東京弁護士会とは?東京に弁護士会が3つある理由

更新日:2023.03.16スタッフブログ

裁判所

各都道府県に1団体のみ設立される弁護士会ですが、東京には3つの弁護士会があることをご存じでしょうか。そのうち、知名度が高く、会員数も多い団体が「東京弁護士会」です。同団体は、長年にわたって刑事事件や民事事件をカバーし、市民の安全を守り続けています。今回は、東京弁護士会の基礎知識や設立された経緯、東京に弁護士会が3つある理由をお話します

東京弁護士会とは?

東京弁護士会とは、日本全国に52団体ある弁護士会のひとつです。1893年の創立以降、100年以上にわたって市民の安全を守る活動に勤しんできました。その会員規模は日本一を誇り、2019年3月時点で226法人、計8,496人の弁護士が所属しています。そもそも弁護士は、日本弁護士連合会(日弁連)と各地の弁護士会に所属し、初めて弁護活動ができるようになります。

弁護士は数ある資格業の中でも、“東京一極集中”といわれる職業です。その理由はただひとつ、東京に法律事務所が多いためです。日本弁護士連合会の調査によると、全国の弁護士会に所属している弁護士の人数は、41,159人でした(2019年3月時点)。そのうち、東京弁護士会に所属済みの弁護士は8,496人です。これはつまり、全弁護士の約20%が、東京弁護士会に集中していることになります。

参考:弁護士会別会員数(2019年3月1日現在)
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/membership/data/190301.pdf

東京弁護士会の仕組みとは?

東京弁護士会の組織図から、その仕組みを簡単にご紹介します。

執行機関

全会員に選出された会長と副会長、および理事者会から構成される機関です。理事者会には、計72の委員会と調査室、広報室、計10の事務局によって成り立ちます。

議決機関

議決機関は、東京弁護士会における最高意思決定機関の総会と、常議員で組織される常議員会のふたつで構成されます。予算審議や建議をはじめ、重要な意思決定を行う機関です。

財務監査機関

本会における財務管理を行う機関です。

独立機関

東京弁護士会の独立機関は、資格審査会、懲戒委員会、網紀委員会(こうきいいんかい)、選挙管理委員会の4つとなります。また、法律相談センターや合同図書館などの合同機関もあります。

支部

東京弁護士会は、東京・立川に多摩支部を構えています。こちらは1998年、多摩地区における民間人および公的機関のニーズに応えるべく、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の3団体が設立しました。現在は、同エリアの法律相談などの受け皿として機能しています。なお、東京弁護士会以外の組織について、詳しくは後述します。

東京弁護士会の活動内容と取り組み

ここでは、東京弁護士会の活動内容をいくつかご紹介します。

法律相談

法律相談や紛争解決、各分野に精通する弁護士を紹介することも弁護士の仕事です。法律相談においては、東京弁護士会の所属弁護士が担当し、利用者に解決策を提示したり、法的なアドバイスを行ったりします。また、法律的紛争に発展することを未然に防ぐのも、弁護士会の大切な役割です。

委員会活動

先述した通り、東京弁護士会には計72の委員会が設置されています。各種委員会によって活動内容はさまざまですが、啓発活動(人権擁護活動を含む)、教育、調査、研究、施設運営など中心です。また、近年のグローバル化する法律問題に対応すべく、海外法曹団地との連携を強めた国際委員会も設置しています。

法教育

法教育委員会が中心となり、学生および一般人向けの法教育プログラムを提供しています。主なプログラムは、疑似裁判や裁判傍聴会、法整備に関する座学などです。これらの企画を通じて、法律に関する知識を深めることができます。

贖罪寄付の受け付け

贖罪寄付(しょくざいきふ)とは、覚せい剤取締法違反や道路交通法違反などの「被害者なき犯行」を行った被疑者が、贖罪の意を示すため、慈善団体に寄附することをいいます。東京弁護士会は贖罪寄附を受け付けており、寄付総額の半分を人権救済基金に、もう半分を日本弁護士連合会の法律援助基金に寄附しています。つまり、人権救済を目的とした活動や、経済的理由から法律相談ができない人達の弁護士費用に充てているわけです。

なぜ東京には3つの弁護士会があるのか?

弁護士会は、ひとつの地方裁判所に対し、1団体が設立される決まりとなっています。全国48都道府県ですので、弁護士会も48団体でなければ辻褄が合いません。これには弁護士会の歴史的経緯、および地理的問題が絡む理由が存在します。

例外的に複数の弁護士会がある都道府県は、北海道と東京のみです。北海道には札幌地裁、釧路地裁、旭川地裁、函館地裁といった4つの地方裁判所があります。その理由は単純で、広大な北海道において、ひとつの地方裁判所では対応しきれないためです。地方裁判所を4つの管轄に区切った結果、北海道には4団体の弁護士会が設立されました。

一方、東京にはひとつの地方裁判所しかありませんが、東京弁護士会と第一東京弁護士会、第二東京弁護士会という3団体が存在します。後述した2団体については、東京弁護士会から分裂した弁護士達により設立された経緯があります。元々東京には、「東京代言人組合」という団体がありました。代言人(だいげんにん)とは、明治時代に導入された近代司法制度に沿って誕生した、弁護士の前身にあたる職業のことです。

同組合の発足は1880年、東京弁護士会が設立される以前の話です。当時、組合内で大卒組の弁護士と、それ以外の組合員による派閥抗争が勃発しました。ふたつの派閥を半強制的に統合させ、1893年に設立されたのが東京弁護士会です。統合以降においても、東京弁護士会内の対立構造は変わりませんでした。最終的に大卒組の弁護士達が離反し、第一東京弁護士会を設立します。これは東京弁護士会が設立されてから30年後、1923年の出来事です。

ただし、別団体が誕生したからといって、対立は収まる気配を見せませんでした。深刻化する分裂状態を憂慮し、1926年に設立されたのが第二東京弁護士会です。第二東京弁護士会に関しては、東京弁護士会と第一東京弁護士会からそれぞれ有志が集まり、設立にいたりました。

話を戻しますが、東京には地方裁判所がひとつしかありません。それにもかかわらず3つの弁護士会があるのは、現行の弁護士法が施行される以前に、東京弁護士会が分裂したためです。東京代言人組合の発足から始まった歴史的経緯もあって、各弁護士会の存続が認められることとなりました。

東京の弁護士会に優劣はあるのか?

東京で活躍する弁護士によると、「東京の弁護士会に優劣はあるのか?」という質問を度々受けるようです。多くの市民は、東京弁護士会で起きた派閥抗争など知る由もありません。しかしながら、東京弁護士会と第一東京弁護士会、第二東京弁護士会と存在するため、上限関係や弁護士の質に違いがあると誤解されます。

結論からいうと、3つの弁護士会に相違はありません。それぞれに国内トップクラスの実績を誇る弁護士が所属し、東京全域の民事事件および刑事事件をカバーしています。とりわけ近年は、法律相談や弁護士派遣などの窓口を1本化し、3団体で協力体制を構築しています。実際の内部事情は不明ですが、当時のような関係性ではないと考えられます。

まとめ

東京弁護士会は、日本最大規模を誇る法律の専門家集団です。しかし、その発展の裏には、明治時代から続く派閥抗争などの歴史がありました。今後弁護士に法律相談をする予定の方、また東京で弁護士を目指す方は、本記事の内容をしっかりと抑えておきましょう。東京における弁護士会選びで、きっと役立つはずです。

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