中小企業診断士のキャリア|試験概要や年収について
更新日:2024.11.22スタッフブログ中小企業診断士は、中小企業を支援するため経営課題の解決をサポートする専門家です。主な業務は企業の成長戦略にアドバイスすることであり、難易度の高い資格であることや年収の高さなどで注目されています。しかし、その難易度の高さと勉強時間確保の難しさから、受験するかどうかで迷っている人も多いのではないでしょうか。この機会に、試験の概要や合格後のキャリアを確認しておけば、資格獲得への挑戦意欲につながるかもしれません。そこで今回は、2024年度の試験概要・過去数年の難易度や中小企業診断士のキャリアについてご紹介します。
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目次
中小企業診断士の試験の概要
中小企業診断士とは、中小企業が抱える経営課題を分析して成長戦略をサポートする職種です。仕事内容は企業経営のコンサルティング業務がメインであり、経営コンサルタントとして公的に認定された日本唯一の国家資格といわれています。
2024年度の試験日程
中小企業診断士試験は、中小企業庁が実施している資格試験です。また、この試験に関する事務は、一般社団法人中小企業診断協会が担当しています。公式に発表された資料によると、2024年度の試験日程は次の通りです。
【第1次試験】
項目 | 日程 |
---|---|
受験申込書等の交付・受付期間 | 2024年4月25日~5月29日 |
試験日 | 2024年8月3日・8月4日 |
第1次試験合格者・科目合格者の発表 | 2024年9月3日 |
【第2次試験】
項目 | 日程 |
---|---|
受験申込書等の交付・受付期間 | 2024年8月23日~9月17日 |
試験日 | 1.筆記試験:2024年10月27日 2.口述試験:2025年1月26日 |
口述試験を受ける資格者の発表 | 2025年1月15日 |
第2次試験合格者の発表 | 2025年2月5日 |
第1次試験は試験科目が7つあり、8月3日に4科目、8月4日に残り3科目の試験が行われる予定です。その後、9月に入ってから、試験全体と各科目の合格者について発表される流れとなっています。また、第2次試験は、筆記試験と口述試験の2つです。筆記試験は10月にあり、同試験の通過者は翌2025年1月に発表されます。その数日後、筆記試験の通過者は口述試験を受け、2月に最終的な合格者が発表される見通しです。
なお、口述試験の受験資格を得た場合、中小企業診断協会から中小企業診断士口述試験案内が送られます。また、それぞれの合格者には、同協会から各試験の合格証書や科目合格通知書が交付されます。
中小企業庁 令和6年度の中小企業診断士試験について (参照 2024-06)
中小企業診断協会 令和6年度中小企業診断士第1次試験について(試験案内の概要) (参照 2024-06)
受験資格
中小企業診断士試験のうち第1次試験は、年齢・性別や学歴に関係なく、誰でも受験可能です。中小企業庁の資料によると、第1次試験については、とくに受験資格が設けられていません。そのため、所定の申込手続きを済ませれば、何も制限されず受験できます。
それに対し、第2次試験は、前年度か当年度の第1次試験に合格するなど所定の条件を満たす必要があります。さらに、口述試験の場合、筆記試験を通過して試験を受ける資格を得ることが条件です。なお、中小企業診断士試験の詳細は、中小企業庁や中小企業診断協会の公式サイトなどで確認できます。
中小企業庁 令和6年度の中小企業診断士試験について (参照 2024-06)
中小企業診断士の試験の難易度、合格率
中小企業診断士試験は、比較的に多くの勉強時間が必要といわれ、難易度が高めと認識されている試験です。
必要な勉強時間
中小企業診断士試験で合格するには、1,000時間くらいは勉強する必要があるといわれています。資格関連サイトの情報によると、独学での資格取得に必要な勉強時間は、約1000時間を目安とする意見が有力です。実際には、トータルで800~1,000時間ほど、あるいは第1次試験に700~1,000時間・第2次試験に300~400時間が必要と見られています。毎日のように学習を続けても、勉強時間が1,000時間に達するまで、1日3時間のペースで1年近くかかります。
また、試験では幅広い知識が問われるため、計画的に準備することが大切です。単に、1,000時間ほど勉強するだけでは十分とはいえません。資格取得に向けた勉強は計画性も必要であり、試験の難易度は高いとの声が多く聞かれます。
合格率
中小企業診断士試験の合格率は、ここ3年間に限れば全体で1割に届かず、この点からも試験の難易度は高いといえます。中小企業診断協会の資料を見ると、第1次試験の合格率は、2021年度36.4%・2022年度28.9%・2023年度29.6%でした。また、第2次試験は、それぞれ18.3%・18.7%・18.9%となっています。
これらの数字をふまえると第1次試験の合格率は3割弱、第2次試験の合格率は2割弱であり、それほど難易度は高くないと感じるかもしれません。ただし、第1次試験の受験者は、それぞれ18,662人・20,212人・21,875人でした。それに対し、最終的な合格者は1,600人・1,625人・1,555人にとどまっています。最初の受験者に占める最終合格者の割合で見ると、各年度の合格率は約9%・8%・7%になる計算です。
この試験は第1次試験に受かったうえで第2次試験の筆記試験を通過し、最後の口述試験も合格する必要があり、厳しい合格率になっていると考えられます。
中小企業診断協会 中小企業診断士試験|申込者数・合格率等の推移(参照 2024-06)
受験者の年代、職種など
中小企業診断士試験を受けている人々の年齢層や職種は、広範囲にわたる傾向が見られます。中小企業診断協会が示したデータによれば、2023年度の第2次試験に限っても、受験者の年齢は20歳未満から70歳以上に及びました。そのうち合格者は、最年少19歳、最年長71歳と報告されています。
また、勤務先は、経営コンサルタント自営業や税理士・公認会計士等自営業をはじめ多種多様です。合格者数は民間企業勤務の1,043人が最多であり、政府系以外の金融機関勤務が106人と続いています。さらに、公務員や学生の合格者も見られ、試験の難易度は高いものの幅広い年齢や職種で合格する可能性はあると考えられます。
日本中小企業診断士協会連合会 申込者・合格者にかかる統計資料(第2次試験) (参照 2024-11)
中小企業診断士合格後のキャリア
中小企業診断士試験に合格した後のキャリアは、独立開業するケースをはじめ、会社員や公務員として勤務するなど多彩です。
就業形態
中小企業診断士の就業形態は、自営業・フリーランスやコンサルティング会社勤務のほか、民間企業や金融機関の従業員が知られています。2021年に中小企業診断協会が行った調査によると、資格取得者のうち、自営業などプロのコンサルタントとして働く「プロコン診断士」は48.3%でした。
それに対し、会社員や公務員を含めた「企業内診断士」は46.4%と報告されています。調査結果の内訳を示すと、「プロコン経営」との回答は46%、「コンサルティング会社等勤務」は2.3%でした。一方、金融機関を除く民間企業勤務は33.2%、金融機関勤務は6.8%、公務員や公的機関・調査機関勤務は6.4%となっています。
以上の結果をふまえた場合、プロコン診断士が半数近くを占め、次いで民間企業や金融機関の従業員も多いことが理解可能です。なお、一部の情報サイトには、自営業・フリーランスとして独立開業しているケースが資格取得者の過半数に及ぶとの記載も見られます。最近はAI技術の進歩が著しいものの、中小企業診断士の主要業務である中小企業のサポートは、AIでの代替が難しいでしょう。そのため、自営業に限らず、資格取得者が活躍できる場面は多いと期待できます。
日本中小企業診断士協会連合会 報告|「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について (参照 2024-06)
5年に1回更新が必要
中小企業診断士の資格取得者は、同資格の登録を継続する場合、5年に1回の更新登録が必要です。中小企業庁の資料には、中小企業診断士の登録の有効期間について、登録日から起算して5年間である旨が示されています。更新登録を希望する時は、有効期間の満了日までに更新登録申請を済ませるように求められています。申請手続きで用意する必要書類は、中小企業診断士登録申請書や専門知識補充要件の証明書等です。
また、更新費用として、理論政策更新研修の費用・診断協会会費・実務従事の費用がかかります。なお、理論政策更新研修は必須であり、費用は6,000円ほどです。一方、協会加入は任意であり、実務従事は証明書を用意すれば要件を満たせるため、いずれも節約できる可能性があります。更新登録申請を怠ると中小企業診断士の登録は抹消されるため、更新手続きの詳細は管轄窓口で確認し、早めに申請することをおすすめします。
中小企業庁 申請・届出の手引き(更新登録申請) (参照 2024-06)
中小企業診断協会 更新登録制度、更新要件について (参照 2024-06)
中小企業診断士に求められる役割
中小企業は、大企業と比べて、資金面や経営資源において 恵まれた環境とは言い難い状況 にあり、限られた予算と人材で厳しい資本主義の競争社会を乗り越えていかなければなりません。国内企業の7割、8割は中小企業が占めています。個々の単位では大きくないものの、経営悪化で倒産する企業が増えれば日本経済にとって深刻なダメージとなるのは言うまでもありません。中小企業の経営をコンサルティング的立場からサポートする中小企業診断士の働きは、そのまま国内の経済活動を支える原動力と言っても言い過ぎではないでしょう。
どんな企業も、今年よりは来年、来年よりは再来年と、年々成長し、業績アップを成し遂げていくことが望ましいと思います。それを実現するには、緻密な経営計画のもとで成長戦略を実行に移すアグレッシブな姿勢が求められます。市場の動きやニーズ、社会情勢、経営環境などを踏まえた事業計画やアドバイスは、高い知見と能力を有した中小企業診断士だからこそできる役割です。
中小企業診断士の年収
中小企業診断士の平均年収は、全国的に見ると900万円前後です。国内の年収としては高めといわれますが、会社勤めの場合と独立した場合で多少の差があるとの声も聞かれます。2023年のデータをふまえ厚生労働省が示した年収は、全国平均947万6,000円です。また、中小企業診断協会が2021年に実施した調査によると、年間売上は300万円以内から3,001万円以上に及びました。そのなかで、「501~800万円」が最多の21.4%を占めています。これらと異なる金額が示されるケースもありますが、平均値はほぼ800万円~1,000万円の範囲に収まると考えられるでしょう。
ただし、会社に勤めた時の年収は、独立して働くのに比べて低くなる可能性が高いと指摘されています。主な理由は、会社勤めで中小企業診断士の資格に月数万の手当がついても、年収は数十万円ほどしかアップしないと見られるためです。具体的な年収は定かでありませんが、一部サイトでは、300万円台~400万円台が相場ともいわれています。
一方、独立した場合、報酬額から必要経費を差し引いた残りは、すべて売上として取得できます。会社勤めと異なり、収益の一部が給与や資格手当として支給される状況にはならないでしょう。このような現状をふまえた場合、中小企業診断士として年収アップを目指すなら、独立開業を検討してみてもよいと考えられます。
厚生労働省 jobtag|中小企業診断士 (参照 2024-06)
中小企業診断協会 報告|「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について (参照 2024-06)
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