新時代の働き方|パラレルワークと副業の違い
更新日:2022.11.09ビジネス豆知識新型コロナ感染拡大の影響で、ひとつの企業のみに依存して生きていくことに危機感を抱く人が増えているといいます。終身雇用の終焉も相まって、入社した企業に定年まで働くという考え方は当たり前ではなくなってきています。そんななか、新時代の働き方として「パラレルワーク」という言葉に注目が集まっているのはご存じでしょうか。今回は、パラレルワークの概要や副業などとの違い、メリット・デメリットについてご紹介します。
目次
パラレルワークとは?
パラレルワークは、オーストリア人経営学者でマネジメントの発明者である、ピーター・ドラッガー氏によって提唱された言葉です。ドラッガー氏は自身の著書「明日を支配するもの」のなかで、組織よりも人間のほうが長命になったいま、人は組織とは別に第2の人生を始める必要があると説いています。
パラレル(parallel)は、英語で平行や並列を意味する言葉です。パラレルワークとは、余暇時間などを利用して同時並行で本業とは別の仕事を持つことや、キャリアを築いていくことを指します。
たとえば、本業の仕事をしながらイラストレーターとして活動していたり、平日は会社に勤めながら休日はボランティア活動を行ったりすることです。パラレルワークは、必ずしも営利目的の仕事である必要はありません。自分の自己実現やキャリア構築を重視した活動を指すため、非営利活動や研究、創作活動などもパラレルワークに含まれます。
パラレルワークと副業の違い
パラレルワークと混同されやすい仕事の形態として、「副業」や「兼業」などがあります。副業もパラレルワークと同様、本業と別の仕事を持つことを指します。しかし、ひとつ異なるのが、副業は営利目的で行うという点です。本業の収入を補うことを目的として行っている人が多く、Wワークとも呼ばれます。
一方兼業は、本業以外に別の事業を行うことを指します。仕事にメイン・サブといった線引きはなく、どの仕事も同じ熱量で行うのが特徴です。メインの仕事とサブの仕事と、しっかり線引きのある副業と比べると、パラレルワークに近い意味合いを持つ言葉といえるでしょう。
従来、日本企業の多くは副業や兼業を禁止する傾向がありました。しかし2018年1月、厚生労働省はモデル就業規則内の「許可なくほかの会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除。働き方改革の一環として、パラレルワークや副業、兼業などの多様な働き方を推奨する流れに変わってきているのです。
パラレルワークが注目を集める背景
新型コロナの感染拡大をきっかけに、パラレルワークに注目し始めた方も多いようです。しかし、パラレルワークという働き方は、それ以前から、今後さらに浸透していくだろうと考えられていました。
企業寿命の短命化
パラレルワークが注目を集めている理由のひとつに、企業寿命の短命化があります。現状、定年までいま務めている企業が倒産しない保証はどこにもありません。急な倒産やリストラで、再就職を余儀なくされる可能性は高まりつつあるといえます。また、終身雇用や年功序列といった従来の日本の雇用モデルの終焉なども相まって、将来への不安や危機感からパラレルワークを目指す人も多いようです。
ワークスタイルの多様化
新型コロナが猛威を振るう以前から、テレワークやリモートワークなどの出社を伴わない働き方を促進する動きは多分野で進められていました。Web会議やオンラインミーティングのためのツール開発や5Gの本格的普及など、今後ますますワークスタイルは多様化すると考えられます。また、テレワーク化が進んだ影響で、副業にチャレンジしやすい環境になったこともパラレルワークが注目を集める理由のひとつでしょう。
価値観の多様化
人類の長寿化により、従来の仕事を中心とした人生観が当たり前ではなくなってきています。労働者の多くが、それぞれのワークライフバランスの実現や私生活の充実に目を向け始めたという点も大きく関係しているでしょう。本業以外に収入源やキャリアを持つことは、今後の人生において保険的な役割を持ったり、キャリアアップにつながったりします。
パラレルワークのメリット
パラレルワークは副業と違い、報酬にとらわれず複数の仕事やキャリアを持つことを指します。では、パラレルワークにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
収入源ゼロのリスク回避
パラレルワークで複数のビジネスを行っている場合は、ひとつのビジネスで収入が途絶えてしまったとしても、突然収入がゼロになってしまうということはありません。たとえ営利目的でないことを行っていたとしても、そこで形成したキャリアや人脈を利用してすぐに新しい仕事や事業を開始できるでしょう。パラレルワークではさまざまなことにチャレンジできるため、自分の得手不得手が明確になってきます。得意分野を仕事にすれば、より短い時間で成果を上げられるようになるでしょう。
スキルアップ
生活のための収入は確保したうえで、新しい自分の可能性にチャレンジできることは大きなメリットといえるでしょう。パラレルワークならさまざまな業種や職業に挑戦できるため、いまの仕事ではできないような経験を積むことが可能です。自分自身がスキルアップすれば、さらに挑戦できる業務や職業の幅が広がります。自分の人生にとって何が必要か、何が大切かを考えながら、自分らしい働き方を模索してみましょう。
人脈・視野が広がる
さまざまなことにチャレンジするということは、それだけ自分の視野が広がり、出会う人も増えるということです。業種や職種が変われば、出会ったことのないタイプの人に出会えたり、気づくことのできなかった価値観に触れ合えたりする機会も増えるでしょう。このような新たな人脈や経験は、さらなるビジネスチャンスや利益につながる可能性もあります。
パラレルワークのデメリット
パラレルワークを行うにあたり、注意しておきたいデメリットについてご紹介します。自分のために始めたことが、知らず知らずのうちに自分の首をしめてしまっていたということにならないよう、計画的にチャレンジしましょう。
生活や身体に支障が出る恐れがある
パラレルワークではすべてを本業と捉え、同じ熱量で行います。そのため、労働時間が長時間化してしまいやすく、生活を圧迫してしまったり、身体に支障が出てしまったりする可能性があります。ワークライフバランスの実現のために、仕事の受注量やスケジュールなどを、自分自身で調整する必要があるといえるでしょう。
勤務先の就業規則厳守
パラレルワークを始める前に、勤務先の就業規則をしっかりチェックしましょう。パラレルワークは副業とは異なる点が多々ありますが、就業規則上では副業扱いになります。勤務先で副業が禁止されている場合は、パラレルワークを行うことはできません。勤務先で副業が認められているか、副業を始める条件はあるのか、などを確認してから始めるようにしましょう。
福利厚生等の低減の可能性
働き方によっては、雇用保険などの福利厚生が低減してしまう可能性があるため注意が必要です。たとえば、複数の企業で仕事を掛け持ちして、どちらも週の勤務時間が20時間に満たなかった場合、雇用保険加入対象外になってしまいます。さらに、年次有給休暇の付与日数は、週の勤務日数に準ずることも忘れないようにしましょう。
まとめ
新時代の働き方として注目を集める、「パラレルワーク」についてご紹介しました。少子化などの影響で、これからますますパラレルワークの深化は世界中で広がっていくと予想されます。それに伴い、パラレルワークへの理解は進み、公的サービスの体制なども徐々に整っていくかもしれません。予測不可能な未来に対応するために、パラレルワークをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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