人材派遣業界の市場動向や今後の課題は?企業が取り組むべきこと5選

更新日:2022.08.23スタッフブログ

人材派遣業界とは、派遣会社が自社に登録しているスタッフを企業などに派遣する業界を指します。派遣というシステムは、企業が必要なときに必要な人材を確保でき、働き手は多様な働き方を実現できるため、人気を得てきました。しかしメディアなどでは将来的には衰退の可能性があるとも報じられています。コロナ禍などで状況が変わり始めているなか、人材派遣業界の今後はどのような動きになるのでしょうか。解決すべき課題についても解説します

人材派遣業界の市場動向

人材派遣業界の市場動向

現在、人材派遣業界の動向はどのようになっているのでしょうか。

矢野経済研究所によると人材派遣業界、人材業界業、再就職支援業をまとめた人材関連ビジネス主要3業界市場規模推移は右肩上がりであり、2016年度は5兆4380億円だったものが、2021年には8兆6410億円(見込み)まで成長しているとしています。

また一般社団法人日本人材派遣協会によると2020年1~3月平均の派遣社員数は約143万人で、役員を除く雇用者全体の2.5%を占めています。

市場規模を伸ばしてきた人材派遣業界ですが、今後については状況が変わるとも予想されています。要因の一つはコロナ禍の影響によるものです。各企業が経営悪化すると人件費を減らそうとするため、今後、派遣切りや有効求人倍率の低下が起こると懸念されています。

この他、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差改善を目指す同一労働同一賃金制による、企業側から見た派遣を雇うことのメリットの減少、2015年の改正労働者派遣法による派遣社員へのキャリアサポート義務化などでの派遣会社のランニングコスト増なども、影響があると考えられます。

矢野経済研究所「人材関連ビジネス主要3業界市場規模推移」,https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2826,(参照 2022-07-22)

一般社団法人日本人材派遣協会「1.派遣の現状」,https://www.jassa.or.jp/keywords/index1.html,(参照 2022-07-22)

人材派遣業界が解決すべき課題

人材派遣業界が解決すべき課題は大きく3点あります

1点は少子高齢化による労働力人口の減少です。日本の人口は2004年12月の1億2,784万人をピークに年々下がり続け、国土交通省の「国土の長期展望」中間とりまとめによると、2050年には1億912万人にまで減少すると考えられています。

そこで人材派遣会社は、幅広い年齢層の人に労働参加を呼びかけるとともに、一人ひとりの労働スキルを高めることが重要となります。

2点目は派遣会社のランニングコスト増による利益率の低下です。現在、派遣社員への保護、キャリアサポートは義務化されているなど、派遣会社はコストがかかる状況にあります。また、派遣企業、派遣スタッフ双方に営業担当者を付けねばならず、人件費もかかりやすくなっています。

経営において借り入れ・増資に依存しやすいことも、将来的に衰退が予想されている要因の一つです。利益をいかに確保するかが、生き残っていくために重要になってきます。

3点目としては人材業界全体でAI化の進行が行われているなか人材派遣会社もデジタル化への対応が急務となっていることが挙げられます。AIやビッグデータなどの先端テクノロジーを活用した人事システムのHRテック、オンラインでの派遣社員への面談など、世の中の動きに合わせた対応をとる必要があるでしょう。

国土交通省の「国土の長期展望」中間とりまとめ
,https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kokudo03_sg_000214.html,(参照 2022-07-22)

人材派遣業界が今後に向けて取り組むべきこと5選

ここからは人材派遣会社が生き残っていくために、今後に向けて行うことが推奨される点について5つ紹介します

他社に比べた自社の強み・付加価値を強化

多くの人材派遣会社があるなかで自社の強みや付加価値を強化し、アピールしていくことが大切です。例えば派遣社員に対しては、サポート体制やシステムの効率化、充実した仕事の紹介などを強みにすることが考えられます。派遣先企業に対しては、人材紹介のスピードアップ、案件に適した人材の紹介なども挙げられます。

またITエンジニア、クリエイター、事務、建築業など、それぞれの業界に特化することで人材が集まりやすく、企業からの求人を増やせる可能性もあるでしょう。さらにテレワークや時短勤務などの求人をそろえ、働き方の多様化に力を入れていることもアピール材料にできます。

優秀な求職者を確保

労働人口が減り一人ひとりの生産性向上が求められるなか、より優秀な派遣社員を確保することが大切です。すぐに離職するような人材ばかりで、新規採用者数を退職者数が上回るような事態も避けなければいけません。

優秀な派遣社員を確保するためには、求職者獲得のルートを開発することが重要です。シニア層や主婦層への働きかけも重要であり、場合によっては国内だけではなく海外人材も検討する必要があります。

また能力が高い人材は他でも仕事が見つかりやすいため、少しでも不満があるとすぐに辞めてしまう可能性があります。そこで長く働いてもらうために、頻繁に連絡を取って必要なケアやサポートを行うことも大切です。

コロナ禍の影響によるリモートへの対応力強化

コロナ禍が後押しをするように、リモートワークが増えました。コロナ禍が過ぎたとしても、リモートワークを続けたいという派遣先企業や派遣社員は多く、対応の必要があります。仕事紹介ページなどではリモートワークの求人特集などを行うと同時に、在宅で働くためのセミナーなどを派遣社員に対して行うのも手でしょう。

在宅の場合、一人で作業をすることからストレスを溜めやすく、派遣先企業の社員と顔を合わせる機会が減るために意思の疎通がうまくいかず、思わぬトラブルが起きる場合もあります。そこで、営業担当者が派遣先企業と派遣社員に対してケアを十分に行うことも大切です。なかにはテレワークを好まない派遣社員もいるため、テレワークに切り替えてほしいと派遣先企業から言われた場合などの対応も考える必要があります。

また、派遣会社自体もリモートでの対応ができるようにすることもおすすめです。リモートでの営業、面談の機会を増やすことで、派遣先企業、派遣社員の両方の負担を軽減できます。これから派遣で働いてみたいという求職者にとっても、面談のための時間や場所の制約がなくなり、応募しやすくなると考えられます。

人材紹介業への参入

人材派遣会社が人材紹介業へと参入する例も多くあります。

人材紹介業とは、仕事を探している休職者を人材が欲しい企業に紹介する会社です。人材派遣業界では、派遣先企業の人材関連予算の縮小や雇い止めなどの問題もあり、利益率を上げられない状況が続いてきました。しかし人材紹介は人材派遣会社に比べると、営業や派遣社員へのサポートなどに経費がさほどかからず、利益率を上げられるメリットがあります。

派遣会社の場合、すでに人材にリーチするためのノウハウがあり、既存のリソースを新たな求職者募集にも役立てることが可能です。また人材を求めている企業への開拓についても、過去の実績を活用できるため、参入が容易だと考えられています。

M&Aも検討する

多くの会社が派遣業界に参入するなか、M&Aで大手資本の傘下に入り、生き残りをかける手もあります。M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で企業の合併と買収を指し、複数の会社が一つになったり、とある会社が他社を買収したりすることを指します。

身売りをして大手の傘下に入ることはマイナスに思う人もいるかもしれません。ですが、M&Aを利用すると資金の問題を解決でき、雇用を継続できるメリットがあります。資金調達などの煩わしさから離れ、コア業務に集中できる点も魅力です。

ただし人材派遣の事業を譲渡した場合、個人情報漏洩のリスクや、競合避止義務が有るので注意をしましょう。個人情報漏洩については譲渡時に、登録者のマイナンバーカードや履歴書などが外部に漏れる可能性があります。十分な注意を行いシステムの移行を行ってください。

競合避止義務は、事業を譲渡した日から20年間は当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市区町村および隣接した市区町村では同一の事業を行ってはいけないというものです。一定期間は同じエリアで人材派遣業が行えなくなるので注意しましょう。

課題解決が求められる人材派遣業界

課題解決が求められる人材派遣業界

現在、市場規模が右肩上がりとされる人材派遣業界ですが、必ずしも利益率が高いわけではありません。ランニングコストが高い一方、世の中の情勢に合わせ企業側は人材にかける費用を抑えようとするため、運営に苦慮する派遣会社もあります。自社だけの強みを持ち、リモートワークなどの新しい働き方に対応するなど、新たな戦略を持つことが、これからの派遣会社に求められています。

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