【iDeCo制度改正】NISAはしてるけどiDeCoもするべき?
更新日:2024.10.29ビジネス豆知識iDeCo(イデコ)は、老後への備えとして個人資産を運用できる年金制度です。近年は、制度改正に伴い、以前より使い勝手はよくなったといわれています。ただし、NISAを活用しているなら、こちらに加入する必要はないのではないかという声も聞かれる状況です。さまざまな意見があるなか、制度改正を機にiDeCoに興味をもち始めた方も多いといいます。以下で、iDeCoの有用性や難点を確認すれば、この制度に加入するか判断する時の参考になるでしょう。そこで今回は、iDeCoについて解説し、制度改正の主なポイントや加入に伴うメリット・デメリットをご紹介します。
目次
iDeCoとは?
iDeCo(イデコ)とは、個人で掛金を積み立て、60歳以降から公的年金と合わせて受け取るタイプの年金です。
特徴的な仕組み
年金の一種であるiDeCoは、個人的に掛金を拠出する仕組みが大きな特徴です。iDeCoを利用する時は、最初に掛金額を任意で設定し、設定金額を個人的な年金として一定期間にわたり積み立てていきます。この積立方法は私的年金制度に該当し、個人型確定拠出年金(iDeCo)と呼ばれています。同年金への加入は任意であり、自分が選択した金融機関・投資商品で掛金を運用する方式も特徴的です。
また、60歳から受け取れる年金の支給額は、掛金の合計金額や運用実績によって変わってきます。これらの仕組みから、一定の運用益が上がり公歴年金と一緒に支給されれば、老後資金の足しになるといわれています。
厚生労働省 iDeCoの概要 (参照 2024-10)
加入対象者
iDeCoの加入対象者は、国民年金の第1号~第3号・任意加入被保険者です。厚生労働省の資料によると、第1号・第2号・第3号は、それぞれ自営業者等・厚生年金の被保険者・専業主婦(夫)等が該当します。そのうち、第1号の場合、農業者年金の被保険者と国民年金の保険料免除者は対象外です。また、第2号は、公務員および私立学校教職員共済制度の加入者も、適用対象の範囲に含まれます。
ただし、企業型DCに加入している場合、同DCとiDeCoとも月ごとに掛金を拠出するといった条件が設けられています。国民年金の被保険者全員が対象者ではないため、iDeCoに加入する時は、あらかじめ適用範囲に含まれるかを確認しておくと安心です。
厚生労働省 iDeCoの概要(参照 2024-10)
NISAとの違い
iDeCoと新NISAとの主な違いは、対象年齢や拠出限度額の差異です。それぞれ制度上の規定を見ると、iDeCoの対象年齢は、原則として20歳~65歳未満に設定されています。また、年間の拠出限度額は14.4~81.6万円であり、月々の限度額は就労形態や企業年金の有無により変わる仕組みです。
一方、NISAの場合、利用者が1月1日時点で18歳以上になっていると積立口座を開設できます。さらに、つみたて投資枠の拠出限度額は年間120万円、成長投資枠の同限度額は年間240万円です。ほかには、iDeCoが60歳以降から受給開始となるのに対し、NISAは年齢を問わず任意に引き出せる違いもあります。上記をはじめ主要な差異をまとめると、次の通りです。
比較項目 | iDeCo | NISA |
---|---|---|
対象年齢 | 20歳~65歳未満(原則) | 1月1日時点で18歳以上 |
拠出限度額 | 年間14.4~81.6万円 | 年間120万円・240万円 |
受給開始 | 60歳以降(原則) | 任意で引き出し可能 |
積立方法 | 定期的・継続的 | 自由(成長投資枠のみ) |
優遇措置 | 所得税・住民税が減額 | 2つの投資枠が併用可 |
以上のように、iDeCoは対象年齢や拠出限度額でNISAより制約を受けますが、税金面で優遇される特徴も見られます。
厚生労働省 iDeCoの概要(参照 2024-10)
iDeCo改正の主なポイント
iDeCoは、年金制度の機能強化を目的とする近年の制度改正に伴い、従来に比べて利便性が高まりました。
iDeCo改正のポイント
iDeCo改正の主なポイントは、受給開始年齢の上限と加入可能な年齢が拡大された点です。同制度は、2022年の制度改正により、同年4月1日から受給開始年齢の上限が70歳から75歳へ変更されました。現行法の規定では、60歳からの15年間にわたり、年金受給が開始される時期を任意に選択できます。
また、同制度に加入できる年齢は、同年5月1日から原則として65歳未満までに広がりました。適用対象は、国民年金被保険者の会社員・公務員や任意加入者です。そのうち、任意加入者は、海外で暮らしていても差し支えありません。同時に、国民年金第2号被保険者は、公的年金に加入して10年未満なら65歳以上でも加入可能になっています。
加えて、同年10月1日以降、企業型DCの加入者に対する要件も緩和されました。さらに、2024年12月1日から一部の拠出限度額が引き上げられる見通しであり、これらの改正でiDeCoの使い勝手はよくなると見られています。
iDeCo公式サイト 2022年の制度改正について (参照 2024-10)
メリット
iDeCoの主なメリットは、税制上で複数の優遇措置を受けられるところです。まず、同制度で積み立てた掛金は、すべて所得控除の適用対象になります。毎年、掛金を継続的に拠出していけば、所得税や住民税の課税金額は抑えられ節税対策につながります。また、iDeCoの投資で得られた運用利益も全額非課税です。掛金の運用で生じた利益は、いずれも課税対象になりません。投資者は、すべての運用益を個人資産として入手できます。
さらに、同年金が支給される時は、公的年金等控除や退職所得控除の優遇措置を受けられます。公的年金等控除は年金を受給する時に適用となり、退職所得控除は一時金を受け取るケースが対象です。より多くの掛金をiDeCoに拠出して大きな運用益が上がり、多額の税控除を受けられた場合、老後資金形成の選択肢は広がると期待できます。
厚生労働省 iDeCoの概要(参照 2024-10)
デメリット
iDeCoに伴うデメリットは、原則的に途中解約できない点などです。同制度は掛金を投資・運用する方式ですが、年金制度の一環であり、通常は投資者が60歳になるまで資産を引き出せません。加入者資格を喪失した場合、それ以降の掛金拠出はできなくなりますが、運用中の資産は原則60歳まで継続して運用されます。
また、加入条件の細かさや拠出限度額の低さも、主なデメリットに挙げられるでしょう。一部の国民年金被保険者は加入不可であり、企業型DCの加入者は、月々にわたり掛金の拠出を求められます。そのうえ、iDeCoの掛金と企業型DC(事業主掛金)の合計額は、月々の拠出限度額にとどめる必要があります。一方の掛金が多い場合は他方の拠出が減少するため、企業型DCの出資額によってはiDeCoに拠出できなくなるかもしれません。加えて、運用益を得られる保証はなく資産が増減する投資リスクを伴うため、iDeCoに加入する時は慎重に検討する必要があるともいわれています。
厚生労働省 iDeCoの概要(参照 2024-10)
iDeCo公式サイト よくあるご質問 (参照 2024-10)
iDeCoはするべき?
iDeCoは、万人向けではないとの意見が多く、加入者全員が同様のメリットを得られるとは限らない仕組みといえるでしょう。
NISAをしている人ならiDeCoは必要ない?
すでに、NISAで資産運用している場合、iDeCoも利用するかどうかは予算次第と考えられます。大手金融機関のサイト情報によると、iDeCoとNISAは併用可能です。両制度を上手に活用すれば、各々のデメリットが相互に補完され、多くのメリットがもたらされると見られています。
ただし、両者は、それぞれ異なる特徴を有しています。NISAは掛金を自由に引き出せますが、iDeCoは60歳になるまで受給を開始できません。そのため、資金繰りが厳しいなか両方に投資すると、日々の生活費を圧迫する可能性があります。これらの特徴をふまえた場合、NISAへの出資で予算に余裕がなければ、無理にiDeCoも利用する必要はないと考えられます。
iDeCoはどんな人に有効?
iDeCoが有効となる人については、さまざまな意見が聞かれる状況です。主要な大手金融機関は、利用者の運用目的により、両制度の有効性は変わるとの見解を示しています。具体的には、掛金の引き出しやすさを優先するならNISA、老後への備えを重視するのであればiDeCoが有益といった意見が有力です。
また、金融関係の一部サイトでは、多くの所得や貯蓄があれば両制度を併用しても問題ないとの声が聞かれます。それに対し、十分な資金がない場合、iDeCoに投資するより貯蓄を優先したほうが得策と指摘されています。いずれにしても、誰もがiDeCoで利益を得られる確証はないため、それぞれの生活状況に応じて利用するかどうか検討するとよいでしょう。
iDeCoの始める際の注意点
iDeCoに加入して資金投資を始める際は、金融機関の選び方や加入期間と受給開始時期との関係について注意したいところです。
金融機関の選び方
iDeCoで金融機関を選ぶ時に着目したい点は、投資商品やサービスの内容です。この制度で出資対象となる商品は、大きく元本確保型(定期預金や保険)と投資信託の2つに分けられます。金融機関によって、いずれの商品を取り扱っているかは一律でないため、投資を始める時に事前確認は欠かせないでしょう。
また、具体的なサービス内容も、それぞれの金融機関で異なります。各々、資料提供や手続きの方法には違いが見られ、オンラインで加入できる場合や利用口座の開設時にサポートを受けられるケースもあります。投資商品・サービスとも多くの選択肢が用意されているため、金融機関選びでは、自分のニーズに合ったものを見つけることが大切です。
加入期間と受給開始時期
iDeCoは、加入期間の長さにより受給開始の時期が変わる仕組みになっています。公式サイトによると、通算加入期間と受給可能年齢との関係は以下の通りです。
通算10年以上:60歳/8年~10年未満:61歳/6年~8年未満:62歳/4年~6年未満:63歳/2年~4年未満:64歳/1カ月~2年未満:65歳(掛金は月単位で拠出していくため、最短の加入期間は1カ月になります)
上記の通り、通算加入期間が10年に満たないと60歳から受給開始できません。50歳を過ぎてから利用し始めると、60歳になった時点で加入期間が10年に達しないため、いつから受給可能になるか気をつける必要があります。
iDeCo公式サイト よくあるご質問(参照 2024-10)
運営管理や変更時の手数料
iDeCoの運営管理や金融機関の変更に伴う手数料は、それぞれの金融機関で違いがあります。月々の運営管理にかかる手数料を比べると、通常、差額は数十円~数百円です。とはいえ、年間で12倍・10年間なら120倍となり、加入期間が長期に及ぶほど大きな差が生じてきます。また、運営管理する機関を変更する時は、「加入者等運管理機関変更届」の提出とともに変更手数料も必要です。
さらに、新たな金融機関で投資商品を選び直すと、再び運用開始するまでに1~2カ月ほど要する可能性があります。iDeCoで利用する金融機関や投資商品は、安易に選ぶと後々に余計な手数料が発生するケースもあるため、慎重に決めることが望ましいと考えられます。
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