弁護士の歴史を紹介
更新日:2022.10.31スタッフブログ性別などを問わず、人気の職業である弁護士。テレビやマンガの影響もあって一般人にとっても身近な存在ですが、その歴史は意外と古く、古代ギリシャまでさかのぼります。今回は、興味深い弁護士の歴史についてご説明します。少し視点を変えて、弁護士の違った一面を覗いてみて下さい。
弁護士はどのように生まれたの?
古代ギリシャから存在した弁護士
「弁護士」という職業がどの国で、いつからはじまったのか、資料がないためにはっきりとしたことは分かりません。ただし、「弁を持って異なる主張の相手を打ち負かす」ことを生業とする職業は、はるか古代の昔から存在した様です。
古代の弁護士
古代のギリシャ社会では、すでに裁判制度が存在し、そこでは“詭弁”をろうする弁士たちが被告や原告に代わって代弁することが認められたそうです。ただし、重視されたのは物的証拠ではなく、いかに説得力ある論を展開するかという「弁論術」にあったといいます。
そんなギリシャ社会で行われた、とある裁判の記録。それは弁論術を教えていた先生が、授業料を払わなかった生徒に対して起こした裁判で、生徒は法廷でこう主張したといいます。
「先生は誰もが納得できる弁論術を教えたといった。この場で私があなたを説得できなければ、それはウソということになり、つまり授業料を払わなくて済むということ」
これに対して先生はこう反論します。
「もし私を説得できれば、約束を果たしたことになり、授業料は払ってもらわなければならない。逆に説得できなかったとしても、それは私の勝ちを意味するから払ってもらうことになる」
まさに、詭弁です。法廷で堂々とこんなやり取りが行われていたわけですから、弁護士の主張も万事この調子であったことが想像されます。
中世の弁護士
早くから民主政治が推し進められてきたヨーロッパでは、各種の法律が整備され、裁判制度も成熟する様になります。特に西ヨーロッパでは法整備や弁護士の育成に積極的で、現在の弁護士制度の基本は中世におけるこの地で生まれました。法律家を養成するためのリーガル学校や法学部も相次いで設置され、この時代急速に弁護士人口が増えることになります。
とはいえ、弁護士の定義や業務内容がしっかり定められていたわけではありません。地域や担当する裁判所によってその名称は異なり、業務内容も今のような事務から弁護すべてを代理していたわけではなかった様です。手続きの代理を行う者は代訴人(または事務弁護士)、法廷に立って弁論する者は代言人(または法廷弁護人)というように、業務に応じて区分されていました。今なおその名残がある国もあります。
日本の弁護士のはじまりは、鎌倉時代
記録をみる限り、日本で最初に公的裁判所が設置されたのは、鎌倉時代。源頼朝が設置した「問注所」がそれにあたります。問注所とは訴訟事務をつかさどる役所で、訴訟の当事者同士はこの場で論を展開し合い、どちらが正しい主張をしているかを競いました。江戸時代後期に編纂された『武家名目抄』には、「問注所とは政所(政務をつかさどるところ)の別庁である一方、訴訟裁判の本務とするところなり」と記されています。
問注所は主に東国における訴訟沙汰の管理機構で、西国で同様の機能を持った機関は「六波羅探題」と呼ばれました。そこでは、いつしかしゃべりの達者な者が裁きの場に登場し、当事者に代わって口頭弁論を展開したとの記録が残されています。これはまさに現代でいうところの刑事弁護人と呼べるでしょう。
江戸時代になると、「公事師(くじし)」と呼ばれる人たちが登場します。彼らは「公事宿(くじやど)」という、法律事務所の様な施設において、お白州で裁きを受ける者に代わって必要書類を作成しました。また、そこは裁きを控えた当事者の宿泊施設としても活用されたそうです。
しかし、メインは書類作成などの事務作業で、お白州に出て代弁したわけではなかった様です。彼らの目的は訴訟人に対する債権の取り立てで、その報酬によって債務を帳消しにしたという話も伝わることから、純粋な弁護士とは呼べないでしょう。
近代、そして今の弁護士
明治時代、日本は西洋からさまざまな文化や技術、制度を取り入れましたが、裁判制度もこの時同時に入ってきたといわれます。当時は、裁判事務の代理人を務める者を「代言人」と呼びました。明治初期の頃は今のような国家資格制度がなかったため、無資格の人たちに代理を依頼するしかありませんでした。
1893年の弁護士法施行にともない、弁護士という呼び名が定着する様になります。それと同時に専門家を養成するための資格制度もスタートしました。
法律業務を弁護士の独占とすることが決まったのは、1936年の弁護士法改正からです。それにともない弁護士たちの地位は飛躍的に向上し、裁判官や検察官とも肩を並べる存在になります。
戦後は弁護士自治が認められる様になり、日本弁護士会や、各都道府県の弁護士会が発足。国家権力の不正や大企業の不祥事にも臆することなく立ち向かう弁護士も増え、「弱者の味方」という現在のイメージが定着しました。
テレビドラマの影響もあり、何となく輝かしいイメージもある弁護士ですが、現在は弁護士人口の増加やAIの脅威といった新たな課題に直面しており、決して明るい話ばかりではありません。しかし、法律トラブルで困る人がいる以上、彼らの活躍の場が失われることはないでしょう。
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