託児所付き企業が増加?メリットとデメリット
更新日:2023.03.31スタッフブログ労働者不足が深刻化している現在、国や企業から女性の労働力に大きな期待が集まっています。しかし、子育て中の方やこれから結婚や出産を考えている働く女性にとっては、子どもを預ける保育所の確保が大きなテーマです。その様な背景から、社内や会社の近くに託児所を設置する企業が増えています。託児所完備の企業には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。設置する企業側と子どもを預けて働く社員側、それぞれの目線で考えてみましょう。
目次
託児所とは?保育所との違い
託児所と保育所の違いはたくさんありますが、もっとも明確な違いは管轄している省庁です。保育所を管轄しているのは厚生労働省ですが、託児所には特に管轄している省庁はありません。それぞれの具体的な特徴をご紹介します。
託児所
託児所は、デパートやイベント会場に併設された一時的に乳幼児を預かる施設や店舗型施設、企業が運営している保育施設まで幅広く指します。特に認可が必要な施設ではないため、保育士の様な国家資格をもたない人でも保育を行うことができます。
受け入れ年齢は施設によって異なりますが、一般的には0歳~小学生くらいまでの受け入れを行うことが多いようです。保育時間も施設によりますが、日中だけの一時保育のみを行っているところもあれば24時間保育対応の施設もあるようです。
料金は時間制や月極めなど施設によってさまざまですが、企業が運営する託児所の場合は1ヵ月0円~2万円と比較的安価なところが多いようです。学年別に分けて預かる施設は少ないため、幅広い年齢の子ども同士が触れ合えるという点が魅力といえます。
保育所
保育所では国家資格をもつ保育士が保育を行い、成長過程で必要な生活指導なども行います。保育所は、はやいところで生後43日、または生後57日から受け入れ可能な施設があります。これは、母親が産後8週間、もしくは医師の許可が下りた場合に限り産後6週間を過ぎれば就労可能となるためです。入所後は小学校に入学する6歳まで通わせることが可能です。保育時間は基本的には8時間程度が目安となっているようですが、夜間まで延長保育が可能な施設もあります。
保育所には、国の認可が下りている認可保育所と、それ以外の無認可保育所(認可外保育所)と、大きく2種類に分けられます。敷地に対する児童の人数・児童の人数に対する保育士などの職員数・給食設備・防災管理・衛生管理など、国が定めた認可基準を満たしている園を認可保育所といいます。料金は保育所ではなく自治体に支払うシステム。その金額は家庭ごとの収入などによって異なりますが、1ヵ月2~3万円が相場です。ただし、入所するためには各自治体によってさまざまな条件が定められています。
国が定めた認可基準を満たしていない施設、または行政の都合で認可が下りていない状態の施設を無認可保育所といいます。無認可保育所は自治体からの補助が受けられないため、料金が高くなってしまう傾向にあります。独自の保育理念に基づいてユニークな教育を行っている施設が多いのが特徴です。入所は先着順や抽選で決まることが多いため、はやめの対策が必要となります。
託児所付き企業の数の推移、日本における実情とは?
社員が子育てをしながらでも働ける様に、敷地内または会社の近くに社員専用の託児所を設ける企業が増えているようです。調査がはじまった1998年には全国で約3,500施設だったのが、2015年には約4,500施設に増えています。その半数以上である約2,800施設を、病院内にある院内保育施設が占めています。子育て中の女性も多く、24時間態勢の職場であるからこその配慮といえるでしょう。
少子化対策のひとつとして政府は2016年から「企業主導型保育事業」を開始しました。自治体に届け出を出すだけで託児所が設置できたり、設置する企業へ認可保育園並みの補助金を出したり、なかなか導入に踏み切れない企業を後押しする様な内容になっています。
託児所付き企業のメリット
企業内に託児所がある場合、どの様なメリットがあるでしょうか。企業側と社員側それぞれの立場別にご紹介します。
◇企業側のメリット
助成金が出る
規模や設備などに細かい条件はありますが、厚生労働省の運営支援助成金を利用すれば、最低限の費用で企業内託児所を設けることができます。または、各自治体によって補助金が出る場合もあります。
出産を理由に退職する社員を会社に残せる
日本では未だに「子育ては女性の仕事」という風潮があるため、出産を機に退職してしまう女性が少なくありません。また、育休明けに仕事復帰したくても保育園に空きがないなどの理由で退職を余儀なくされる女性も多いといいます。企業内に託児所を設ければ、この様な理由で優秀な人材が会社から去ってしまうのを防ぐことができるかもしれません。
イメージアップになる
「託児所がある企業」というのは、就活生に対する強いアピールポイントになると考えられます。出産後に子育て環境が確保されているということは、結婚・出産しても長く働きたいと考えている女性にとって好印象となるでしょう。
◇社員側のメリット
送り迎えの時間が短縮できる
社内、または会社のすぐ近くに託児所があれば、出勤前や退社後に保育園に立ち寄る手間が省けます。できるだけ長い時間子どもと一緒に過ごすことができるのも嬉しいポイントといえるでしょう。
すぐ近くに子どもがいる安心感
子どもが小さいうちは体調も崩しやすく、そのたびに保育園から電話で呼び出されることも多いようです。企業内に託児所があれば、子どもに何かあった場合すぐに対応できたり休憩中でも様子を見に行けたりするため安心感が違います。
利用者が同じ社内の人間
同じ企業に勤める者同士が利用者になるため、自然と仲間意識が芽生えると考えられます。仕事の悩みや子育ての悩みを共有できる仲間がいるということは、非常に心強いものなのです。
託児所付き企業にデメリットはある?
国からの後押しもあり、企業内に託児所があることはメリットしかない様に感じますが、デメリットも考えられます。
◇企業側デメリット
運営費の負担
補助金や助成金で受け取れる運営費は大抵5~10年で打ち切られてしまうため、それ以降の運営はすべて企業でまかなわなくてはいけません。そのため、経営に余程の余裕がないと運営が成り立たなくなってしまうでしょう。
安定した利用者の確保が難しい
定期的に社員に子どもが生まれるとも限らないため、時代の流れによって利用者数の確保が難しい時期もあると考えられます。定員割れを防ぐために、地域の子どもも受け入れる「地域型保育事業」を取り入れている企業もあるようです。
◇社員側デメリット
子どもを連れて通勤しなくてはならない
送り迎えの時間は短縮できますが、通勤手段によってはデメリットにもなり得ます。特に電車通勤の場合は、通勤ラッシュの人で溢れる車内に子連れで乗り込むのは抵抗があるでしょう。子連れやベビーカーに対し、快く思わない人も多いといわれます。
施設環境や保育内容に不安がある
託児所には特に設備や広さに基準が定められているわけではないため、企業内の限られたスペースしか確保されていない可能性もあります。園庭やホールがない場合は、どれくらいの頻度で散歩に行くのかなど施設に問い合わせてみましょう。また、託児所では国家資格をもたない者でも保育士として働けるため、保育内容に不安や不満が出てしまう可能性もあります。
現在政府が主体となり、待機児童解消や少子化対策の一環として企業内に託児所を設置する後押しがされています。企業内に託児所を設けたことで、社内にベビーブームが起こったというケースもあるようです。少子化対策に一役買える可能性もありますが、設置にはさまざまなメリットとデメリットが存在します。企業側も社員側も、託児所を検討する際は入念な下調べと熟考が必要といえます。
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