分散型自律組織(DAO)の特徴やメリットは?
更新日:2022.12.07ビジネス豆知識DAOは、近年に誕生した新スタイルの組織です。経営トップやチームリーダーが存在せず、1つの組織を参加メンバー全員で対等に共有します。ただし事業運営がプログラム上で実行されるため、具体的な経営方法が分かりにくいとの声も聞かれます。今後、普及が予想されているため、今から疑問点を解消して理解を深めておきましょう。そこで今回は、DAOの概要や特徴についてご紹介します。
目次
DAOの概要
DAOは、「Decentralized Autonomous Organization」の略称です。日本では「分散型自立組織」と訳され、参加メンバーが組織を共同所有・管理する特徴があります。以下では、DAOの基本的な仕組みや成り立ちを解説します。
DAOの基本的な仕組み
DAOは、特定の人物がリーダーとして存在しないなか組織の運営が進められる仕組みです。DAOに参加する際は、あらかじめ仮想通貨の一種「トークン」を入手する必要があります。さらにガバナンストークン(DAOが発行する仮想通貨)を購入するか既存のメンバーから受け取ると、組織内で投票する権利も発生します。
ガバナンストークンを所持する参加者は、組織の運営方針に関する決定権を全員で共有するのが基本です。事業内容を変更する時また新たな議題が提案されると、メンバーによる投票が行われます。これらの仕組みからDAOは、中央集権的な管理者がいない民主的な組織運営の方法ともいわれています。
DAOの成り立ち
現在の数あるDAOは、最初のDAOとして知られる「The DAO」から始まった新スタイルの組織形態です。もともと「The DAO」は、2016年に構築されました。当初はVCファンド的な役割が期待され、実際に約1億5,000万ドルの資金調達を成し遂げています。この点から、設立当時の目的は達成したといえます。
ただ土台となるプログラム「スマートコントラクト」の脆弱性により、多額の資金が外部流出しました。同時に、「資金提供の見返りとして得られるトークンは証券に該当する」との指摘も受けています。これらの失敗でセキュリティ対策や法律面の整備が進み、やがて新たなDAOが次々に誕生しました。
DAOの種類
現在までに見られるDAOの種類は、大きく分けると「Autonomous DAO」「Bureaucratic DAO」「CEO DAO」の3タイプです。「Autonomous DAO(自律的DAO)」は、組織がスマートコントラクト上で自走する自律性の高いDAOです。投票権は組織内で適切に分散され、各メンバーが意思決定する権限は守られているといわれます。
それに対し「Bureaucratic DAO(官僚主義的DAO)」は、特定グループのみが意思決定しているDAOです。また「CEO DAO」は最高責任者が存在するDAOを意味し、意思決定は1人のメンバーに限られます。以上3つを比べた場合、最初のAutonomous DAO(自律的DAO)が本来のDAO定義に最も近いと考えられています。
DAOの特徴や従来型との違い
DAOの特徴は情報の改ざんが難しく、透明性が高いことです。また意思決定の方法に、従来の組織との大きな違いが見られます。以下では、情報の改ざんが難しい理由や従来型との違いを解説します。
情報の改ざんが困難
DAOが正しく機能している場合、一通りの組織運営はスマートコントラクトにより自動的に進められます。このシステムのもとでは、情報の改ざんが困難です。通常、DAOのプログラムにはブロックチェーン技術が使われています。この技術は、あらゆる入力情報がチェーンのように連結される仕組みを指します。1つの情報を変更するには、全情報の書き換えが必要です。
さらに保存データは、すべて定期的に更新されます。そのため個々の情報を改変する時は、該当箇所だけにとどまらず更新前後の関連データまで手を加えることが不可欠です。そのため情報の改ざんは非常に面倒であり、現実的に不正行為は実行不可能と見られています。
透明性が高い
DAOは、情報改ざんの難しさとともに透明性の高さも広く知られる特徴の1つです。DAOのプログラムを動かすコードは、一般に公開されています。参加メンバーでなくても、必要なコードを取得すれば組織の経営スタイルや運営状況について外部から確認可能です。
またコミュニティメンバー間の交流も、すべての会話がロックされず誰でも閲覧できるケースが珍しくありません。必要があれば、過去の会話内容にもアクセス可能です。あらゆる活動履歴は一般公開が基本であり、第三者も組織の動きをチェックしやすい特徴があります。
従来型の組織との違い
本来のDAOは、いつでも参加メンバーの投票により意思決定するところが従来型の組織との大きな違いです。一般的に従来型の組織は、社長や経営陣が会社の運営方針や将来的なビジョンを決めます。従業員に意見を求めるとしても、最終的にはトップダウン形式で判断が下されます。
それに対しDAOは、お互い対等な立場にあるメンバーが投票を通じて組織の方向性などを決めていくスタイルです。投票結果はスマートコントラクトがプログラム上で集計し、自動的に実行へ移します。そのため個人や一部のグループがコントロールしにくい点も、従来型と異なるDAOならではの特徴に挙げられます。
DAOのメリットや問題点
DAOがもたらす主なメリットは、誰でも組織に参加できるところです。また資金調達を効率的に進められる利点もありますが、法律面には注意する必要があると指摘されています。以下では、DAOに伴う各種のメリットや問題点をご紹介します。
メリット1:誰でも参加可能
誰でも組織のメンバーとして参加できる点は、DAOの代表的なメリットです。国籍や年齢・性別は、とくに問われません。DAO関連のトークンを保有している人は、誰でも参加可能です。必要なトークンの購入は簡単であり、さらに自分が参加したい組織のガバナンストークンを手に入れれば意思決定の投票権も獲得できます。
DAOが適切に運営されている限り、すべての参加者の立場は国籍・年齢・性別などに関係なく対等です。誰でも自由に意見を出せるうえ、その可否はメンバー間の投票で決まります。参加時のハードルが低いとともに自由度は高く、ブロックチェーン技術のため人為的に情報操作しにくい仕組みは大きな長所といわれています。
メリット2:資金調達が効率的
様々な組織運営のスタイルと比べた際、資金調達の効率のよさもDAOを特徴づけるメリットの1つです。これまでDAOは、フリーランスや慈善団体が活動資金や寄付金を集める時などに設立されてきました。それらの多くは、投票権が付与されるガバナンストークンを発行することで資金調達の促進につなげています。
人気があるDAOの場合、ガバナンストークンの所持者が報酬の分配率を決める投票に参加した事例もあります。参加メンバーにとって金銭面の利益を得られる点が魅力になり、資金調達がスムーズに進められた好例です。以上のケースを含め、DAOの多くはガバナンストークンの発行により資金調達しています。従来型の組織より手続きは簡単であり、速やかに目標額を集められる傾向があります。
注意したい問題点
現在のDAOは、とりわけ法律面に対する注意が欠かせません。まだ数年前に登場したばかりの組織形態であり、現状に目を向けると法整備が進んでいないためです。ブロックチェーンを含めた基本的なシステムは、いまのところ現行法の管轄外で運営されています。世界各地の国や地域を見ても、DAO関係の法整備は追いついていない状況です。
このまま法改正が実施されない場合、今後の組織設立や事業展開に差し支える恐れがあります。多くの関係者は、各種のトラブルが発生した時に法的な解決が難しくなると懸念しています。そんな状況のなか2021年4月には、米国ワイオミング州でDAOを有限株式会社の正式な法人格と認める法案が成立しました。マーシャル諸島でも同様の法案が可決し、徐々に法律面が抱える問題は改善され始めています。
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