2019年の消費税増税で変わったことは何か?

更新日:2023.03.30スタッフブログ

10%消費税増税

2019年10月1日、日本では消費税が8%から10%へと引き上げられました。消費税は、私たちの生活と密接にかかわる税金のひとつです。今後、消費税増税の影響が多くの場面で見られるでしょう。そこで今回は、消費増税の基本的知識や、軽減税率の対象品目、増税と一緒に導入された制度などを解説します

消費税増税の基本知識

消費増税の知識は、全社会人にとって欠かせないものです。時に話のネタとして、取引先との会話に登場するかもしれません。ここでは消費税増税の基本的な知識をご紹介します。

消費税増税の目的

消費税は、1989年に3%でスタートし、その後5%、8%へと引き上げられてきました。なぜ消費税増税は行われるのでしょうか。その目的には以下のようなものがあります。

□社会保障の財源確保
□比較的安定した税収の確保

現在、日本は人口の20%以上が65歳以上であり、「超高齢化社会」と呼ばれています。高齢者が増加することで、社会保険料や医療費などの増加が予想されます。社会保障財源の確保は必要不可欠です。

社会保障の財源を確保する際は、所得税や法人税の引き上げが行われるのが一般的です。ただ、所得税や法人税の引き上げで対応すると、急激なスピードで減少している現役世代に今以上の負担を強いることになってしまいます。そこで、社会保障の財源確保という目的を遂行するために、特定の世代に負担が集中しない消費税増税という形をとったのです。

また、財務省が提示しているデータでは、所得税や法人税は景気によって税収が上下しているのに対して、消費税は10兆円程度の税収で安定しています。経済動向に影響を受けにくい税金のため、増税の対象となったともいえるでしょう。

消費税増税のメリット

消費税増税についての理解を深めるには、メリットを知る必要があります。消費税増税には、以下のようなメリットがあるといわれます。

□社会保障の充実化
□公共事業への投資額増加
□被災地への復興支援

年金や子育て支援、医療といった社会保障分野は、消費税増税によってさらに充実化が図られることが期待されています。特に、2019年に「2000万円問題」が話題となった年金については、消費税が大切な財源となっています。
景気を上向かせるには、国主導での公共事業への投資が欠かせません。消費税増税によって、道路の整備や橋、ダムの建設など、私たちの生活がより豊かで便利になるために投資が行われます。特に、高度経済成長期に整備・建設された施設は老朽化が進んでいます。公共事業への投資は、人々が安心して暮らすためにも必要不可欠といえるでしょう。

また、近年は台風や地震などの自然災害が相次ぎました。未だにその爪痕が残っている地域も少なくありません。消費税が増税され、一定の財源を確保できれば、仮設住宅の設置やそこで暮らす方々の生活支援など、被災地への復興支援が可能になります。今後の災害にも備えることができます。

消費税増税のデメリット

一方、消費税増税はメリットばかりではありません。今後の生活にとってデメリットとなる可能性もあります。懸念されている点は以下の通りです。

□国民の消費活動によっては十分な税収を確保できない可能性もある
□国民の金銭的な負担が増加する
□消費行動の低下による産業への影響

消費税は、所得税や法人税と比べて景気動向に影響されにくいことから増税の対象とされました。しかし、消費税が増税され負担が大きくなれば、消費活動が低下してしまう可能性も十分あります。その結果、予定通りの税収を確保できないかもしれません。消費税は安定した税収が見込めるとはいえ、十分な財源を確保できるかは不透明です。

また、消費税増税によって国民の金銭的な負担が増加すると、その負担を他の消費行動を抑えることで軽減しようと考えるでしょう。例えば、外食や飲み会を控える、子どもへの投資を減らす、車の購入を見送るなどです。消費行動の低下はさまざまな産業に影響を与えます。消費税増税によって悪循環が生まれる可能性も否定できません。

軽減税率とは何か

今回の消費税増税では、基本的に10%が適用されるものの、品目によっては軽減税率が導入されています。軽減税率とは、特定の品目に限り、消費税を8%に据え置いて提供するルールです。以下では、軽減税率について詳しく解説します。

軽減税率の目的

軽減税率の目的は、「低所得者の負担緩和」にあります。消費税は、所得や資産の額に関係なく、すべての方が同じ税率を負担しなければならず、所得の低い方ほど生活に占める税負担が大きくなるという特徴があります。この特徴を「逆進性」といい、消費税を増税する際はいつも議論となってきました。そこで、2019年10月1日に行われた消費税増税では、一定の品目を税率8%に据え置くことで、低所得者の負担緩和を実現しています。

ただ、高級食材を購入するケースの多い高所得者のほうが軽減効果は大きくなるという試算もあり、逆進性対策としては軽減税率だけでは不十分なのではないかという声もあがっています。

軽減税率のメリットとデメリット

反対の声も根強い軽減税率ですが、一般消費者の立場から考えると、ある程度の出費の軽減につながると考えられます。特に、食料品は軽減税率の対象品目とされており、今まで通りの税率で購入できる点は大きいでしょう。また、新たな制度が誕生するタイミングは、新しいビジネスが生まれるタイミングでもあります。軽減税率をうまく活用したビジネスが誕生するかもしれません。

ただ、前述の通り高所得者の方が得をする制度であり、事務的な手間が増加する軽減税率は、デメリットのほうが大きいともいわれます。実際、運用が始まって以降も軽減税率の基準が分からないという声も耳にします。今後さらに大きな問題へと発展する可能性もあるでしょう。

軽減税率の対象品目

軽減税率の対象品目となっているものは以下の2つです。

□種類・外食を除く飲食料品
□週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)

軽減税率の内容については賛否両論あります。「新聞が対象となっているのに、おむつの様な生活に欠かせないものが軽減税率の対象となっていない」という不満の声もあがっています。今後見直しが行われる可能性もあるでしょう。

消費税増税と一緒に導入されたもの

2019年10月1日に行われたのは消費税増税だけではありません。「保育、幼児教育の無償化」や「キャッシュレス決済時のポイント還元」も行われました。以下では、それぞれについて簡単に解説します。

保育、幼児教育の無償化

保育、幼児教育の無償化は、対象となる子どもについて、幼稚園・保育所・認定こども園の費用が無償化される制度です。今回の消費税増税を財源として行われました。3歳から5歳は世帯所得にかかわらず制度の対象となり、0歳から2歳は住民税非課税世帯のみが対象ですが、多くのご家庭にとってメリットとなる制度です。ただ、現在は待機児童の問題も拡大しており、保育、幼児教育の無償化より先に待機児童問題に取り組むべきだったとの声もあります。

キャッシュレス決済時のポイント還元

消費税増税と同時に政府が進めているのが「キャッシュレス決済」です。キャッシュレスとは、現金を使わずに電子マネーや二次元コードで料金を支払う方法で、消費税増税に伴いキャッシュレス決済時にはポイントが還元される様になりました。これによって決済方法によっては、従来の8%時より安く購入できるケースもあります。ただし、この制度は増税後9カ月間とされ、2020年6月30日に終了予定です。

消費税は私たちの生活にも密着した税制であり、特に社会人であれば知っておかなければなりません。税金に関する正しい知識を身につけ、普段からお得に生活できるように備えましょう。

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