東京のビジネスシーンで注意したい「方言」問題
更新日:2023.03.01ビジネス豆知識東京のビジネスシーンでは、標準語でコミュニケーションを取るのが一般的です。地方出身の新社会人の中には、地元の方言が抜けず、苦労している方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、東京のビジネスシーンで注意したい「方言問題」についてご紹介します。
目次
東京のビジネスシーンで方言は「アリorナシ?」
東京のビジネスシーンにおける方言の使用は、基本的に避けたほうが無難です。その理由について、ビジネスコミュニケーションの観点からお話します。東京のビジネスシーンでは、共通語を用いた円滑なコミュニケーションが求められます。そこに方言が入り交じると「正確な情報が伝わらないリスク」や「相手を不快にさせるリスク」が生じるかもしれません。
例えば、「分かりました」と返答する場合、山形弁では「わがた」、広島弁では「わかりゃんした」、沖縄方言は「ワカヤビタン」といいます。これらは地域言語であり、全国から人が集まる東京では、なかなか通用しません。相手が分からない、もしくは分かりにくい言葉を用いると、トラブルの原因になることがあります。
また、目上の方や初対面の方、社外の方に方言を使うのは避けたほうが良いでしょう。相手が言葉の意味を理解できず、「敬意を感じない」「無礼な人物」という印象を与える可能性があります。これは会話のみならず、メール文や書類作成においても同様です。とりわけメール文は、無意識に方言口調で書いてしまう方も見られます。
文書は形として残るため、それがきっかけでトラブルに発展するケースもあります。方言が抜けない方は、意識的に適切な標準語が身に付けていきましょう。なお、ほとんどの方はトレーニングを積めば標準語を身に付けられます。自分には無理かもしれないとあきらめず、積極的にチャレンジしてみましょう。
ビジネスシーンで方言を使うメリットはある?
人は共通点のある相手に親近感を覚えるものです。互いに出身地が同じであれば、方言で楽しく会話できたり、地元ネタで会話が盛り上がったりするでしょう。ただし、TPOはしっかりと意識しなければなりません。たとえ同郷の相手であっても、上司や顧客にいきなり方言を多用するのは避けたほうが良いでしょう。方言を使う際は、時と場を良く考える必要があります。
方言は気にしすぎもNG
基本的に方言は控えたほうが良いものの、気にし過ぎるのも良くありません。方言やイントネーションを気にした結果、自然に会話できなかったり、言葉を発することが怖くなったりした経験のある新社会人も少なくありません。ビジネスマナーは遵守すべきですが、苦痛をともなうレベルなら早急に改善する必要はないでしょう。
実際に起きた方言トラブル
会話に方言を用いることで、どの様なトラブルが起きるのでしょうか。実際にあった方言トラブルの一例をご紹介します。
ケース1.「〜してあげます」
仕事の都合から、カーディーラーに訪れた男性の話です。彼がディーラー側の担当者に電話した際、「こちらはサービスしてあげます」「○時までにお電話してあげます」などと、語尾に「あげます」とつくことが、どうしても気になっていました。
一般的に「〜してあげます」は、立場の上の者が使う言葉です。恩着せがましく、敬いも感じられない言葉であるため、男性は不快感を覚えていました。それを指摘した際、以下の返答があったのです。
「私の地元では、お客様や目上の方に敬意を込めて使う言葉です」
東北地方の一部では「〜させていただきます」を「〜してあげます」と表現します。それを顧客とのやりとりに使ったため、誤解が生じたわけです。言葉尻ひとつ違うだけで、相手に強い不快感を与える可能性はあります。大多数の方が理解できる共通語を適切に使えていたら、こういったコミュニケーションのトラブルは起こらなかったでしょう。
ケース2.「いちゃつく」
ある上司が部下に、進捗確認をした際の話です。「例のプロジェクトの進捗はどうなっている?」と口頭で聞いたところ、以下の様な回答がありました。
「やや遅れ気味です。明日から“いちゃついて”進めます」
「仕事中にいちゃつくとは何事だ!」と上司は憤慨しましたが、これもまた方言でした。部下は信州地方出身で、現地では「いちゃつく」を「急ぐ・急いで」という意味で使います。この様に、当該地域でしか通用しない方言は少なくありません。標準語との乖離が激しい方言は、基本的に使わないように気をつけたほうが良いでしょう。
デキるビジネスパーソンは標準語と方言を使い分ける!
方言は、時として強力なコミュニケーションツールになります。特にデキるビジネスパーソンは、標準語と方言を巧みに使い分けている印象です。以下をご覧下さい。
【場所(状況)】
□会議や商談などのフォーマルな場:標準語
□接待などの私的な場:方言
【相手】
□初対面や目上の人:標準語
□同じ出身地の同僚/信頼関係を構築している顧客:方言
ビジネスシーンと一口にいっても、場所や状況、会話相手は千差万別です。私的な場での発言や、距離感が近い相手との会話ほど、方言が許容される傾向にあります。方言のメリットは先述した通りです。上手く使えば相手との距離が縮まるでしょう。なお、「キャラ立ちする」という理由から、あえて方言で会話するビジネスパーソンも存在します。
標準語を正確に身に付ける3つのコツ
「国立社会保障・人口問題研究所」が実施した「第8回人口移動調査」によると、東京在住者の約45%が地方出身者とのことです。「東京の人は標準語で話すのが当たり前」と思うかもしれませんが、その多くが上京後に標準語を身に付けています。
そこで、標準語を正確に身に付ける3つのコツをご紹介しましょう。
1.標準語を話す友達・知り合いを増やす
標準語を話す友達・知り合いを増やすのがもっとも効率的です。海外留学で外国語が身につく理屈と同じで、その環境に身を投じれば、自然と言葉は身に付きます。特に生まれ・育ちが東京の友人は、頼もしい味方となるでしょう。正確な標準語を身に付けているため、自身の訛りやイントネーションの違いを指摘してもらえます。
2.ニュースやラジオを視聴する
自宅で取り組めるトレーニング方法として、ニュースやラジオの視聴をおすすめします。何気なく観ているニュース番組も、標準語会話の研修を積んだアナウンサーが原稿を読み上げています。その真似をするだけで、正しい標準語が身につくでしょう。もちろん、言葉のイントネーションも正確です。アナウンサーの言葉に違和感があったら、自分の使っている言葉は方言かもしれません。
3.辞書やアプリを活用する
方言は使わなければ問題ありませんが、訛りはなかなか矯正できないものです。正確なイントネーションを身に付けたい場合、「アクセント辞書」で学ぶと良いでしょう。アクセント辞書とは、さまざまな日本語のアクセントに関する解説や、習得方法をまとめた一冊です。おすすめは、新語・外来語などの計76,000語以上を収録した「新明解日本語アクセント辞典 第2版(三省道)」です。実際の音声が聞けるCDを付属するため、効率的に学習できるでしょう。
また、スマートフォンで動作するアプリも有効です。代表的なものに「NHK(日本放送協会)」がリリースする「NHK日本語発音アクセント辞典(iOS)」があります。通勤中などのスキマ時間に学習できるので、時間的余裕がない方はぜひ活用してみましょう。自分のライフスタイルに合った方法で、標準語を身に付けて下さい。
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