ザイアンスの法則(単純接触効果)について知ろう

更新日:2023.07.05ビジネス豆知識

ザイアンスの法則(単純接触効果)について知ろう

ザイアンスの法則は、人や事物への接触回数が好感度に影響する心理作用を指した法則です。かつて心理学の実験で接触回数が多くなれば好感度は上がりやすいと立証され、以前からビジネスにも活かせるといわれています。この法則について理解を深めれば、営業などに役立てられるでしょう。そこで今回は、ザイアンスの法則の概要やビジネスでの活かし方をご紹介します

ザイアンスの法則とは

ザイアンスの法則とは

ザイアンスの法則とは、初見の人・事物に接触を繰り返すと次第に愛着が増すとされる心理法則です。別名として、「ザイアンス効果」や「単純接触効果」とも呼ばれます。以下では、この法則の概要などをご紹介します

法則の概要

もともと、ザイアンスの法則は、1968年に米国の社会心理学者ロバート・ザイアンスが立証した心理作用です。法則名は、学者の名前に由来しています。多くの人は、初対面の相手や事物、また初めて訪れた場所に警戒心を抱きます。これまで面識のない相手に無警戒で心を開くのは、稀なケースです。

面会や訪問を重ねるにつれ警戒心は薄れ、親しみを覚える傾向が見られます。この心理作用を意味する法則が、ザイアンスの法則です。専門的な見解によると、接触を繰り返すことは警戒心を弱める効果があり、愛着が生まれやすくなると理解されています。ザイアンスの法則は、繰り返しの接触自体が愛着心を呼び起こすところに特徴があります。

法則性を立証した実験

ザイアンスの法則について心理作用の法則性を立証した実験は、複数の漢字を用いたものです。繰り返しの接触がもたらす心理作用は、古くから指摘されていました。ただし、科学的に検証されたケースは、ロバート・ザイアンスが行った漢字による実験といわれています。

被験者は読み方も意味も知らない漢字を見せられ、どれが「よい意味である」と思うか聞かれます。結果として、何回も目に触れた文字ほど「よい意味である」との回答が得られました。ザイアンスは、以上の実験結果により、人は対象を繰り返し見るだけで好感を抱く傾向があると立証します

身近に見られる例

ザイアンスの法則が身近に見られる好例としては、テレビのCMやネット広告が挙げられます。多くの場合、初めて視聴したCMや広告に親しみは湧かないでしょう。商品・サービスの説明やCMソングは、1回だけ聞いても大部分は頭に残らず親しみも感じないと考えられます。

それに対して、繰り返し視聴したCMや広告は記憶に残りやすく、好感度が上がるケースは少なくありません。CMソングは、大勢の視聴者に親近感を抱かれ流行する場合もあります。さまざまな企業は、ザイアンスの法則による商品・サービスの認知度・好感度アップを狙い、テレビやネット上でCM・広告を何回も流しています

ビジネスでの活かし方

ビジネスでの活かし方

ザイアンスの法則をビジネスで活かすには、顧客と接触する回数を増やすことが大切です。顧客との接触回数が増えれば、営業やクレーム対応は進めやすくなると期待できます。以下では、ビジネスの場での活用方法をご紹介します

営業に活かす方法

ザイアンスの法則を営業に活かす時は、事前にターゲットとの接触を繰り返す方法が効果的です。アポイントなしの飛び込み営業は顧客から警戒される可能性が高く、話を聞いてもらえないケースが多く見られます。一方、事前にコンタクトを繰り返すと、顧客の心を開くのに効果があります

最近、事前のコンタクトで広く使われている方法は、商品・サービスに関する資料の送付です。資料を送った後にメールやSNSで興味が湧いたか確認すると、顧客との接触回数を増やせます。以上の方法でお互いの距離を縮めれば、営業で話を聞いてもらえる可能性は高まると考えられます。

クレーム対応で活かすには

クレーム対応でザイアンスの法則を活かすには、日常的に顧客と連絡を取ることが重要です。企業が顧客と日常的に連絡を取った場合、お互いの親交は深まると見込めます。日頃から良好な関係性を築いておけば、商品・サービスに問題が起きてもクレームがこじれるリスクは減るでしょう。

ただし顧客側は、商品・サービスについて質問や要望がないと企業側に連絡を入れない傾向が見られます。日々の接触を繰り返すには、企業側から率先してアプローチする必要があると考えられます。企業が顧客にアプローチする方法としては、メールマガジンの配信やビジネスチャットでの交流が有効です。

その他の活用方法

ザイアンスの法則は、営業・クレーム対応で活かせるほか、企業の知名度やイメージを向上する時も役立ちます。国内外には、数々の企業が存在しています。とはいえ、世界的に知られる大企業ばかりではありません。企業名が一部の消費者にしか知られていないケースは、少なからず見られます。

無名の企業がテレビCMやネット広告を大量に流すと、ザイアンスの法則により知名度を上げるのに効果的です。同じCM・広告が何度も視聴者の目に入れば、企業イメージもよくなると考えられます。積極的に企業名を宣伝した場合もザイアンスの法則が活かされ、企業の知名度や好感度の向上につながると期待できます。

活用時の注意点

活用時の注意点

ザイアンスの法則は、CMや広告の内容などによって期待した効果を発揮しない可能性もあるため注意が必要です。以下では、ビジネスで活用する時に気をつけたい点をご紹介します

CMや広告の内容

企業がテレビCMやネット広告を作成する時は、消費者の好みに対する配慮が欠かせないでしょう。CMや広告の内容は、見る人の印象を大きく左右する要素です。CMの構成や広告のデザインが消費者の好みに合わないと、ザイアンスの法則が有効に作用せず印象を悪くする可能性があります

最初の印象がよくない場合、大量に流しても好感度を上げるのは難しくなります。消費者は、好みでないCMや広告が何度も目に触れると、不快に感じて視聴を避けるかもしれません。視聴回数が減ればザイアンスの法則は効果が薄まるため、CMや広告の作成時には消費者の好みに配慮する姿勢が不可欠と考えられます。

顧客と接触する回数

企業が顧客と日常的に連絡を取る時は、メール配信やビジネスチャットで接触する回数にも注意する必要があります。人・事物に接触を繰り返すほど愛着が強まるとの考え方は、ザイアンスの法則の基本的な概念です。ただし、人間心理には多くの要素が影響するため、接触回数が増えるにつれ印象がよくなるとは限りません。

ビジネスの場では、ザイアンスの法則が効果を発揮する接触回数は10回までといわれています。企業が10回を超えて顧客にアプローチした場合、「しつこい」と思われるリスクもあると指摘されています。顧客と接触する回数が増えても、不快感を与えれば逆効果です。顧客から不快に思われないためには、過度な接触を控える意識が大切になります。

接触のタイミング

企業が顧客にアプローチする際は、印象の悪化を避けるため接触するタイミングにも注意が求められます。顧客へのアプローチを控えたい時間帯は、主に早朝・昼食時・夜間です。早朝は、通勤・通学の準備で忙しい時に連絡すると迷惑になります。昼食時や夜間は、ランチやプライベートの時間を楽しんでいる場合が多く、急な連絡は配慮に欠けます。

顧客の都合を考えずアプローチした場合、良好な関係を築くのは困難です。都合のよくないタイミングに連絡し続ければ、企業のイメージや好感度が下がるリスクは高まるでしょう。そのため、顧客と接触を重ねるなかで親交を深めるには、相手の都合がよい時に連絡する気遣いが必要と考えられます。CM・広告の内容や接触の回数・タイミングに注意すれば、ビジネスでザイアンスの法則は効果を発揮しやすくなると見込めます。

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