エンハンシング効果を引き出す正しい褒め方とは?具体的な方法や注意点についても解説

更新日:2023.03.07ビジネス豆知識

エンハンシング効果を引き出す正しい褒め方とは

社員のモチベーションや業務効率をアップさせるために効果的とされる方法は多数あります。その中のひとつが「エンハンシング効果」です。エンハンシング効果を引き出すために正しい褒め方をすると、褒められた人のモチベーションやパフォーマンスをアップできます。本記事では、エンハンシング効果の意味や、エンハンシング効果を引き出す正しい褒め方、注意点などを解説します

「エンハンシング効果」とは

「エンハンシング効果」とは

エンハンシング効果の「エンハンシング」は、英語の「enhancing=高める」を意味する言葉です。エンハンシング効果とは外発的動機付けで内発的動機付けをアップさせ、モチベーションやパフォーマンスを上げる効果のことを指します

エンハンシング効果を引き出すための正しい方法を知っていると、さまざまなシーンで活用できます。部下や子どものやる気をアップさせるのに効果的とされており、例えば「部下のモチベーションを上げたいけれど、最適な指導方法がわからない」と悩む人にもおすすめです。

内発的動機付けと外発的動機付けの違い

エンハンシング効果を引き出すためには、まず「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の違いを把握しておくことが大切です。まずはそれぞれの違いを確認しておきましょう。

内発的動機付け

内発的動機付けとは、本人の内面からやる気や楽しさを引き出すための方法のことです。「やりたいからやる」「楽しいからやる」など、何らかの報酬を得られなくても本人がやりたいと思うような動機を与えます

例えば子どもが忙しそうな母親を見て「お母さんの役に立ちたい」という気持ちが自然と沸き上がり、お手伝いをすることも内発的動機付けです。社会人が希望していた部署に配属されたことで「やりたかったことができる」「やりがいがある」と感じ、モチベーションがアップすることも内発的動機付けのひとつです。

内発的動機付けとなる事柄は個人によって異なります。社員の内発的動機付けをするにはコミュニケーションを取り、どのような方法が有効かを見極めることがポイントです。

外発的動機付け

外発的動機付けとは外部から影響を与えて、行動する気持ちを沸き起こさせる方法のことです。報酬や評価を与えて「もっとがんばりたい」という気持ちを引き出します。外発的動機付けは、本人のやる気がそれほど高くない場合でも効果が期待できる可能性があります。

例えば仕事で「契約先が増えるほど報酬がアップするからがんばる」「上司から褒められてうれしい、もっと評価されたいからがんばる」といった行動が、外発的動機付けです。「報酬を与える」「褒める」などの外発的動機付けをうまく行うことで内発的動機付けにつながり、エンハンシング効果を引き出せます。

なお罰則があったり怒られたり、自分にとって不利益となる結果を避けるための行動も外発的動機付けのひとつです。

ビジネスでエンハンシング効果を引き出す正しい褒め方

ビジネスでエンハンシング効果を引き出す正しい褒め方

「褒めて伸ばす」という言葉があるように、正しく褒めることでエンハンシング効果を引き出せます。ここでは、ビジネスでエンハンシング効果を引き出すために意識したい3つのポイントを解説します。

プロセスを評価する

相手を褒めたり評価したりするとエンハンシング効果が引き出しやすくなりますが、能力や結果だけでなくプロセスにも注目しましょう。

契約件数を大幅にアップさせた社員に「こんなに契約数を増やせるなんてすごいね」と褒めたとします。すると褒められてうれしい反面「逆に契約が取れなかったら叱られるかも」と不安になったり、「あんなに努力したのに結果がすべてなのか」と素直に喜べなかったりする可能性があります。

そこで「一生懸命プレゼン資料を作っていたから結果が出たね。契約数が増えたのはがんばった結果だね」と、プロセスも評価するのがおすすめです。褒められた社員は「努力しているところも評価してもらえた」「頑張ったかいがあった」など、喜びや達成感、満足感がより高まるからです。

人前で褒める

子どもの頃に大勢の前で叱られて自尊心が傷付き、辛い思いをしたことのある人もいるのではないでしょうか。それとは逆に、人前で褒められると自尊心が満たされ喜びも大きくなります。

エンハンシング効果を引き出すには、朝礼などの社員が多く集まるタイミングで「〇〇さんが毎日寝る間も惜しんで取り組んでくれたおかげでプロジェクトが成功しました」など、人前で褒めることもポイントです。定期的に優秀な社員を表彰する機会を設けるのもよいでしょう。

またその場にいた他の社員も「自分も見習ってがんばらないと」「次は自分が褒められるようにがんばろう」と、外発的動機付けにつながる可能性もあります。社員に評価されるポイントを示すことにもつながります。

感情を表現して褒める

感情を表現して褒めるのも効果的です。表情や声のトーン、言葉の抑揚、仕草などで感情を表現しましょう。言葉で「がんばったね」「努力したからだね」と伝えるのは簡単ですが、気持ちが込められていなければ「形だけ」ととらえられてしまう可能性があるからです。

褒められる立場になった場合、相手が言葉の抑揚もなく真顔で「がんばったね」と言われたら「本当に褒められているのだろうか」と疑問に感じるのではないでしょうか。笑顔で言葉の抑揚や仕草を交えながら褒めると、褒められた側は「本当に喜んでくれているから素直に受け止めていいのだな」と感じられます。

ただし表現が大げさになりすぎると「何かあるのかな」と思われてしまう可能性があるため、自然な気持ちを伝えましょう。

エンハンシング効果の注意点

すでに内発的動機付けが済んでいる人に、エンハンシング効果を引き出すための外発的動機付けを行うと「アンダーマイニング効果」が表れる可能性があるため注意が必要です。アンダーマイニング効果とは、報酬や評価などの外発的動機付けによってモチベーションが下がってしまう効果のことです。日本では「抑制効果」や「適正当化効果」と呼ばれることもあります。

例えば「役に立ちたいから」という理由で積極的にお手伝いをしていた子どもに、ご褒美としてお手伝いをするたびにおこづかいを渡すようになったとします。すると子どもはいつのまにか「役に立ちたいから」ではなく「おこづかいをもらうために」お手伝いをするようになります。さらに「おこづかいがもらえないならお手伝いをしたくない」と考えるようになるケースがあります。これがアンダーマイニング効果です。

なお内発的動機付けが済んでいる人のモチベーションを維持するには、目標や締め切りを設定したり、指示・命令・監視をしたりしないほうがよいと言われています。

エンハンシング効果を確認した実験事例

クラウディア・ミューラー氏とキャロル・デュエック氏がコロンビア大学で行ったエンハンシング効果を確認した実験があります。約400人の子どもを対象にIQテストを実施し、子どもたちを3つのグループに分け、本当の点数は伏せて80点以上だったと教えました。この時グループごとに「結果を褒める」「努力を褒める」「何も言わない」という対応をします。

その後「難易度の高い課題」と「簡単な問題」を選択してもらいます。実験の結果、結果を褒めたグループでは35%、努力を褒めたグループでは90%、何も言わないグループでは55%が難易度の高い課題を選択しました。

また発達心理学者のエリザベス・B・ハーロック氏は3つのグループに分けた小学生に5回算数のテストを実施しました。答案を返すたびにグループごとに「できた部分を褒める」「できなかった部分を叱る」「何も言わない」という対応をします。

するとできた部分を褒められたグループで71%の成績が上がり、できなかった部分を叱られたグループは20%が2日目に成績を上げたものの次第に下がっていきました。何も言わないグループの場合は、5%が2日目に成績を上げたものの、その後の変化はありませんでした。

この実験から、「褒めて伸ばす方法が効果的であることがわかります

社内マネジメントにはエンハンシング効果を活用しよう

エンハンシング効果とは外発的動機付けにより内発的動機付けをアップさせてモチベーションやパフォーマンスを上げる効果のことです。エンハンシング効果は社内マネジメントに活用すると効果的です。エンハンシング効果を引き出すには、結果や能力だけを褒めるのではなく「プロセスを評価する」「人前で褒める」「感情を表現する」ことがポイントです。正しい褒め方と注意点を意識して、社員のモチベーションやパフォーマンスをアップさせましょう。

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