「傾聴」力の実践法|電話対応で活きるロジャーズの三原則
更新日:2025.03.21電話代行「傾聴」は、簡単にいえば話の内容に耳を傾ける会話の方法です。ビジネスの場では、コミュニケーションの円滑化などに役立つ手法として注目されています。このスキルを上手に用いれば、職場の電話対応にも活かせるでしょう。実践する時は、ロジャーズの三原則を心がけることが大切であるといわれています。そこで今回は、傾聴の概要やロジャーズの三原則との関係について解説し、電話応対の具体的な実例や傾聴力のトレーニング法をご紹介します。
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傾聴とは?
傾聴は、一般的な辞書の説明によると、相手の言葉に耳を傾けて丁寧に話を聞く姿勢です。ただし、専門的な定義は、少し意味合いが異なります。
言葉の定義
心理学方面において傾聴は、「相手の話に関心を示し、話の内容や相手の気持ちに共感しながら、真摯に会話を進める方法」と認識されています。もともと、傾聴は心理学の分野で登場した会話の方法であり、主にカウンセリングの場で用いられてきました。本来的には、心理カウンセリングの効果に重点が置かれており、相手への関心の強さ・話に共感する点・誠実に対話する姿勢が特徴的です。
近年は、ビジネスの場でも広く注目され始めました。人によって具体的な定義や言葉の使い方は異なりますが、基本的に相手の話を積極的な態度で聞く方法と理解されています。
傾聴の重要性
ビジネスの場において、話を傾聴する姿勢は、良好な関係性を築く方法として重要といえるでしょう。企業の仕事は、大勢の従業員により共同で進められるケースが多く見られます。従業員同士が円滑にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築できていれば、各種の業務はスムーズに進めやすくなると考えられます。
また、新しい商品・サービスを開発・販売する時は、顧客ニーズの把握も欠かせないでしょう。企業が顧客の声を熱心に聞けばお互いの距離は縮まり、本音を教えてもらいやすくなると期待できます。話を傾聴する姿勢は良好な人間関係の構築につながり、仕事の生産性向上や顧客ニーズの理解に役立つため、さまざまな企業で重視されています。
ロジャーズの三原則と傾聴の関係
ロジャーズの三原則とは、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが、会話を傾聴するうえで必要と説いた3つの要素です。その3要素は、「共感的理解」「無条件の肯定的配慮」「自己一致」を指します。
ロジャーズの三原則の解説
ロジャーズの三原則を具体的に示すと、次の通りです。
- 共感的理解(empathy、empathic understanding)
- 無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)
- 自己一致(congruence)
もともと、相手の話を傾聴する方法は、米国の心理学者カール・ロジャーズにより提唱されました。能動的に話を聞く姿勢から、英語では「Active Listening(アクティブリスニング)」と表現され、「積極的傾聴」とも呼ばれています。
傾聴の三原則は、ロジャーズ自身がカウンセリングを実施した際、効果が見られた3つの要素を指します。共感的理解は、聞き手が相手の気持ちに共感しながら話の内容を理解しようと努めることです。カウンセリングの場合、聞き手であるカウンセラーは、話し手の立場になり話を聞きます。
無条件の肯定的関心は、相手の言葉を受け入れ、肯定的な関心を抱きながら話を聞く意識です。聞き手は会話の内容を否定せず、善悪や優劣の評価を避けるため、話し手は安心して会話しやすくなります。自己一致は、聞き手が話し手だけでなく自分自身にも真摯に向き合いながら会話を進める姿勢です。会話の内容に疑問点がある時、そのまま放置せず丁寧に聞き直し、真意を確かめる誠実な態度を意味します。
このように、ロジャーズの三原則は、話し手の立場や気持ちとともに聞き手の心情も大切に考える特徴があります。
原則1:共感的理解
共感的理解(empathic understanding)は、どんな時にも話し手の立場になって会話を聞く態度です。この原則では、最初に自分は話し手と異なる人間であるとの認識が前提となります。
そのうえで聞き手は相手の立場となり、言葉の内面にある話し手の心情理解に努めます。共感の気持ちを伝える際、同意との混同には注意が必要です。一般的に同意は、自分と相手の考え方が一致していると意思表示することを指しています。
それに対し共感は、話し手の状況を自分に置き換えて相手の言葉を受け入れることを意味します。この場合、お互いの意見が同じかどうかは関係ありません。また、共感は、同情とも異なると考えられています。話し手を「かわいそう」と思うのではなく、あくまで相手の気持ちに寄り添うことが大切といわれています。
原則2:無条件の肯定的関心
無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)は、会話の内容について評価せず、常に肯定的な関心を示しながら言葉を聞く態度です。肯定的な関心を示す場合には、話し手の会話を全面的に受け入れることが大切になります。相手は、会話中に自分の考えや価値観を肯定してもらえれば安心感が生まれ話しやすくなると考えられるためです。
この態度は、話し手自身がありのままの自分を受け入れることにもつながるといわれています。職場の悩み相談やカウンセリングでは、相手が自己肯定するなかで成長するケースも見られます。いずれにしても、否定的な言動は不要です。お互いの意見が一致しなくても、話し手の発言について間違っていると考えられる点を批判する必要はありません。
原則3:自己一致
自己一致(congruence)は、聞き手が話し手の意図と自分自身の理解を一致させ、言葉の奥にある真意を把握する態度です。この原則を実践するうえでは、会話の内容を正しく理解することが求められます。話し手の言葉を正確に聞くことで、何が真意か把握できると考えられています。
会話中、疑問や不明点を聞き流すのは誤解を招く原因です。そのまま会話を続けると、聞き手の理解は話し手の意図と食い違うリスクが高くなります。相手が何を伝えたいか分からない時は誠意ある態度で質問し、話し手の考えと聞き手の理解を一致させることが大切です。言葉の意図を正しく理解できれば、真意の把握につながります。
三原則が傾聴にどのように影響するのか
ロジャーズの三原則は、傾聴の効果を高めるのに役立つとされる会話時の心がまえや姿勢です。傾聴は、簡単に表現すると「相手の話を熱心に聞く方法」といえます。ただし、この場合、聞き手が共感の意識や肯定的な関心を抱いているとは限りません。積極的に話を聞いても、すぐに否定すれば会話はスムーズに進まなくなるでしょう。
一方、相手の話を肯定的に受け入れて共感する姿勢を示すと、コミュニケーションを円滑化するのに効果的です。同時に自分の疑問点を残さなければ、話の内容を正しく理解することも可能になると見込まれます。ロジャーズの三原則をふまえて適切に傾聴した場合、相手への理解は深まり、ビジネスの場などで良好な人間関係を築きやすくなると考えられます。
傾聴レベルをチェックするには
ロジャーズの三原則にしたがい会話を聞いた際、どれくらい傾聴できたかチェックする方法は、「内的傾聴」「集中的傾聴」「全方位傾聴」の3つのステップです。
ステップ1:内的傾聴
内的傾聴は、会話を進めるなかで話し手の言葉に耳を傾けながら意識は自分に向いている状態を指します。ロジャーズの三原則において、傾聴する時には話し手の立場になることが不可欠です。聞き手は、自分の考え方に関係なく相手の意見や価値観を受け入れる共感の態度が求められます。
内的傾聴の場合、意識が聞き手自身に向いているため、話し手の気持ちに寄り添いながら共感しているとはいえません。この聞き方では、相手の立場から心情を理解するのは難しくなると考えられています。また、聞き手は自分の考えにもとづき聞き返す傾向があり、相手は話しにくくなるとも指摘されています。これらの問題を避けるうえで、聞き手は自分でなく話し手に意識を向ける姿勢が大切です。
ステップ2:集中的傾聴
集中的傾聴は、聞き手の意識が話し手の言葉へと十分に向けられている状態を指します。この聞き方の場合、内的傾聴に比べると、相手の立場になって気持ちに寄り添うことは難しくありません。話し手の意見や価値観はスムーズに受け入れられ、共感しやすくなると期待できます。
聞き手自身に意識が向いていなければ、自分の価値観で話し手を批判するリスクは減ると考えられます。話し手が安心できると、それだけ真意を話しやすくなるでしょう。さらに話の内容を理解するだけでなく、言葉によらないコミュニケーションスキルも活用すると、相手に安心感を与えるのに効果的です。そのため集中的傾聴では、相づちや間の取り方も知っておくと役立ちます。
ステップ3:全方位傾聴
全方位傾聴は、話し手に意識が向けられているとともに、周りの雰囲気も的確に把握できている状態です。周りの雰囲気を理解できる状態は、話し手がどんな環境に置かれているかまで意識が及んでいることを意味します。会話中、相手の立場になるだけでなく、広い視野から客観的に会話を傾聴しているといえます。
集中的傾聴は、聞き手の意識の焦点が話し手の言葉に当てられている状態です。それに対し全方位傾聴の場合、聞き手の視野は広がり意識の焦点は話し手の周囲にも当てられます。いずれのステップも傾聴するうえでは重要であり、それぞれ状況に合わせ使い分ける姿勢が欠かせません。
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傾聴力を高めるトレーニング法
傾聴力のスキルを高めるには、パラフレージングやバックトラッキングといった方法が有効です。
パラフレージング
パラフレージングは、話の内容を適度なタイミングでまとめる会話の進め方です。相手が一通り話したところで、「つまり、~ということですね」といい換えれば、きちんと話を理解していることが伝わりやすくなります。この技術を高める場合、いろいろな表現を別の言葉に変換する練習が役立つといわれています。
バックトラッキング
バックトラッキングは、相手の言葉を繰り返しながら話を続ける方法です。話し手が「毎日、仕事が忙しい」と訴えてきた時、「そうですか、仕事が忙しいのですね」と続ければ、相手に共感する姿勢を示せます。このトレーニングでは、事実関係や感情表現を的確に区別し、適切に繰り返すことが大切になります。加えて、「ええ」「なるほど」など相槌の言葉も上手く使えるようになれば、傾聴力は高まるでしょう。
なお、電話代行サービス(株)では、常日頃からオペレーターの「傾聴力」向上に努めています。独自のDS/QCプログラムで「技術」「心がまえ」「知識」を維持・向上させ、均一化された高品質なオペレーションを目指しています。自社の電話応対で悩みや不安を抱えている方は、ぜひ弊社の電話代行サービスをご活用ください。
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電話対応に応用する時の心がまえ
職場での電話対応でも会話を傾聴する必要があります。ロジャーズの三原則をふまえた心がまえが大切です。
共感的理解の応用
電話対応で共感的理解を応用する際は、お客様の立場になる姿勢が求められます。お客様の立場で話を聞く場合、基本的に必要となる心がまえは、話し手の言葉を聞き入れることです。相手の話に意識を集中し、何を伝えたいか心情理解に努めます。
自分と考え方や価値観が一致しなくても、すべての言葉を受け止めることで同情や同意ではなく共感する意志を示します。共感の意志を表示するのに有効とされる言葉は、「なるほど」などの相づち表現です。また、話し手の置かれた環境を理解するうえでは、会話に集中するだけでは十分とはいえないでしょう。さらに、相手を取り巻く状況にも意識を向ける全方位傾聴が必要になると考えられます。
無条件の肯定的関心の応用
無条件の肯定的関心を電話対応に応用する場合、とくに大切といわれる心がまえは、お客様を批判しないことです。お客様は、いろいろな用件で電話をかけてきます。いつでも詳しい知識があるとは限らず、お問い合わせの内容によっては相手が勘違いしている可能性もあります。
人それぞれ考え方や価値観は異なり、必ずしも一律ではありません。クレーム電話では、明らかにお客様側に非があり理不尽な見返りを求めていると判断できるケースが少なからず見られます。いずれの場合も、お客様を批判あるいは否定する応対は禁物です。肯定的関心を抱き、相手が話しやすい雰囲気づくりに努めます。
自己一致の応用
電話対応における自己一致の応用では、お客様が何を伝えたいか、的確な理解を心がけることが重要です。お客様のなかには、会話が苦手な方も見られます。自分の気持ちを、適切に表現できるとは限りません。ただ、不明点を残したまま会話を進めると誤解を招きます。
電話応対の具体的な実例
ロジャーズの三原則に沿った傾聴は、仕事関係の電話応対を円滑に進める方法としても有効です。以下では、いくつかの実用例を具体的にご紹介します。
クレーム対応での応用
通話内容を傾聴する方法は、クレーム対応で以下のように応用できます。
共感的理解
例文:「ご不便をおかけし、大変に申し訳ありません。お辛いことと思いますので、お客様の意向をふまえ、解決策をご提案させていただきます。」
無条件の肯定的関心
例文:「説明書の通りに操作しても、商品が動かないのですね。それでしたら、お客様の操作方法に大きな問題はなかったと思われます。」
自己一致
例文:「念のため商品の状態を把握したいので、これから何点か確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
商品クレームを受けた際は、お客様を批判せず、まず丁寧に苦情を聞くことが大切です。また、お客様の辛い気持ちに理解を示したうえで現状確認を進めれば、トラブルの肥大化は避けられると考えられます。
商品やサービスの問い合わせ対応での応用
商品・サービスの問い合わせがあった時は、次のように傾聴する方法があります。
共感的理解
例文:「新しいサービスの仕組みについて、ご不明点があるとのことですね。少し複雑ですので、分かりにくい部分があるかと思います。」
無条件の肯定的関心
例文:「お問い合わせくださり、誠にありがとうございます。商品関係の質問は、どのような内容でも詳しくお答えいたします。」
自己一致
例文:「専門的な内容ですので、正確な情報をお伝えするために少々お時間を頂戴してもよろしいでしょうか。」
お客様は、企業や店舗に問い合わせの電話をかける時、迷惑に思われないか不安に感じている場合があります。それでも、上記のように応対すれば、些細なことや難解な内容について質問しやすくなると考えられます。
感謝の気持ちを伝える対応
電話応対で感謝の気持ちを伝えるなら、以下のように対応するとよいでしょう。
共感的理解
例文:「お客様が不満に感じるのは、当然と思われます。適切にご指摘いただけて、大変に嬉しく思います。」
無条件の肯定的関心
例文:「お客様の声は、いずれもサービス改善の参考になります。貴重なご意見をありがとうございます。」
自己一致
例文:「これからも、お客様のお役に立ちたいと思いますので、貴重なご意見は今後のサービス向上に活かしてまいります。」
通常お客様は、見返りを求めてクレームや問い合わせの電話を入れているわけではありません。とはいえ、こちらが感謝の気持ちを伝えれば、お互いの距離は近づくと期待できます。ロジャーズの三原則による傾聴は、迅速なクレーム処理や的確な情報提供につながるため、電話応対における重要性は高いと考えられます。
疑問は聞き流さず、その場での確認が不可欠です。言葉の意図が分かれば、真意の把握につながります。電話対応でもロジャーズの三原則を上手に応用し、お客様の理解に役立てましょう。
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