東京オリンピックを控える2020年問題への備え

更新日:2023.08.09ビジネス豆知識

2020年東京オリンピック

東京オリンピックを控える2020年が、ついに幕を開けました。2020年と聞いて、以前より囁かれる「2020年問題」をイメージする方も多いのではないでしょうか?団塊バブル世代の高齢化にともなう雇用問題、地方を中心とする“空き家問題”などが浮かぶ2020年問題ですが、ビジネスシーンにはどういった影響を及ぼすのでしょうか。本記事では、IT関連を中心に、ビジネスシーンにおける2020年問題を掘り下げていきます

問題1.Windowsがサポート終了

2020年1月14日、「Microsoft」社が提供するオペレーティングシステム(以下、OS)Windows7の延長サポートが終了しました。これによってWindows7へのセキュリティ更新プログラムの提供が終了し、同OSを取り巻く関連企業の対応も変化します。

□Microsoft社:今後セキュリティ更新プログラムを提供せず、OSに脆弱性が見つかっても公表しない
□周辺機器メーカー:Windows7向けドライバーの開発を終了。各種製品において同OSの動作保証を行わない
□アプリ開発者/メーカー:Windows7向けアプリの開発を終了。既存アプリにおいてもWindows7はサポートしない
□サポート窓口:Windows7搭載パソコンの場合、問い合わせ対象外となる可能性あり

「Microsoft」社は以前、2020年1月14日段階で法人市場には、約760万台のWindows7搭載パソコンが稼働すると予測していました。すでにサポート終了日を迎えていますが、それでもなおWindows7搭載パソコンを使い続けるのは、リスクしかありません。上述した関連企業の対応の変化により、業務継続が困難になる場合もあります。

一方で、「まだ動くから大丈夫」と楽観的に考える経営者は、一定数存在します。セキュリティ更新プログラムの提供を終えたOSは、システムの欠陥、あるいは問題点となる“脆弱性リスク”が高まります。これにより、未知のウイルスによる被害、マルウェアによる個人情報漏えいなど、致命的な損害を受ける可能性は否定できません。

Windows7ばかりに目が行きがちですが、Windows Server2008および2008 R2の延長サポートも終了します。社内サーバーを同 OSで運用している場合、こちらも最新システムへの移行が必要となります。
Windows7およびWindows Server2008(R2)のサポート終了は、「Microsoft」社が数年かけて周知、移行支援を行ってきました。それでも導入コストなどを理由に、最新OS・システムへの移行に躊躇する企業は少なくありませんでした。結果、現在もWindows7搭載パソコンを使い続ける企業が、一定数存在すると予測されます。

いずれにしても、すでに移行を済ませた企業は問題ありません。未だWindows7搭載パソコンを使っているならば、早い段階で移行計画を検討・推進し、あらゆるリスクを未然に防ぎましょう。

参考:サポート終了まで半年。Windows 7の稼働状況と、最新環境への移行支援施策のご紹介
https://blogs.windows.com/japan/2019/07/16/windows7_end_of_support/

問題2.サイバー攻撃の増加が懸念される

2020年開催の東京オリンピックに乗じ、世界各国からのサイバー攻撃の増加が懸念されています。代表的なのが不正アクセスです。自社の情報システムに不正アクセスし、個人情報を盗んだり、自社サイトを改ざんされたりする恐れがあります。
不正アクセスのターゲットになるのは、政府機関や大企業だけではありません。中小企業においても、自社のパソコン・システムを“踏み台”にされる可能性があります。不正アクセスは、身元特定を防ぐため複数のパソコンを経由し、目的の端末に進入します。その際の中継地点となるのが“踏み台”です。

自社のパソコンを“踏み台”にされると、結果としてサイバー攻撃に加担してしまいます。サイバー攻撃の増加が懸念される以上、社内パソコン・システムのセキュリティ対策を徹底するほかありません。

問題3.政府が掲げるBCP策定率50%以上

昨今、日本政府は企業防災の推進に力を入れてきました。企業防災を構成する要素に、事業継続計画(以下、BCP)があります。日本政府は、2020年までに大手企業のBCP策定率を100%、中小企業は50%にすると発表しました。
そもそもBCPとは、大地震や洪水などの自然災害、感染症の蔓延といったパンデミック発生時に「企業が重要な事業を中断させない」ための方針・体制・手順をまとめた計画のことです。これが問題になる理由として、BPC策定に必要なコストが大きく、未策定の国内企業も多いことが挙げられます。

「帝国データバンク」の調査によると、2019年5月時点の国内企業のBCP策定状況は、15.0%に留まりました。策定しない理由でもっとも多かったのは、「策定に必要なスキル・ノウハウがない(43.9%)」です。「重要性は理解しているが、それを為す術がない」というのが経営者の本音かもしれません。
また、BCP策定には担当者の人件費、アウトソーシングする場合はコンサルティング費用が発生します。既存社員を教育する場合も、相応の時間的コストがかかるでしょう。これらは、直接的な利益を生む業務ではありません。とりわけ中小企業においては、体力的な意味でBCP策定に乗り出す余裕がないのかもしれません。

一方で、BCPは将来的な企業価値を左右するといわれます。“災害大国”と呼ばれる日本において、災害に強いビジネス環境の構築が急務となっているためです。それは2011年3月に発生した東日本大震災の例を見れば分かります。当時、甚大な被害を受けた企業は事業中断をやむを得ず、倒産することもありました。
BCP策定を先送りにすると、CSR(企業の社会的責任)を果たさないと見なされ、企業価値が低下する恐れがあります。さらに法人取引にも影響し、今後は「BCPを策定しない法人とは取引しない」という企業が出てくると予想されます。

参考:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2019年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p190604.html

>>BCPについて詳しく知りたい方はこちら

問題4.働き方改革にともなう時間外労働の上限規制

働き方改革関連法に基づき、時間外労働の上限規制が強化されます。具体的な施行内容は、以下の通りです。

□月45時間、年360時間を超えてはならない
□時間外労働は年720時間まで
□月45時間の時間外労働は年6ヶ月まで
□2ヶ月~6ヶ月間までの平均時間外労働は月80時間まで

大手企業は2019年4月より、中小企業は2020年4月から施行されます。これらに違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
それでも違反を続けた場合、厚生労働省のサイトに社名が公表されます。取引全般や採用活動において、悪影響を及ぼす可能性があります。
上限規制の強化にともない、企業経営者が取り組むべきことは3つ。勤怠管理の適正化と業務効率化、テレワークといった新しい働き方の導入です。これは企業経営者を対象とする上限規制ですが、覚えておいて損はありません。

問題5.蛍光灯や水銀ランプが生産終了

2020年は、オフィス照明のLED化が加速する年になりそうです。内閣府は2010年に発表した新成長戦略の一環として、次世代照明への移行を推進しています。2020年までに出荷単で100%、2030年までに設置単位で100%を目指しているためです。
それにともない、国内電機メーカーは蛍光灯器具および蛍光ランプの生産をすでに終えています。また国際的な水銀規制である「水銀に関する水俣条約」を受け、水銀ランプの国内生産が2020年6月に終了します。蛍光灯同様、在庫がなくなった後は交換用ランプが手に入りません。

昨今、良好なオフィス環境の構築に力を入れる企業が増えています。オフィス照明も例に漏れず、早い段階でLED工事を済ませる必要があるでしょう。交換用の蛍光灯や水銀ランプが手に入ることは、この先ありません。遅かれ早かれ、オフィス照明のLEDを進めたいところです。

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