キャリアアップ助成金はどんな制度?基本的な仕組みや申請方法をご紹介!
更新日:2024.08.19ビジネス豆知識キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者のキャリアアップに取り組む事業者が活用できる公的制度です。有期雇用からの正社員化などを実施した場合、助成金を受け取れる可能性があります。ただし、どのような適用条件があるか詳しく知らないケースもあるかもしれません。そんな場合、この助成金について理解を深めておけば、支給申請する時に役立つでしょう。そこで今回は、キャリアアップ助成金の仕組みを解説し、申請の流れ・申請方法や助成金で得られるメリットをご紹介します。
目次
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金は、非正規雇用(有期雇用等)にある労働者のキャリアアップを目指し、正社員化や処遇改善を進める事業主に向けた助成金制度です。厚生労働省の資料によると、同制度は正社員化支援と処遇改善支援の大きく2つに分けることができます。前者は「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」、後者は「賃金規定等改定コース」や「賃金規定等共通化コース」に細分されています。また、支援対象は、基本的に以下の適用条件を満たした事業主です。
・雇用保険適用事業所の事業主
・各雇用保険適用事業所にキャリアアップ管理者を配置
・雇用保険適用事業所ごとに有期雇用労働者等のキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長から受給資格を認定されている
・支援を受けるコースに該当する有期雇用労働者等の労働条件・勤務状況・賃金明細や給与の支給方法を明示できる
・キャリアアップ計画に沿って具体的な取組みを実施
正社員化支援の正社員化コースと処遇改善支援で助成金の支給を受ける場合、事業主は、上記の5条件をすべて満たす必要があります。また、障害者正社員化コースも、雇用保険の適用やキャリアアップ管理者の配置が支給条件になっています。
それぞれ、支援対象となる取組み内容・支給対象者・具体的な支給額や支給対象外となる事業主をまとめると、次表の通りです。
【正社員化支援】
※横にスクロールできます。
支援コース | 取組み内容 | 支給対象者 | 支給額 | 対象外 |
---|---|---|---|---|
正社員化コース | 有期雇用の労働者等を正社員化 | 5つの適用条件を満たす事業主 | 中小企業:40万円~ 大企業:30万円~ |
労働保険料の未納時期がある事業主など |
障害者正社員化コース | 有期雇用で障害のある労働者等を正規雇用や無期雇用に変更 | 雇用保険の適用など支給条件を満たす事業主 | 33万~120万円 | 正社員化した労働者の継続雇用が6カ月未満の事業主など |
【処遇改善支援】
※横にスクロールできます。
支援コース | 取組み内容 | 支給対象者 | 支給額 | 対象外 |
---|---|---|---|---|
賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の賃金等を3%以上増額 | 5つの適用条件を満たす事業主 | 中小企業:5万円~ 大企業:3万3千円~ |
労働保険料の未納時期がある事業主など |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正規雇用労働者の賃金規定等を共通化 | 5つの適用条件を満たす事業主 | 中小企業:60万円 大企業:45万円 |
労働保険料の未納時期がある事業主など |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等に対する賞与・退職金制度を導入し支給・積立を実施 | 5つの適用条件を満たす事業主 | 中小企業:40万円~ 大企業:30万円~ |
労働保険料の未納時期がある事業主など |
社会保険適用時処遇改善コース | 有期雇用労働者等を社会保険に適用し収入の増加につなげる | 5つの適用条件を満たす事業主 | 中小企業:30万円~ 大企業:22万5千円~ |
労働保険料の未納時期がある事業主など |
助成金の支給額は、原則的に中小企業と大企業で異なり、正社員になる労働者が有期雇用か無期雇用か・賃金の増額率が5%以上かなどによっても変わってきます。なお、労働保険料を納入していない年度がある事業主などは対象外となるため、注意が必要です。以上の助成制度における適用条件や支給額の詳細は、厚生労働省の資料や公式サイトでご確認ください。
厚生労働省 キャリアアップ助成金(参照 2024-06)
厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)(参照 2024-06)
厚生労働省 キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)(参照 2024-06)
厚生労働省 雇用関係助成金支給要領(参照 2024-06)
キャリアアップ助成金を活用するには
キャリアアップ助成金を活用する手順を大まかに示すと、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に関する計画を作成・提出し、支給申請する流れです。
申請の流れ
キャリアアップの助成金を申請する時は、事業主が計画を作成して管轄機関の認定を受けた後、具体的な取組みを進めていきます。まず、非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善に向けた計画を考案したら、労働局やハローワークの受付窓口に提出します。窓口への提出方法は、自分で持参するほか、郵送や電子申請も選択可能です。
次は、管轄機関に認定された計画内容をふまえ、具体的な取組みを実施していく段階です。正社員化支援と処遇改善支援の各コースに沿って、雇用形態の変更や賃金規定の改定・共通化を進めます。さらに、計画通り正社員化や処遇改善を実施して6カ月分の賃金を支払うと、労働局やハローワークに支給申請することが可能です。申請内容が審査を通過し、支給が決まれば、事業主は助成金を受け取れます。
なお、支給申請の受付期間は、キャリアアップ計画にしたがい所定の賃金を支払った翌日から起算して2カ月以内と定められています。
厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版) (参照 2024-06)
申請方法
キャリアアップ助成金を申請する場合、所定の期間内に必要書類を用意して受付窓口へ提出することが必要です。
申請期間は、キャリアアップ計画の実施後、計画通り賃金6カ月分を給付した翌日から2カ月以内です。正社員化コースの場合、非正規雇用の労働者を正規雇用・無期雇用して半年分の給与を支給した翌日から、助成金の申請期間が始まります。キャリアアップ計画にもとづき半年分の賃金支給を終えたら、助成金の申請に必要な書類を用意し、所定の受付窓口に提出します。支給申請の必要書類を提出する窓口は、原則として都道府県労働局です。
基本的には事業所の所在地を管轄する労働局で受理しますが、ハローワークを通じて受け付ける場合もあります。申請期間や書類提出の詳細は、厚生労働省の資料や都道府県労働局の窓口でご確認ください。
厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版) (参照 2024-06)
厚生労働省 雇用関係助成金支給要領 (参照 2024-06)
必要書類
キャリアアップ助成金の支給申請で必要な書類は、主に支給申請書と添付書類の2つです。助成金の申請手続きで提出を求められる申請書は、「キャリアアップ助成金支給申請書」です。紙面と電子タイプの2種があり、電子タイプは、同じ電子で受給資格の認定を受けると「雇用関係助成金ポータル」で提出できます。
添付書類としては、管轄労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画書や直接雇用制度を規定した就業規則(労働協約)が必要です。いずれも、原本か写しを用意すれば問題ありません。他には、正社員化コース内訳や正社員化コース対象労働者詳細も必要書類に含まれています。
なお、上記の概要をまとめると、次表の通りです。
基本的な手順・提出書類 | |
---|---|
申請の流れ | キャリアアップ計画の作成・提出→管轄機関による認定→認定された計画の実施→助成金の申請 |
申請方法 | キャリアアップ計画にもとづき賃金支給→賃金6カ月分を支給後に書類を用意→管轄労働局(ハローワーク)の窓口に提出 |
必要書類 | キャリアアップ助成金支給申請書・管轄労働局長に認定されたキャリアアップ計画書・直接雇用制度を規定した就業規則(労働協約)など |
以上は、申請の流れ・申請方法や必要書類の概要となるため、詳細は厚生労働省の資料や管轄労働局の窓口でご確認ください。
厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版) (参照 2024-06)
厚生労働省 雇用関係助成金支給要領 (参照 2024-06)
キャリアアップ助成金で得られるメリット
キャリアアップ助成金の活用により事業主が得られるメリットは、人材育成コストの軽減を期待できるうえ、人材確保にもつながるところです。
人材育成コストの軽減
人材育成コストの軽減に役立つ点は、キャリアアップ助成金がもたらす大きなメリットです。企業で人材育成を進める場合、通常、資金面や時間的・労力的なコストの負担は小さくありません。予算や時間、人手が足りず、従業員を十分に指導・教育する余裕がないとの声は多く聞かれます。
それでも、非正規雇用労働者の育成が正社員化や賃金アップに結びつけば、キャリアアップ助成金の支給対象として認められる可能性があります。最終的に助成金が支給されれば、人材育成に要するコスト負担は軽減すると考えられます。企業が非正規雇用労働者の育成を進められるうえ、助成金も受け取れれば、事業主にとっては大きなメリットになるでしょう。
優秀な人材の確保・定着
キャリアアップ助成金の活用は、優れた人材の確保・定着につなげる方法としても有効です。企業が非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に積極的であれば、社会的な印象はよくなると考えられます。さらに、明確な成果を出して助成金を受け取った場合、就活者には魅力的な職場と認識される可能性があります。社会的に企業イメージが向上すれば、労働力不足が深刻でも就職希望者は増え、優れた人材を確保しやすくなるでしょう。
また、非正規雇用労働者のキャリアアップを計画的に進めた際、職場への定着率は上がると期待できます。他にもキャリアアップ助成金は多くのメリットをもたらす可能性があり、非正規雇用労働者の正社員化などを進めるなら、おすすめの助成金制度と考えられます。
キャリアアップ助成金の注意点
キャリアアップ助成金は、受給までに時間がかかり申請後の訂正が認められない点などに注意が必要です。
受給までに時間がかかる
基本的にキャリアアップ助成金は、申請手続きの関係上、事業主へ支給されるまでに一定の時間を要します。まず、事業主がキャリアアップ計画を作成して管轄機関に認定されても、その計画にもとづき賃金6カ月分を支給しないと支給申請できません。加えて、申請書類を管轄労働局に提出しても、申請内容の審査に時間がかかります。
さらに、最終的な審査を通過しないと助成金は支給されないため、事業主がキャリアアップ計画を実施しても即座に支援を受けられない難点があります。
申請後の訂正は不可
キャリアアップ助成金の申請後に提出書類を訂正できないところも注意点のひとつです。厚生労働省の資料には、不正受給を防ぐため、事業主の都合による提出書類の差替えや訂正を認めない旨が記されています。原則として不可となっているため、慎重に書類作成してから提出することが求められています。資料の記載内容を見る限り、相応の事情がないと例外は認められないでしょう。
また、不正受給防止の観点から、必要があれば予告なく事業所の実地調査を行うなどの留意事項も示されています。そのため、キャリアアップ助成金を申請する際は、面倒に感じても適切に書類作成することが望ましいと考えられます。
厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版) (参照 2024-06)
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