リーダーに求められるノブレス・オブリージュとは
更新日:2023.05.11ビジネス豆知識「ノブレス・オブリージュ」とは、かつてヨーロッパの貴族が背負った社会的義務です。最近は、企業の社会貢献を期待する声も増えています。社内のリーダーが社会的義務として何を求められているかを把握すれば、企業による社会貢献を進めやすくなるでしょう。そこで今回は、ノブレス・オブリージュの意味・来歴や、企業でリーダーに求められる社会的な義務・責任をご紹介します。
目次
ノブレス・オブリージュの意味や来歴
ノブレス・オブリージュは、ヨーロッパを中心に広まった考え方です。近年は、ビジネスシーンでも注目され始めています。以下では、この言葉の本来的な意味や来歴などをご紹介します。
ノブレス・オブリージュの意味とは
ノブレス・オブリージュは、本来的に「高貴な立場にある者が背負う社会的義務」を指した言葉です。もともと「ノブレス(noblesse)」は、フランス語で「貴族」や「高貴な生まれ」を意味します。また、「オブリージュ(oblige)」には、「強要する」「義務づける」の意味があります。
これらの言葉を組み合わせた言葉が、「貴族や上流階級の社会的な義務・責任」を表現した「ノブレス・オブリージュ」です。法的な規定ではありませんが、権力者や特権階級の人が軽視すると社会批判を浴びるといわれています。最近、ビジネスの場では、リーダー的な立場の者に求められる責務として注目を集めています。
言葉の来歴
ノブレス・オブリージュは、19世紀にフランスで生まれ西欧社会に浸透したと見られる考え方です。当時のヨーロッパ社会は、貴族や上流階級が多くの特権を認められていました。その代わり、戦争中は率先して戦地に向かう義務が課されています。実際、イギリス貴族は第一次大戦で最前線に立ち、ノブレス・オブリージュを果たしました。英国王室の慈善活動も、ノブレス・オブリージュの代表例です。また米国では、会社の経営者やセレブ階級による寄付やボランティア活動が、社会的義務として一般化しています。英語では「ノーブル・オブリゲーション(noble obligation)」ともいわれ、現在は欧米にとどまらず他の国に広まっています。
ビジネスとの関連性
ノブレス・オブリージュは、ビジネスにおける「企業の社会的責任(CSR)」に通じる考え方です。CSRは「Corporate Social Responsibility」の略であり、企業に求められる社会的な責任を指しています。企業は社会への影響力が大きいと認識されているため、利益を追求するとともに社会に貢献する必要があると考えられています。
企業が社会的責任を負うとの考え方は、貴族・上流階級の義務・責任を意味するノブレス・オブリージュと共通点のある概念です。どちらも、大きな力を有する者は社会に貢献すべきと考えるところが一致しています。昨今は企業に社会貢献を求める声が増えているため、ノブレス・オブリージュはビジネスシーンで注目度が高まっています。
リーダーに求められるノブレス・オブリージュ
企業でリーダー的な立場にある者が求められるノブレス・オブリージュは、大きく分けると部下に対するものと顧客に向けたものの2種類です。以下では、それぞれ具体的に何が求められているかご紹介します。
部下に対するノブレス・オブリージュ
企業でリーダーが求められる部下に対するノブレス・オブリージュは、良好な人間関係を築くことです。従業員は、快適な職場環境で働きたいと望んでいます。人間関係は職場の働きやすさを左右する重要な要素であり、上司をはじめ社内のリーダー的存在は部下から良好な関係性を築いてほしいと求められています。リーダーが良好な人間関係を築くうえで、部下の希望や悩みを把握することは不可欠です。日頃から積極的にコミュニケーションを取りながら、部下の気持ちを理解しておく必要があります。
従業員は、目上の人物と会話する時に緊張する傾向が見られます。リーダーが部下から気兼ねなく本音を聞かせてもらうには、話しやすい雰囲気づくりが大切です。そのため日頃のコミュニケーションでは、謙虚に耳を傾ける意識が欠かせません。また、部下が問題を抱えている場合は、威圧的に指導する代わりに親身にアドバイスする姿勢が望まれています。お互いの距離が縮まり職場の風通しがよくなれば、良好な人間関係の構築につながると期待できます。
顧客に向けたノブレス・オブリージュ
企業のリーダーが顧客に向けて求められるノブレス・オブリージュは、誠実に業務を進める心がまえです。多くの顧客は、商品・サービスを購入する時、販売店や製造元の企業によるサポートを求めています。食材や衣料品で何を買うか迷うと従業員に質問し、購入品に問題があれば製造元の相談窓口に連絡するシーンは日常的に見られます。その際、顧客が重視しているものは、従業員や相談窓口の誠意ある業務姿勢です。不親切な接客対応でトラブルが生じた場合、業務責任者による事態の収集が必要になるケースもあります。
業務責任者は一般の従業員のリーダー的存在であり、責任の重い立場として顧客からの期待は大きくなります。そのため、顧客に向けたノブレス・オブリージュとして誠実な業務姿勢を心がける意識は不可欠です。接客などで問題が起きた時に業務責任者が誠意をもって対処すれば、顧客から求められる社会的な義務・責任は果たせると考えられます。
ノブレス・オブリージュの現状・実践例
現在の日本は、ノブレス・オブリージュの意識が欧米ほど浸透していないといわれる状況です。企業による実践例を理解すれば、ビジネスの場で社会貢献を進めやすくなるでしょう。以下では参考として、ノブレス・オブリージュについて国内外の現状や企業の実践例をご紹介します。
ノブレス・オブリージュの現状
日本や諸外国の社会貢献に関する調査によれば、日本は海外に比べると社会に対する貢献度が低いとの結果でした。近年の資産・寄付に関する調査では、100万ドル(約1.1億円)以上の流動性資産を所持する国民は米国が世界で最多、日本は2位と報告されています。
一方でGDP比の寄付額は、米国1.55%と英国0.47%に対して日本は0.23%にとどまりました。また、英国のチャリティー団体は、寄付額・ボランティア参加・支援活動について調査しています。2021年の結果を見ると、これら3項目における日本の社会貢献指数は調査対象114カ国のうち最下位になりました。以上の数字をふまえ、日本は経済規模に対する寄付の割合が低いと判断され、ノブレス・オブリージュが浸透していないと見られています。
企業の実践例
企業によるノブレス・オブリージュの実践例は、社内のコミュニケーションの円滑化と顧客対応の体制整備が中心です。経営側が従業員への貢献を意識している企業の場合、上司は部下と気軽に話せる環境づくりに力を注いでいます。常に低姿勢で会話を進め、部下が悩みを打ち明けやすいように配慮しています。顧客対応については、トラブルが発生した時の迅速かつ的確な問題解決に余念がありません。部下に落ち度があった場合、上司は指導する立場の自分に責任があると考えて顧客に謝罪し、再発防止に向けた部下のフォローにも努めています。
また、顧客に問題があっても、自分は社会貢献をする立場にあると認識して顧客の心情に寄り添った解決を心がけています。これから企業でノブレス・オブリージュの意識を高めたいと検討しているなら、様々な実践例が参考になるでしょう。寄付やボランティア参加だけが社会的に求められる義務・責任ではないため、それぞれの職場に合った方法で実践することをおすすめします。
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