建築士のキャリア|試験概要や資格取得後の流れ

更新日:2024.11.22スタッフブログ

建築士のキャリア|試験概要や資格取得後の流れ

建築士は、建築関係で多彩なキャリアを積むのに活かせる資格です。ただし、この資格を取得するには、難度の高い試験に合格する必要があります。また、実際に業務を手がけるうえでは、合格後の登録手続きなどが欠かせません。一級建築士・二級建築士・木造建築士として活躍したいと考えている場合、試験の概要・各資格の違いや資格取得後の流れを理解しておくと役立つでしょう。そこで今回は、建築士の試験概要を解説し、一級・二級・木造建築士の違い・試験合格後の流れや資格取得者の主なキャリアをご紹介します

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建築士の試験概要

建築士の試験概要

建築士の資格試験は、一級建築士試験二級建築士試験木造建築士試験の3つです。現在、一級建築士試験は国土交通大臣指定のもと、他2つは都道府県知事の指定により、いずれも「公益財団法人建築技術教育普及センター」が実施しています。

試験日

建築技術教育普及センターの資料によると、2024年における建築士試験の試験日は、それぞれ次の通りです。

学科の試験 設計製図の試験
一級建築士試験 2024年7月28日(日) 2024年10月13日(日)
二級建築士試験 2024年7月7日(日) 2024年9月15日(日)
木造建築士試験 2024年7月28日(日) 2024年10月13日(日)

いずれも「学科の試験」と「設計製図の試験」があり、前者に合格すると後者に進めます。学科試験の合格発表は、一級が2024年9月4日(水)、二級・木造建築士が同年8月26日(月)に予定されています。また、設計製図の試験は、一級と二級・木造建築士が各々12月25日(水)と同月5日(木)に合格発表となる予定です。なお、2024年の受験申込受付は、4月中に終了しています。

建築技術教育普及センター 建築士(制度全般) (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター 令和6年一級建築士試験日程等 (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター 令和6年二級建築士試験・木造建築士試験日程 (参照 2024-05)

合格率

建築士試験の合格率

建築士試験の合格率は、一級が10%前後二級が20%強木造建築士が約30~40%です。2023年の結果を示すと、一級は9.9%(受験者28,118人・合格者3,401人)でした。また、2級は22.3%(受験者22,328人・合格者4,985人)、木造建築士は44.5%(受験者758人・合格者337人)と発表されています。

過去5年の合格率を見ると、一級の場合、2019年~2023年にかけて12.0%・10.6%・9.9%・9.9%・9.9%と推移しています。2019・2020年は1割を超えましたが、2021年からの3年間は1割弱が続いている状況です。一方、ここ5年の二級の合格率は22.2%・26.4%・23.6%・25.0%・22.3%、木造建築士は33.3%・37.8%・33.0%・35.5%・44.5%でした。2019年以降、二級は2割以上を維持し、木造建築士は3~4割に達しています。以上の合格率から、一級の試験は難度が高めであり、二級と木造建築士は比較的低いと考えられます。

建築技術教育普及センター 試験結果|直近5年間の試験結果 (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター 試験結果|過去5年間の二級建築士試験結果データ (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター 試験結果|過去5年間の木造建築士試験結果データ (参照 2024-05)

必要勉強時間

建築士試験の合格に必要とされる勉強時間は、一級が700~1,500時間二級は500~1,000時間木造建築士は300~400時間が目安です。一級は、初学者の場合、1,000~1,500時間は受験勉強する必要があるといわれています。1年で合格するなら、1日3~5時間ほど勉強に取り組むペースです。一方、予備知識や実務経験がある場合、700時間以上で合格する可能性があると見られています。

二級については、初学者であれば700~1,000時間、実務経験者なら500時間ほど必要になるとの見方が一般的です。また、土木建築士試験で合格するのに必要な勉強時間は、300~400時間が目安とされています。なお、試験は学科試験と製図試験があるため、それぞれに対して受験勉強を進めることが望まれます。

受験資格

建築士の試験を受けるには、建築関係の実務経験を積んでいることが必要です。具体的に求められる実務経験の年数は、学歴や取得済みの資格によって異なります。一級試験で必要な実務経験は、大卒が2~4年以上、3年制短大卒の場合に3~4年以上です。また、2年制短大卒・高等専門学校卒と二級建築士は、4年以上の経験を求められます。

二級試験・木造建築士試験の場合、大卒・短大卒・高等専門学校卒は、0~2年以上の実務経験が受験資格となります。実務経験について、建築課程卒業の場合は0年、土木課程卒業の場合は1年で問題ありません。また、高卒は3~4年以上、建築に関する学歴がない場合は7年以上の実務経験が必要です。

他に、建築設備士は「国土交通大臣が特に認めるもの」として、4年以上の実務経験があれば一級試験、実務経験0年で二級試験・木造建築士試験を受験できます。なお、学歴要件や実務経験要件については一部変更されているため、詳細は、国土交通省や建築技術教育普及センターの情報をご確認ください。

建築技術教育普及センター 建築士(制度全般) (参照 2024-05)

建築士の種類と違い

建築士の種類と違い

一級建築士・二級建築士・木造建築士の違いは、免許の受け方や実際の業務で手がけられる建築規模の差です。まず、一級建築士は国土交通大臣から免許を受けるのに対し、二級建築士と木造建築士は都道府県知事から受けます。いずれも、免許を受けると、それぞれの名称を用いて業務を行えます。

次に、一級建築士が着手できる業務は、すべての構造・規模・用途の建築物に関する設計・工事監理です。それに対し、二級建築士の業務範囲は比較的に小規模な建築物の設計・工事監理、木造建築士の場合は小規模な木造建築物にとどまります。具体例を示すと、延べ面積100㎡超~300㎡以下の木造建物は、高さ13m以下・軒高9mの2階建てまでなら木造建築士が扱える範囲です。一方、木造以外は基本的に一級か二級の業務対象となり、高さ13m(軒高9m)超はすべて一級に限られます。

このように、一級建築士は幅広い建築物の設計・工事管理が可能であり、二級建築士と木造建築は業務で扱える建築物の規模や構造を制限されるところが特徴的です。

建築技術教育普及センター 建築士(制度全般) (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター 建築士の種類と業務範囲 (参照 2024-05)

建築士に合格した後の流れ

建築士に合格した後の流れ

建築士の試験に合格した後、実際に建築士として活動するには、登録手続きを済ませる必要があります。

登録手続き

建築士試験の合格者は、所定の登録手続きを行うと免許証が交付され、建築士としての活動が可能になります。登録手続きの受付窓口は、一級・二級・木造建築士のいずれも、各都道府県の建築士会です。もともと、一級建築士の登録事務は国の管轄でしたが、新しい建築士制度のもと公益社団法人日本建築士会連合会の業務になりました。

登録作業の大まかな手順は、申請書類を用意して受付窓口に提出すると免許証明書が発行される流れです。一級と二級・木造建築士ともに、申請手続きの基本的な流れは大きく変わりません。なお、登録申請後は実務経験などの審査が行われるため、免許証明書が交付されるまでには一定の時間がかかります。

建築技術教育普及センター 登録手続きについて(一級建築士) (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター  登録手続きについて(二級・木造建築士) (参照 2024-05)
日本建築士会連合会 一級建築士登録申請のご案内 (参照 2024-05)
東京建築士会 二級・木造建築士新規登録申請ご案内 (参照 2024-05)

必要な書類

日本建築士会連合会の資料によると、一級建築士の免許申請(新規登録)で必要な書類は、以下の14点です。

1.一級建築士免許申請書(※二級・木造建築士は各々の免許申請書)
2.一級建築士住所等の届出書(※二級・木造建築士は各々の住所等届出書)
3.住民票の写し(本籍記載あり)
4.証明写真(2枚)
5.登録免許税納付書の領収証書
6.申請手数料の払込受付証明書
7.合格通知書(コピー)
8.学歴・資格関係の書類
9.実務経歴書
10.実務経歴証明書
11.チェックシート
12.身分証明書(コピー)
13.旧姓併記の確認書類(希望者のみ)
14.管理建築士講習修了証(コピー・希望者のみ)

以上は2020年以降の合格者に該当し、8~11は2019年以前合格者の必要書類に含まれていません。また、13と14は、希望者以外の提出は不要です。なお、二級・木造建築士も基本的に同様ですが、建築士会によっては合格通知書や身分証明書の原本を用意する必要があります。そのため、必要書類の詳細は、居住地の管轄窓口に問い合わせることをおすすめします。

日本建築士会連合会 免許申請(新規登録)令和2年以降合格者(一級建築士) (参照 2024-05)
日本建築士会連合会 免許申請(新規登録)令和元年以前合格者(一級建築士) (参照 2024-05)
神奈川県建築士会 建築士試験合格者の皆様へ (参照 2024-11)

登録にかかる費用

建築士の免許登録を新規に申請する時は、所定の手数料や登録免許税の納付が必要です。具体的な金額は、以下の通りに定められています。

申請手数料(非課税) 免許登録税(非課税)
一級建築士 (2019年以前合格者)19,200円
(2020年以降合格者)28,400円
60,000円
二級・木造建築士 (2019年以前合格者)19,300円
(2020年以降合格者)24,400円

上記のように、それぞれの申請手数料は、2019年以前合格者と2020年以降合格者で変更されています。また、いくつかの関連資料を見る限り、二級・木造建築士の新規登録で免許登録税は求められていません。なお、二級・木造建築士の申請手数料は、受付窓口での現金払いか郵便振込との記載も見られます。各費用の支払い方は地域により異なる可能性があるため、支払い方法の詳細については、事前に確認しておくとよいでしょう。

日本建築士会連合会 一級建築士登録申請のご案内 (参照 2024-05)
東京建築士会 二級・木造建築士新規登録申請ご案内 (参照 2024-05)
神奈川県建築士会 二級・木造建築士の諸手続 (参照 2024-11)

更新は必要?

一級・二級・木造建築士は、規定事項に該当する場合、登録免許の定期的な更新が不可欠です。具体的には、建築士が建築事務所に属する時、建築士法で3年以内ごとの建築士定期講習が義務づけられています。所定の期間内に受講しないと、同法により戒告や2カ月にわたる業務停止の処分対象になると規定されています。これまで受講経験がない場合、受講期限は、試験に合格した年度の翌年度4月1日から起算して3年後の3月31日までです。

また、受講経験者は、前回の受講年度の翌年度から3年後の3月末日が期限となっています。建築事務所の所属建築士以外は、基本的に対象外です。ただし、別業務に従事していても所属建築士として登録している場合、受講義務が生じるため注意が必要です。

建築技術教育普及センター 一級・二級・木造建築士の定期講習 (参照 2024-05)
国土交通省 定期講習の受講のお願い (参照 2024-05)
建築技術教育普及センター 建築士定期講習よくある質問 (参照 2024-05)

建築士の主なキャリア

建築士の主なキャリア

建築士のキャリアは、建築関係への就職から独立するケースまで多彩です。一級・二級・木造建築士のいずれも、さまざまな職場で活躍しています。一級建築士は幅広い建築物を扱えるため、建築設計事務所をはじめ多くの職場で重宝される傾向があります。大手建設会社の就職に有利といわれ、地方自治体で必要とされる事例も少なくない状況です。二級建築士が扱える建築物は一級より限られるものの、建築設計事務所・建設会社やハウスメーカーで活躍するケースは多く見られます。

また、確かな知識や実務経験があれば、不動産会社や住宅関連設備メーカーでも重宝されるといわれています。木造建築士は、木造建物の設計・工事管理がメイン業務です。木造建築の専門知識を豊富に身につけているため、木造の歴史的建造物に関われる機会は多いといわれています。また、小規模な工務店では、幅広い業務を任される傾向があります。

このように、一級・二級・木造建築士のいずれも、それぞれの強みや知識・専門性を活かしてキャリアを積めるところが特徴的ですそのため、どの資格を取るか迷った時は、自分が手がけたい業務内容をふまえて決めるのがよいと考えられます

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