「恐れ入りますが」は使っていい?意味と正しい使い分け
更新日:2026.02.27 / 公開日:2026.02.27ビジネス豆知識
「恐れ入りますが」は本当に正しい敬語なのか。「お手数ですが」「恐縮ですが」とどう違うのか。電話対応の場面で毎回なんとなく使ってしまっている方も多いのではないでしょうか。実は、これらの表現は“丁寧さの強さ”だけで選ぶものではありません。判断の基準は、相手の時間や手間をどれだけいただくのかという点にあります。本記事では、「恐れ入りますが」の意味と敬語レベルを整理したうえで、類義表現との違いを比較表でわかりやすく解説します。さらに、電話・メール・チャットそれぞれでの最適な使い分けと、すぐに使える例文もご紹介します。迷わず選べる実務的な判断軸をお届けします。
「恐れ入りますが」の意味

「恐れ入りますが」は、相手に何かを依頼したり、ひと手間をお願いしたりする前に添える前置き表現です。直訳すれば「申し訳なく思いますが」「ありがたく思いますが」という意味合いを持ち、相手に負担をかけることへの配慮を示す言葉です。
辞書的には、「相手の厚意や手間に対して申し訳なく思う気持ちを表す語」とされます。「恐れ入る」は、恐縮する・ありがたく思う・申し訳なく思う、といった感情を含んだ言い回しです。そこに接続助詞の「が」を付けることで、「申し訳ない気持ちはありますが、お願いがあります」という構造になります。
ビジネスの現場では、単なる謝罪とは異なり、「これから依頼をします」という合図として使われることが多い表現です。たとえば、「恐れ入りますが、ご確認をお願いいたします」「恐れ入りますが、担当部署へおつなぎいただけますでしょうか」といった形で用いられます。
重要なのは、この言葉が“丁寧さを強める飾り”ではないという点です。「恐れ入りますが」は、相手の時間や労力をいただく前提がある場合に使う表現です。つまり、「何かをしてもらう」場面で初めて意味を持ちます。単に情報を伝えるだけの場面や、相手に負担がほとんど発生しない場面で使うと、過剰に感じられることもあるかもしれません。そのため、「恐れ入りますが」は敬語レベルだけで判断するのではなく、依頼の重さや相手への負担度を基準に選ぶ言葉といえます。
言い換えと使い分け|「お手数ですが」「恐縮ですが」との違い

「恐れ入りますが」と似た表現に、「お手数ですが」「恐縮ですが」があります。いずれも依頼の前置きとして使われますが、ニュアンスは同じではありません。違いを理解せずに使うと、丁寧すぎたり、逆に軽く感じられたりすることがあります。ここでは、それぞれの意味の違いと、実務で迷わないための判断軸を整理します。
「お手数ですが」「恐縮ですが」との違い
「恐れ入りますが」は、相手の時間や注意を割いてもらうことへの配慮を示す表現です。電話対応など、その場で相手の時間を拘束する場合と相性がよい言い回しです。
「お手数ですが」は、相手に具体的な作業や行動を依頼する場面で使われます。書類の確認や入力作業、資料の送付など、手間が発生することが明確な場合に適している言葉です。「恐縮ですが」は、自分の立場を一段下げるニュアンスが強く、よりかしこまった印象を与えます。目上の相手や改まった文書で使われることが多い表現です。ただし、日常的な依頼で多用すると、やや硬い印象になることもあります。
つまり、これらは丁寧さの強弱というよりも、「何に対して配慮しているのか」が異なります。時間なのか、作業なのか、自分の立場なのか。その違いを基準に選ぶことが大切です。
どれを使うべきかで迷ったら

実務で迷った場合は、依頼内容を次の基準で整理すると判断しやすくなります。
- 相手の時間を一時的に拘束する依頼であれば、「恐れ入りますが」が適しています。たとえば電話口での確認依頼や、すぐに回答を求める場面などです。
- 相手に具体的な作業をお願いする場合は、「お手数ですが」が自然です。書類の修正やデータ入力、添付資料の確認など、手間が発生する依頼に向いています。
このように、「時間を奪うのか」「作業を頼むのか」という視点で選ぶと、迷いが少なくなります。
上司・取引先に使うならどれが無難か
上司や取引先に対して使う場合は、依頼の内容に応じて選ぶのが基本です。そのうえで、汎用性という観点でいえば、「恐れ入りますが」は比較的幅広く使える表現といえます。電話対応や口頭での依頼でも違和感が少なく、過度にかしこまりすぎないためです。より改まった文書や、とくに丁重に伝えたい場面では「恐縮ですが」が適します。一方で、明確な作業依頼であれば「お手数ですが」を選ぶ方が自然です。
結論としては、相手との関係性だけで決めるのではなく、依頼の性質を基準に選ぶことが重要です。それが、過不足のない敬語運用につながります。
電話・メールでの正しい使い方と例文

「恐れ入りますが」は便利な表現ですが、媒体によって“自然な置きどころ”が異なります。ここでは、一次対応や代表電話でも使える実践的な例文とともに、媒体別の最適解を紹介します。
電話での自然な切り出し方
電話では、相手の時間を今まさに使っている状態です。そのため、「恐れ入りますが」は非常に相性のよい表現です。ポイントは、“依頼の直前”に置くこと。前置きが長すぎると不自然になります。
- 担当者へ取り次ぐ前
「恐れ入りますが、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「恐れ入りますが、会社名とお名前を頂戴できますでしょうか。」
一次対応や代表電話でもそのまま使える汎用フレーズです。 - 確認をお願いする場合
「恐れ入りますが、今一度ご注文番号をお願いできますでしょうか。」
「恐れ入りますが、少々お待ちいただけますでしょうか。」 - 折り返しをお願いする場合
「恐れ入りますが、担当より折り返しご連絡差し上げてもよろしいでしょうか。」
電話では、「恐れ入りますが」+“短い依頼”が基本形です。説明が長くなる場合は、一度用件を簡潔に伝えてから使うと自然です。
メールで使う位置
メールでは、「恐れ入りますが」は主に本文の依頼部分で使います。冒頭あいさつで多用すると冗長になりやすいため注意が必要です。
- 本文で使う場合(最も一般的)
「恐れ入りますが、添付資料をご確認のうえ、ご返信いただけますと幸いです。」
「恐れ入りますが、〇日までにご回答をお願いできますでしょうか。」
依頼の直前に置くのが自然です。 - 冒頭で使う場合(クッションとして)
急ぎの依頼や、やや踏み込んだお願いをする場合に有効です。
「恐れ入りますが、下記の件につきましてご確認をお願いいたします。」
「恐れ入りますが、先日の件について再度ご連絡いたしました。」
ただし、通常の定型あいさつ(いつもお世話になっております など)の直後に毎回入れる必要はありません。
「恐れ入りますが」に関するよくある質問(FAQ)

「恐れ入りますが」は便利な表現である一方、「使いすぎではないか」「上司に使ってもよいのか」など、細かな疑問も生まれやすい言葉です。ここでは、実務でとくに多い質問に対して、迷わず判断できる基準とともにお答えします。
Q1.「恐れ入りますがよろしくお願いいたします。」は使っても大丈夫ですか?
A.依頼内容がすでに具体的に示されている場合であれば、「よろしくお願いいたします」と併用して問題ありません。
「恐れ入りますが」は依頼の前置き、「よろしくお願いいたします」は依頼の締めくくりです。そのため、間に“何をお願いしているのか”が明確に入っていれば、不自然にはなりません。
【使ってよい例】
・恐れ入りますが、資料をご確認のうえ、よろしくお願いいたします。
・恐れ入りますが、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
一方、「恐れ入りますがよろしくお願いいたします。」と依頼内容がないまま続けるのは不自然です。必ず具体的なお願いを挟みましょう。
Q2. ビジネスでの正しい言い換えは?
A.依頼の重さに応じて言い換えを選ぶのが適切です。
負担が比較的軽い作業であれば「お手数ですが」が自然です。より丁寧でやわらかい印象にしたい場合や、相手の状況に配慮を示したい場合は「差し支えなければ」が適しています。つまり、敬語の強さではなく、「どの程度の負担をお願いするのか」で選びましょう。
Q3. 上司に使って失礼ではありませんか?
A.失礼にはあたりません。むしろ、上司の時間を割いてもらう場面では適切な表現です。
「恐れ入りますが」は、自分の立場を下げつつ、相手の時間的負担に配慮する言い回しです。報告後の確認依頼や、判断を仰ぐ場面など、時間をいただく前提の依頼には自然に使えます。重要なのは多用しすぎないこと。必要な場面で使えば、丁寧で実務的な敬語表現として問題ありません。
まとめ
「恐れ入りますが」は、単に丁寧に聞こえる便利なクッション言葉ではありません。本来は、相手の時間や手間をいただくことへの配慮を示す表現です。だからこそ、使うかどうかの判断基準は敬語の強さではなく、どれだけ相手に負担が生じるかという点にあります。
電話では相手の時間を直接いただいているため、「恐れ入りますが」はとくに使いやすい表現です。一方、メールでは依頼文の直前に置くのが基本で、前置きとして多用しすぎると冗長になります。媒体ごとの特性を理解することも、自然な敬語運用には欠かせないものです。
敬語は「より丁寧な言葉を選べば正解」というものではありません。相手の負担に見合った言葉を選ぶことこそが、本当の意味でのビジネスマナーです。「恐れ入りますが」を使うか迷ったときは、今自分は相手の何をいただこうとしているのかを考えてみてください。
【関連記事はこちら】>>【シーン別例文付き】電話対応の敬語使い方完全ガイド
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