化が加速する2020年以降、不動産の需要が慢性的に低迷することを恐れているのです。
東京オリンピック終了後に起こる建設需要の見直し
2020年に開催される東京オリンピックの建設需要に乗ろうと、現在は多くの不動産業界が沸いています。しかし、オリンピックが終われば無駄な建設需要そのものを見直そうとする動きが始まる恐れもあります。このような社会的な需要コントロールの動きに、団塊ジュニア世代の消費低迷の問題が相まって、より深刻な2020年問題として発展する可能性もあるのです。
不動産業界が「2020年問題」を解決するために対策すべきこと
このような課題の多い2020年問題に対して、当然ながら不動産業界も手をこまねいているわけにはいきません。不動産業界がどのような解決策を模索すべきか見ていきましょう。
住宅を購入する付加価値を業界全体で再構築
現在、住宅を購入することは大きなリスクだという意識が広まって来ています。景気の低迷によって収入が大きく減っている状況では、住宅を購入することも非現実的です。また少子化によって相続も困難になり、空き家となる可能性も高くなるでしょう。そのため、不動産業界全体で住宅購入そのものの付加価値を再構築する必要性が高まっているのです。
エリアを問わない良質で購入しやすい不動産物件の提供
不動産業界の住宅供給メインは、都市部に集中しがちです。特に集合住宅に至っては、地方でも一定のニーズがあるのにも関わらず、良質で購入しやすい物件が十分に供給されているとは決して言えない状況にあります。不動産業界ではエリアを問わず、なおかつそれぞれのエリアニーズに沿った緻密な機能性を備えた住宅の供給が求められるでしょう。
不動産業界だけでは終わらない「2020年問題」の経済的悪影響
これまで不動産業界視点での2020年問題について解説してきましたが、この問題の経済的悪影響は何も不動産業界だけに止まりません。逆に言えば、不動産業界における悪影響が深刻なだけに、その煽りを受ける業界は多々存在するわけです。
地方の金融機関を中心に収益性が著しく悪化するリスク
まず、不動産業界の低迷によって最も大きなあおりを受けるのは金融機関になるでしょう。金融機関はお金を集めて、それを企業や個人に貸し出すことで利益を得ています。住宅需要がなくなればローン需要も当然なくなり、金融機関は収益性の悪化に陥ります。本来住宅ローンはローンの中でも金融機関にとって安定した収益ですから、収益性改善はより困難になるでしょう。
多くの製造業や小売業が倒産閉鎖の危機に追い込まれる
金融機関の収益性悪化は、企業向けの融資にも大きく悪影響を及ぼします。金融機関の収益性が良いほど融資の合格率も上がるので、中小の製造業や小売業では融資を受けられない確率が高まっていくでしょう。これにより、多くの業種にて倒産や閉鎖の危機に追い込まれる可能性も高くなります。
「2020年問題」が社会構造にも打撃を与えるリスク
2020年問題が、色々な業界に負の連鎖を与えていくのは理解できました。しかし、この問題は社会構造そのものにも大打撃を与える可能性もあるのです。ここでは、その具体例を見ていきます。
失業者が増加し経済格差が広がる
2020年問題は慢性的に失業率を増やしていくリスクが指摘されています。そうすると、当然家庭における収入額も減っていくことになり、家庭間の経済格差が広がっていくのは必至です。この経済格差は勤め先の倒産によって突然広がることもあり得ることで、日常的な人間関係にも大きく影を落とし始めます。
大学や高校の運営が困難になって教育の機会が失われる
社会への大打撃については、公共の利益を失うレベルに匹敵する可能性も考えられます。それが、大学や高校などが経営難に陥って、日本全体で教育を受ける機会が失われる可能性があることです。
日本は少子高齢化が進んでいますので、子供の数が少ない状況で教育の機会が失われれば次世代を担う人材の育成も困難になっていきます。このように様々なリスクが懸念されている2020年問題。今後の動向を注意深く観察し、不動産業界のみならず国全体で取り組むべき問題だと言えるでしょう。
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