これはパワハラ?事例を紹介
更新日:2023.04.07ビジネス豆知識パワハラとして訴えられると、損害賠償を支払うことになったり、処分されたりするケースがあります。暴力や暴言はもちろんパワハラになりますが、理由もなく仕事を与えなかったり、プライベートなことを執拗に聞いたりするのもパワハラに含まれるため、注意が必要です。こちらでは、どの様な言動、行為がパワハラにあたるのかについてお伝えします。
厚生労働省がまとめたパワハラについてのガイドライン
パワハラとは、同じ職場で働く人物に対して、地位や人間関係といった職場内での優位性を利用して精神的または肉体的な苦痛を与えることです。上司から部下に対しての嫌がらせに対して使われるケースが多い言葉ですが、同僚間や、部下から上司に対して行われる場合もあります。ただし、業務上必要な指示や指導であると認められれば、パワハラにはあたりません。
厚生労働省がまとめたガイドラインによると、職場のパワーハラスメントは6種類に分類されます。パワーハラスメントの種類は以下のとおりです。
□身体的な攻撃・・・暴行や傷害
□精神的な攻撃・・・脅迫・侮辱・名誉毀損・暴言といった行為
□人間関係からの切り離し・・・隔離や無視、仲間から外す行為
□過大な要求・・・明らかに遂行不可能な業務の強制
□過小な要求・・・合理性のない程度の低い仕事を命じる、または仕事を与えない
□個の侵害・・・私的なことに過度に立ち入ること
パワハラにあたる行為をしてしまわない様に気をつけましょう。
身体的な攻撃
「身体的な攻撃」とは、殴る・蹴る・突き飛ばす・髪を引っ張る・胸ぐらを掴むといった、直接的な暴力のことです。
具体的な事例としては「アジア航測事件」があります。こちらの事件は、女性社員が同僚の男性社員に殴打され、怪我を負った事件です。
1997年3月4日、被害者Aが加害者Bに対して印刷機のカートリッジを注文する様に伝えました。するとBは命令口調でいわれたとして反感を持ち、「自分でやれば良い」と言い返します。
AがBに対して言い返すと、Bは「いつも指図するな」、「俺は女に指図されるのは嫌いなんや」といい、口論になります。Bは激高し、Aの顔を1回殴打しました。Bはさらに殴打しようとしますが、同僚に止められます。
Aは暴行により顔面挫創と頚椎捻挫の傷害を負い、頸部や腰部痛、手足のしびれが残りました。さらに、事件後の休業中に解雇されます。AはBと会社に損害賠償を求め、裁判の結果、加害社員Bと会社の損害賠償責任が認められました。また、Aが欠勤している最中になされた解雇には理由がないとして、解雇も無効になります。
こちらの事件の様に被害者が怪我を負うほどの暴力ではなくても、頭を小突いたり、書類を投げつけたりといった行為もパワハラとされる可能性があります。暴力的な行為は行わない様に気をつけましょう。
精神的な攻撃
暴言や精神的苦痛を与える行為により、精神的に追い詰めるパワハラです。「お前の代わりはいくらでもいる」「できないなら辞めてしまえ」といった言動は、パワハラにあたります。
実際にあった事例には「サントリーホールディングスほか事件」があります。入社9年目の社員Aは、上司Bから「新入生以下だ。もう任せられない」「お前は馬鹿だ」といった発言をされました。Aにも、上司から何度も支持された業務を遂行していなかったことをはじめとしたいくつかの問題が認められましたが、Bの発言は侮辱にあたるとして、賠償が命じられます。
また、暴言以外にも、精神的苦痛を与える行為もパワハラになります。「日本ファンドパワハラ事件」では、上司が部下2名に12月~翌6月まで扇風機を当て続けたことがパワハラと認められました。暴言はもちろん、精神的苦痛を与える行為も行わない様にしましょう。
人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しもパワハラになります。たとえば、一人だけデスクを別の部屋に置いたり、全員参加の行事に参加させなかったりといった、社員をわざと孤立させる行為です。
「人間関係からの切り離し」型のパワハラには、「自動車タイヤ等販売会社女性従業員配転事件」があります。女性事務員Aは、電話応対を巡って社長と口論になり、解雇を告げられました。Aが地位保全の仮処分を申し立てたところ解雇は撤回になりますが、職場復帰後Aは肉体労働に配転されます。さらに、机と椅子をタイヤ梱包場へ移され、事務所への立ち入りも禁じられました。
裁判では、配転に合理性がないことや、机の移動は事務員Aに孤立感を生じさせる意図があることが認められます。結果、配転無効と慰謝料55万円の支払いが命じられました。
こちらの事件の様に、命令に従わない社員に対し、社会通念上許容される範囲を超えて苦痛を与えるのは違法になります。
過大な欲求
「過大な要求」型パワハラとは、明らかにその人物の能力を超える仕事や、ひとりではできない仕事を押し付けることを指します。事件として有名なのは、2002年に起こった「国際信販事件」です。
被害者Aは本来の業務である経理から移動させられ、ほかの社員の支援が必要な業務をひとりで行う様に指示されました。さらに、人員補充の要求も却下されます。Aの勤務時間は早朝から深夜に及び、土日出勤も重なりました。
また、資料置き場として使われていた狭い席に移動させられたり、休暇を申請した際にホワイトボードに「永久に欠席」と書かかれたりといった嫌がらせも行われます。こちらの事件では、代表取締役2名に個人としての損害賠償責任が認められました。
過小な欲求
「過小な要求」は、「過大な要求」とは反対に労働者に本来の業務とは異なる雑務などの仕事しか行わせないパワハラです。
「過小な要求」の事例には、「松蔭学園事件」があります。こちらは、高等学校の教諭に対して、授業や担任の仕事から外し、職員室内や別室で隔離した事件です。教諭は別室に隔離され、何の仕事も与えられないまま4年6カ月過ごしました。さらに、5年以上に渡って自宅研修を命じられます。加えて、一時金の不支給や賃金の据置も行われました。
裁判では、教諭は違法行為による精神的苦痛を受けたとして、学校法人に600万円の損害賠償を命じます。こちらの事件から分かるとおり、業務をさせなかったり、自宅待機を命じたりする場合には、十分な理由が必要です。何らかの理由があって職員に仕事をさせない場合は、パワハラとみなされない様に十分注意しましょう。
個の侵害
「個の侵害」とは、プライベートなことを執拗に尋ねたり、休日や深夜といったプライベート時間に無理に連絡をとらせたりするケースです。
実際に起こった事件には、「誠昇会北本共済病院事件」があります。Aは、専門学校に通いながら准看護師として病院に勤務していました。同病院には5名の准看護師の先輩がおり、一番上の先輩であるBの言動は絶対とされていました。
BがAを服従させる関係が続き、勤務時間外に遊びに付き合わせたり、家の掃除を命じたり、Aの交際相手に対して無断でメールを送ったりといった嫌がらせが行われます。結果、Aは自殺してしまいました。
裁判ではBの不法行為責任が認められ、遺族に対して1,000万円の損害賠償を支払うことが命じられます。
こちらの事件ほど悪質なケースではなくても、過剰に私的なことを聞いたり、携帯を覗き見たりするのは個の侵害にあたる可能性があります。行わない様に気をつけましょう。
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