司法試験とは|試験内容・難易度から合格後のキャリアまで解説

更新日:2024.08.06スタッフブログ

司法試験とは|試験内容・難易度から合格後のキャリアまで解説

司法試験は、合格して資格を取得すると、裁判官・検察官や弁護士になる道が開かれます。最近は裁判官や弁護士が足りないとの指摘もあり、資格取得者が活躍できる可能性は大きいと考えられます。ただし、試験の難易度は高いため、挑戦するか迷っている人は多いかもしれません。それでも、受験しようと考えているなら、各種の関連情報を確認しておくと役立つでしょう。そこで今回は、司法試験の概要や難易度・合格率を解説し、司法試験合格後の流れやキャリアをご紹介します

【他の資格シリーズはこちら】
宅建士のキャリア|試験概要や資格取得後の流れ
行政書士のキャリア|試験概要や資格取得後の流れ
証券外務員のキャリア|試験概要や資格取得後の流れ
管理業務主任者のキャリア|資格試験や年収について

司法試験の概要

司法試験の概要

司法試験は、法務省による管轄のもと、法務省大臣官房人事課の司法試験委員会が実施する資格試験です。

令和6年 試験日程

令和6年(2024年)の試験日程については、令和5年11月7日の司法試験委員会により次の通りに決定されました。

・試験公告:2023年12月5日(金)
・願書交付:2024年3月8日(金)~4月2日(火)
・願書受付:2024年3月19日(水)~4月2日(火)

試験日 試験科目
7月10日(水) 論文式試験
選択科目、公法系科目第1問・第2問
7月11日(木) 論文式試験
民事系科目第1問~第3問
7月12日(金)
7月13日(土) 論文式試験
刑事系科目第1問・第2問
7月14日(日) 短答式試験
m民法、憲法、刑法

・短答式試験成績発表:2024年8月1日(木)
・合格発表:2024年11月6日(水)

2024年の司法試験は、3月~4月に願書が交付・受付され、本試験は7月中旬に実施されています。また、短答式試験の成績は8月初めに発表となり、合格発表は11月初旬に行われる予定です。

法務省 令和6年司法試験の実施について (参照 2024-07)
法務省 令和6年司法試験の実施日程等について (参照2024-07)

試験内容

司法試験は、大きく短答式と論文式に分けられています。短答式は択一式を含み、論文式は筆記により解答する方法です。司法試験委員会によると、各試験の内容は以下のように発表されています。

試験科目 内容
短答式試験
憲法・民法・刑法
論文式試験 公法系科目:憲法・行政法に関する分野
民事系科目:民法・商法・民事訴訟法に関する分野
刑事系科目:刑法・刑事訴訟法に関する分野
選択科目:倒産法・祖税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法
国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)から1つ選択

短答式試験の憲法・民法・刑法では、裁判官・検察官・弁護士になるうえで必要となる専門的な法律知識や、法的な推論能力が問われます。また、論文式試験では、各分野に関する専門的な学識や法的な分析・構成・論述力が判定されます。

法務省 司法試験の仕組み (参照 2024-07)

受験資格

法務省の説明によると、司法試験を受ける時は、原則として以下に示す資格のいずれか1つが必要です。

・法科大学院課程を修了
・司法試験予備試験に合格

これら2つの資格が有効となる期間は、5年間と定められています。法科大学院課程の修了日か司法試験の予備試験に合格後、最初の4月から5年の期間内は、毎年の試験を受けることが可能です。

また、法科大学院課程に在学中の時も、学長から所定の認可があると受験資格を得られます。この場合、有効期間は資格取得後の4月から5年間、もしくは最初に受験した年の4月から大学院課程を修了・退学するまでのうち短いほうの期間です。

さらに、いずれかの資格で司法試験を受けると、その資格が有効な期間は他の資格で受験できないことになっています。司法試験の受験資格は期限があり、同一資格での受験回数などは制限されます。過去に資格を取得済みでも、将来的に受験不可となるかもしれません。そのため、受験資格の詳細は、法務省の資料などで確認しておくことをおすすめします。

法務省 司法試験の仕組み (参照 2024-07)
法務省 令和6年司法試験に関するQ&A (参照2024-07)

司法試験の難易度、合格率

司法試験の難易度、合格率

司法試験は、さまざまな国家資格のなかで最難関といわれる試験です。近年の難易度や合格率はどのようになっているのでしょうか。

難易度

司法試験は、難度の高さに特徴があります。法務省の資料を見ると、10年前となる2014年の試験では、受験者8,015人のうち合格者は1,810人でした。そのうち、予備試験合格者は244人が受験し、合格者数は163人にとどまっています。また、5年前の2019年における試験結果は、受験者4,466人に対して合格者が1,502人でした。予備試験合格者の受験人数は385人となり、そのうち315人が最終的に合格しています。

各年の合格率を示すと、2014年は1810÷8015=約23%、2019年は1502÷4466=約34%です。これらの数字を比べる限り、試験の合格率は、10年前より5年前のほうが上がっています。ただし、いずれも合格者は2,000人に届かず、難易度は大きく変わっていないと考えられます。

法務省 平成26年司法試験法科大学院等別合格者数等 (参照 2024-07)
法務省 令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等 (参照2024-07)

合格率

ここ数年、司法試験の合格率は、上昇傾向が見られる状況です。最近2年のうち2022年の司法試験は、3,082人が受験するなか1,403人が合格し、合格率は1403÷3082=約46%でした。また、2023年の試験結果は受験者3,928人・合格者1,781人であり、合格率は1781÷3928=約45%となっています。10年前・5年前も含めた場合、各年の合格率は、約23%・約34%・約46%・約45%と推移しています。

このような変化をふまえる限り、試験の合格率は、上昇していると考えてよいでしょう。とはいえ、合格者の人数は、最近の2年間も10年前や5年前と同様に1,000人台のままです。

一方、受験者数は、8,015人・4,466人・3,082人・3,928人と減少傾向が続いています。そのため、合格率の上昇は受験者数の減少が主な要因と見られ、合格者数は横ばいであり、難易度は高いままと考えられます。

法務省 令和4年司法試験法科大学院等別合格者数等 (参照 2024-07)
法務省 令和5年司法試験法科大学院等別合格者数等 (参照2024-07)

合格者の内訳など

合格者の内訳を見ると、年齢層は19歳以下から65~69歳まで広範囲に及び、職種は公務員・会社員や大学生など多様です。2023年の受験状況を示す資料によれば、最年少の合格者は19歳以下、最年長は65歳以上でした。合格者の職種は法科大学院生78人が最多であり、会社員41人・大学生36人と続いています。

また、2023年の試験において合格するまでの受験回数は、1回目が1,584人と最多でした。2022年も同じく最多は1回目の1,046人であり、両年とも、2回以上の受験で合格している人数は200人未満にとどまっています。以上のデータをふまえた場合、近年の司法試験は、年齢や職種に関係なく1回目の受験で合格するケースが多いと考えられます。

法務省 令和5年司法試験法科大学院等別合格者数等 (参照 2024-07)
法務省 令和5年司法試験の採点結果 (参照2024-07)

司法試験合格後の流れ

司法試験合格後の流れ

司法試験に合格した後、裁判官などの法曹として活動するには、司法修習を済ませることが必要です。

司法修習

司法修習は、法律実務に沿った教育が行われるカリキュラムです。最高裁判所の説明によると、この修習課程では、実務の場で必要になる知識・技法の教育・指導を実施しています。具体的には経験豊富な実務法曹が指導し、司法修習性は、多様な法的事象に対処する基礎力の向上を目指します。

また、法曹は高度な倫理観や職業意識を求められるため、法曹倫理の習得が重要な修習テーマに挙げられるところも特徴的です。司法試験の合格者が司法修習を申し込む時は、通例、申込書類は合格発表から数週間のうちに提出を求められます。2022年・2023年の場合、各試験の合格発表が9月6日と11月8日にあり、申込書の提出期限は各々9月13日と11月27日となっていました。司法修習生は、司法試験の合格者から最高裁判所により選ばれる仕組みです。

また、実際の司法修習は司法研修所の導入修習から始まり、分野別実務修習・選択型実務修習・集合修習を経て、最後の司法修習生考試に進みます。そこで、司法修習生考試に合格すると司法修習の課程は終了し、合格者は判事補・検事や弁護士になる資格を与えられます。

裁判所 司法修習の概要 (参照 2024-07)
法務省 令和4年司法試験の実施日程等について (参照2024-07)
裁判所 令和4年度司法修習生採用選考申込書の記載要領 (参照2024-07)
法務省 令和5年司法試験の実施日程等について (参照2024-07)
裁判所 令和5年度司法修習生採用選考申込書の記載要領 (参照2024-07)

司法修習生考試(いわゆる二回試験)

司法修習生考試は、修習性が判事補などの資格を得るため、修習期間の最後に受ける試験です。法曹として活動するには、司法試験だけでなく司法修習生考試にも合格する必要があり、よく後者は二回試験と呼ばれています。また、この試験に通らないと資格を取得できないことから、司法修習生にとっての卒業試験とも表現されます。

裁判所の関連資料は試験の詳細に触れていませんが、資格関連のサイトによると、試験期間は5日間です。また、試験内容は、民事裁判・刑事裁判・検事・民事弁護・刑事弁護の5科目と説明されています。試験日程は1日につき1科目、解答時間は1科目あたり7時間半とのことです。トータルの試験時間は37時間30分に及び、5日間連続で行われるため、高い集中力や相当の気力・体力が必要になると見られています。

それでも、法務省・裁判所の資料によると、ほとんどの司法修習生が考試に合格しています。同資料は不合格者数を示しており、2019年度は1,473人中の11人、2020年度は1,456人中の5人、2021年度は1,328人中の6人でした。以上の結果から、司法修習生考試(二回試験)は、司法試験に比べて難易度が低いと認識されています。

法務省 司法修習生採用者数・考試(二回試験)不合格者数 (参照 2024-07)

司法試験合格後のキャリア

司法試験合格後のキャリア

司法試験の合格者は、司法修習生考試に受かり司法修習を終えると、法律関係の仕事に就くケースが一般的です。

裁判官

裁判官は、司法試験の合格者が選ぶキャリアの代表例に挙げられます。この職種は、検察官・弁護士とともに法曹三者と呼ばれています。刑事事件や民事事件の訴訟に対して判決を下す立場にあり、法律知識だけでなく良心や倫理観も求められる仕事です。軽率な判断は許されないため、社会的な責任は重くなりますが、やりがいも大きいとの声が多く聞かれます。

検察官

検察官も、司法試験に合格すると選択できる主なキャリアのひとつです。業務内容は、刑事事件における被疑者の取調べや起訴・不起訴の決定であり、社会正義の実現を目指す仕事ともいわれています。ただし、業務のなかで国家権力を行使するため、被疑者や被告人の人権・心情に配慮する姿勢は欠かせないでしょう。このような仕事の性質上、誰にでも適性があるわけではないと見られ、修習課程で素質が見出されると声がかかるとの話も聞かれます。

弁護士

弁護士は、多くの司法試験合格者が選ぶといわれる代表的なキャリアです。この職種で実際に働き始める場合、最初は弁護士事務所に就職するケースが多く見られます。また、同じ弁護士でも、専門分野は刑事事件・民事事件・少年事件・離婚関係・相続問題など多彩です。具体的な活動領域は広範囲に及ぶため、弁護士の能力は、さまざまな場面で必要になってくると期待されています。

これらのキャリアは司法試験合格後も司法修習があり大変な道筋ですが、裁判官・検察官・弁護士は、社会正義の実現に向けて力を発揮できる職種です。また、この資格に有効期限はなく生涯にわたり活かせるため、試験に挑戦する意義は大きいと考えられます

この記事を読まれている方へのオススメ

>>司法試験の合格後に法曹が受ける新人研修
>>弁護士の独立開業。立地・資金・手続きについて
>>アメリカで弁護士資格を取得するには?

denwadaikou_side1

Pocket

The following two tabs change content below.
電話代行サービス株式会社では、電話応対のアウトソーシングを検討している方向けに、電話代行やビジネスに関する情報を発信していきます。 電話代行について相談する
お問い合わせ