【2024年版】職場が最低賃金より低い場合の対処法

更新日:2024.10.07ビジネス豆知識

【2024年版】職場が最低賃金より低い場合の対処法

最低賃金は、法的に定められた最低限度の賃金額です。労働者は、一部の例外を除いて、最低賃金以上の給与を受け取る資格があります。ただし、人によっては、月々の給与が最低賃金より低く悩んでいるケースもあるかもしれません。そんな時は、自分が勤務する地域の最低賃金額を確認すれば、対処しやすくなるでしょう。そこで今回は、最低賃金の概要や全国一覧をご紹介し、適用対象・対象外や違反時の罰則・対処法などを解説いたします

最低賃金とは?確認する方法

最低賃金とは?確認する方法

最低賃金は、法的規定にもとづき、企業・事業主から労働者への支払いが求められる給与の最低額です。

最低賃金を定める目的

法的に最低賃金を定める目的は、労働者を安い賃金での不当労働から守り、生活の安定や労働力の向上を実現することです。労働者が人間らしい生活を送るためには、一定レベル以上の収入を得る必要があります。また、収入面の不安がなくなり日々の暮らしが安定すれば、労働意欲も高まると期待できます。

このような見解から、国内では1959年に最低賃金法が制定され、標準的な生活を送るうえで必要な賃金額が定められるようになりました。その後、具体的な金額は、物価や経済状況の動きに合わせ毎年のように見直されています。現在も本来の目的のもと、経済実態をふまえた最低賃金の引上げにより、安定的な生活環境の実現が目指されています。

厚生労働省 最低賃金制度の変遷 (参照 2024-08)

最低賃金を確認する方法

全国各地の最低賃金は、厚生労働省が示す地域別最低賃金・特定最低賃金の全国一覧で確認することが可能です。現在の最低賃金は、最低賃金法にもとづく最低賃金制度で規定され、地域別最低賃金と特定最低賃金の2つがあります。地域別最低賃金は都道府県単位で決められ、特定最低賃金は特定地域・分野の産業について設定されます。具体的な金額は、中央最低賃金審議会で検討された後、地方最低賃金審議委員会の審議を経て各地の労務局長が決定する仕組みです。

また、一通りの審議が終わると、最低賃金の改定結果は全国一覧で示されます。近年、地域別最低賃金・特定最低賃金の一覧は厚生労働省の公式サイトに掲載されているため、同サイトにアクセスすれば最低賃金の改定状況を確認できます。勤務先で適切な賃金が支払われているか気になる時は、最低賃金法で定められた金額を確認しておきましょう。

厚生労働省 最低賃金制度の概要 (参照 2024-08)

【2024年版】全国の最低賃金一覧

【2024年版】全国の最低賃金一覧

2024年7月現在、当年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,054円に引き上げられる見通しです。ただし、7月25日に中央最低賃金審議会が金額改定の目安を決めた段階であり、まだ2024年度の全国一覧は示されていません。

2024年度の地域別最低賃金

厚生労働省の資料によれば、2024年度の地域別最低賃金改定状況と特定最低賃金の審議・決定状況は、以下の通りです。

<地域別最低賃金改定状況>(単位:円)

※横にスクロールできます。

【北海道・東北】

北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島
1,010 953 952 973 951 955 955

【関東】

茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川
1,005 1,004 985 1,078 1,076 1,163 1,162

【北陸・甲信】

新潟 富山 石川 福井 山梨 長野
985 998 984 984 988 998

【東海】

岐阜 静岡 愛知 三重
1,001 1,034 1,077 1,023

【関西】

滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山
1,017 1,058 1,114 1,052 986 980

【中国・四国】

鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知
957 962 982 1,020 979 980 970 956 952

【九州・沖縄】

福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
992 956 953 952 954 952 953 952

なお、以上の数値は、いずれも最低賃金時間額を意味します。また、2024年10月1日から11月1日にかけて発効されます。

<令和5年度 特定最低賃金の審議・決定状況>(単位:円)
※令和6年度の特定最低賃金の審議・決定状況について、具体的な発表時期に関する情報はまだ公表されていません

【北海道・東北】

北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島
990~1,030 921~992 767~949 959~1,003 930~961 945~965 880~960

【関東】

茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川
881~1,046 874~1,061 1,006~1,017 849~1,064 848~1,096 829~871 821~894

【北陸・甲信】

新潟 富山 石川 福井 山梨 長野
932~1,005 769~995 763~(日額)6,102 830~933 971~997 850~994

【東海】

岐阜 静岡 愛知 三重
965~1,031 786~1,028 732~1,059 739~(日額)5,907

【関西】

滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山
789~1,016 822~1,028 993~1,070 797~1,075 816~(日額)6,527 869~1,050

【中国・四国】

鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知
902~906 905~1,034 933~1,050 903~1,064 948~1,064 876~1,020 849~1,041 854~1,015 793~910

【九州・沖縄】

福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
945~1,053 901~974 864~875 855~965 716~1,053 678~927 693~945 769~879

いくつか具体例を示すと、北海道の場合、処理牛乳や乳飲料の製造業:996円、鉄鋼業:1,030円、電子部品やデバイスの製造業:997円、船舶の製造・修理業など:990円です。また、奈良では、はん用機械器具や生産機械器具の製造業:905円、電子部品やデバイスの製造業:891円、自動車小売業:892円、木材や家具の製造業:時間額816円・日額6,527円となっています。特定最低賃金の数値も、基本的には時間額です。

ただし、一部の業種は、日額も含まれます。また、特定最低賃金は地域・業種により違いが見られ、地域別最低賃金と特定最低賃金のうち高いほうの金額が適用されます。なお、業種ごとに定められた特定最低賃金の詳細は、厚生労働省の資料などでご確認ください。

厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧|令和6年度地域別最低賃金改定状況 (参照 2024-10)
厚生労働省 令和5年度特定最低賃金の審議・決定状況 (参照2024-08)

2024年度における改定の目安

2024年度における地域別最低賃金の場合、引上げ額の目安は50円です。厚生労働省の発表によると、地域別最低賃金額改定の目安は、数回にわたる中央最低賃金審議会の審議を経て取りまとめられました。今後は、各地方最低賃金審議会で答申が進められ、最終的に今年度の地域別最低賃金額が決定する予定です。

また、目安の通りに各地の最低賃金が引き上げられた場合、全国加重平均は1,054円になるとの見解が示されています。この全国加重平均は、企業の賃上げ額に常用労働者の人数を反映させ、労働者1人あたりの平均値を算出した数字です。昨年度の平均上昇額は43円であり、最低賃金の改定が上記通り実施されれば、1978年度に目安制度が導入されてから最高額になるといわれています。

厚生労働省 令和6年度地域別最低賃金改定の目安について (参照 2024-08)
厚生労働省 主な用語の定義 (参照2024-08)

最低賃金の対象とならない賃金は?

最低賃金の対象とならない賃金は?

最低賃金の適用対象は、毎月にわたり労働者に支払われる賃金です。ただし、一部の賃金は対象外となります。

適用対象

法的に最低賃金の規定が適用される範囲は、すべての労働者に支払われる基本的な賃金の部分です。厚生労働省の説明によると、地域別最低賃金の規定は、全国各地の事業場で働く労働者全員に適用されます。パート・アルバイト・臨時スタッフ・嘱託職員など、雇用形態や就業方法は問われません。

また、特定最低賃金の規定は、特定地域内で特定の産業に従事する基幹的な労働者です。所定の業種について、一定水準の業務を担当している場合、適用対象と見なされます。いずれの場合も、最低賃金法で定められた金額が適用される賃金は、月々に支払われる基本給や諸手当です。

適用対象外

労働者に支払われる賃金のうち、一部は、適用対象から除外されます。実際に対象外となる賃金は、主に以下の6つです。

・結婚手当など臨時に支給される賃金
・賞与など1カ月単位でない賃金
・残業代など時間外労働に対する賃金
・休日出勤などに対する割増賃金
・深夜割増賃金など通常の給与額を超える部分
・精皆勤手当・通勤手当・家族手当

また、特定最低賃金の場合、労働者が次のようなケースに該当すると適用対象外になります。

・年齢が18歳未満か65歳以上
・雇用から一定期間未満で技能習得中
・軽易な業務に従事など

以上の賃金内容や勤務状況に該当する場合、地域別最低賃金・特定最低賃金は適用されないため、最低賃金を確認する時には注意する必要があるでしょう。

厚生労働省 最低賃金の対象となる賃金 (参照 2024-08)
厚生労働省 最低賃金の適用される労働者の範囲 (参照2024-08)

最低賃金法違反の会社はどうなる?

最低賃金法違反の会社はどうなる?

企業や事業主が最低賃金法・最低賃金制度に違反した時は、法的に定められた罰則が科される決まりです。厚労省の資料によると、月々の基本的な賃金が最低賃金に満たない場合、企業側は労働者に最低賃金額との差額を支払う必要があります。雇用主と労働者の間で支給額について合意が成立していても、最低賃金より低ければ法的に無効です。

また、月々の支給額が最低賃金未満であれば、ペナルティとして所定額の罰金が科されます。労働基準法の規定によると、地域別最低賃金に違反した時の罰金は50万円以下、特定最低賃金の罰金は30万円以下です。以上の通り、最低賃金が適用される労働者に適切な賃金が支払われないと、企業や事業主は労働基準法で定められた罰金を支払うように求められます。

厚生労働省 最最低賃金制度とは (参照 2024-08)

最低賃金より給料が低い場合の対処法

最低賃金より給料が低い場合の対処法

月々の給料が最低賃金より低い場合、最低賃金法が適用される労働者は、企業側に差額の支払いを請求することが可能です。個人的に実践できる対処法としては、自分で時間額を計算する方法があります。まず(月々の基本給+諸手当)×12カ月で基本的な賃金の年間総額が求められ、基本的な賃金の年間総額÷年間の総所定労働時間で1時間あたりの賃金が算出できます。この計算結果が最低賃金額に満たない場合、原則的に法律違反です。最低賃金法の適用対象者は、不足分の支払いを請求できます。

また、企業側から速やかに支払われない時は、地域の労働局・労働基準監督署や弁護士に相談する選択肢もあります。加えて、最低賃金が改定される前には、トラブルの予防策として全国一覧を確認しておくとよいでしょう。早めに勤務地の地域別最低賃金や特定最低賃金をチェックすれば、迅速な対処が可能になると考えられます現在、全国各地の最低賃金は10月に改定されているため、適切な賃金を受け取る対策として、改定結果は公表時に確認しておくことをおすすめします

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