シニアの士業独立はあり?老後を専門資格で生き抜く
更新日:2023.03.31ビジネス豆知識働き方改革・少子高齢化などが進む中で、定年退職者(シニア世代)になっても働き続ける人が増えています。そして、手に職をつけるために専門資格、特に士業にチャレンジする人も少なくありません。今回は、シニア世代が士業にチャレンジし、老後を専門資格で生き抜くために必要なことや、そのメリットなどをご紹介します。
目次
士業試験の受験者年齢
士業に定年はありません。資格を取得してしまえば、自分が納得できるまで働き続けられます。シニア世代の中には「今さら士業にチャレンジしても遅いのではないか」と思う人もいるでしょうが、そんなことはありません。実際にシニア世代で士業試験にチャレンジしている人がどれくらいいるのか、代表的な資格を例に確認してみましょう。
税理士
税理士は、士業の中でもシニア世代の参入が進む資格として知られています。日本税理士会連合会が平成26年に公表したデータでは、20代が0.6%、30代が10.3%しかいないのに対して、60代は30.1%にも上ります。70代・80代もそれぞれ13.3%・10.4%います。
税理士試験の受験者の年齢層を確認すると、平成29年の試験では、総受験者数が32,974人なのに対して、41歳以上が11,320となっています。およそ3分の1が41歳以上ということになります。25歳以下は3,960人ほど。社会である程度揉まれた人が税理士試験にチャレンジしている実態が分かります。
弁護士
弁護士・裁判官・検察官になるための司法試験。受験者の具体的な年齢は公表されていませんが、平成29・30年の試験では、合格者の平均年齢が28.8歳でした。ほかの士業と比べても若手の活躍が目立つイメージかもしれませんが、平成30年の試験では68歳の方が合格するなど、シニア層にも活躍の場があります。
ちなみに、司法試験予備試験が導入されたことで、大学院を卒業していない方でもチャレンジできるようになりました。
司法書士
登記のプロである司法書士。平成29年の合格者の年齢層を確認してみると、1番多いのが30代の272人。次に多いのが40代の183人です。50代・60代・70代を合わせると、78人が合格。これは20代の96人に迫る数です。
司法書士試験には受験資格がありません。通信講座なども豊富にあるため、ある程度高齢の方でも資格を取りやすいという特徴があります。
行政書士
行政書士は、行政関係の書類作成のプロです。平成30年の試験では、総受験者数39,105人に対して、40歳以上が22,551人と半数以上に上りました。60歳以上に絞っても4,000人を超えており、シニア世代が多く参入している士業といえます。
定年までに資格を取得するメリット
定年後に士業として独立を考えているなら、40・50代のうちに資格を取得しておくことをおすすめします。それは、以下のようなメリットがあるからです。
定年後の生活に不安を覚えなくて済む
年金問題など、最近は何かと老後のお金に関する話題が取りざたされています。その結果、定年後の生活に不安を覚えている人もいるでしょう。40・50代のうちに資格を取得しておくことで、定年後の働き口を確保でき、定年後の生活の不安、特にお金に関する不安を減らせます。
「人生100年時代」を生き抜く武器となる
少子高齢化社会の日本では、60歳を過ぎても現役で働く人が増えています。今後平均寿命は延び、「人生100年」が当たり前になる時代が来るかもしれません。専門資格は、健康寿命が延びた時代を生き抜くための大きな武器となります。
シニア士業ならではの強み
シニア士業には、若い人にはない強みがいくつかあります。
豊富な人生経験
士業の多くは、依頼者が抱えている問題を解決するのが使命ですが、その解決方法は多岐にわたります。たとえば、弁護士であれば裁判を起こして解決するだけが方法ではなく、相手方との話し合いで解決することも少なくありません。
そんな時に役立つのが、シニア世代の豊富な人生経験です。困っている依頼者に的確な解決方法を提示し、今後の生活に対する助言もできるのはシニア士業の大きな強みです。
豊富な人脈
依頼の中には、自分だけで解決できないものもあります。時には、他業種の人を紹介しなければならないこともあるでしょう。シニア世代ならではの豊富な人脈を活用すれば、スムーズに依頼者を紹介できます。たとえば、司法書士や行政書士で解決できない問題は、つながりのある弁護士を紹介するなどして問題の解決を図る、といった具合です。そのためにも、一定のコミュニティに属し、事前に人脈を作っておくことが大切です。
顧客を事前に確保できる
士業において、もっとも苦労するのが顧客の確保です。特に若い人は、社会人経験が浅く、人的ネットワークも希薄なところがあるため、一から顧客探しを迫られるかもしれません。一方、シニア世代は社会人時代の人脈を生かして、独立当初から顧客がいることも少なくありません。顧客を確保できれば、事務所運営も安定します。定年退職前に「定年後は税理士事務所を開く予定なので、何かあったらご相談ください」とアピールしておくとよいでしょう。
シニアの士業独立を成功させるために
最後に、シニア世代が士業独立を成功させるために必要なことをご紹介します。
借金をしない
シニア世代が士業独立をする際に、もっともしてはいけないことは借金です。シニア世代になるとお金を借りにくいというのもありますが、利子の返済なども含め、負担が大きくなってしまうからです。士業だからといっていきなり大きな事務所を構える必要はありません。今までの自宅を活用できるなら、それが1番です。もし、自宅とは別に事務所を構えたいという場合でも、今までの貯金や退職金で賄うようにしましょう。ただし、貯金や退職金を使う場合は、家族の理解が必要不可欠な点を忘れてはいけません。
法人化は事業が軌道に乗ってから
士業の経営には2通りの方法があります。ひとつは、個人事業主として活動する方法。もうひとつは、事業を法人化して、その代表者として活動する方法です。最初は、個人事業主として活動するのがおすすめです。法人化するには、手続きも複雑で、初期費用もかかります。個人事業主であれば届け出をするだけなので、定年退職後すぐに活動を開始できるからです。
ただし、依頼の中には法人化していることが条件のものや、法人化することで社会的な信用を得られる場面もあります。そのため、個人事業主として軌道に乗ってから、事業拡大の意味も込めて法人化を検討するのは効果的です。
新しい知識を身につける
士業として独立すると、今までのノウハウや経験だけでは対応できないことが必ず出てきます。その際に、自分の考えに固執せず、新しい知識を積極的に学べるかどうかは大切な視点です。幅広い分野から知識を吸収することで、他事務所との差別化も図れるでしょう。
社会情勢が変化したことで、定年後のライフプランをしっかりと考えなければならない時代となりました。試験を受け、資格を取得しなければならないことから、シニア世代の士業独立は難しいと考えられがちです。しかし、若い人にはない経験や視点を持っているシニア世代だからこそ、必要とされる場面もあるのではないでしょうか。
そのためにも、自分の経験が生かせる士業はどれなのか、事前に確認しておく必要があるでしょう。準備にかけた時間が長いほど、老後のライフプランも盤石なものとなります。
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