一級建築士の仕事はAIに取られてしまう?

更新日:2023.03.24スタッフブログ

設計図

AIの台頭によって私たちの生活が便利になるとともに、数多くの仕事がAIに奪われるともいわれています。そして、AIの波は建設業界にも訪れ始めています。一級建築士の様な、建築の最前線で活躍するプロでもAIに取って代わられるのでしょうか。今回は、一級建築士の仕事内容とAIにできることを紹介したうえで、今後見込まれる建設業界におけるAIの活用法も考えていきます

一級建築士の仕事内容とは?

一級建築士は、国土交通大臣より与えられる建築士の中でも最上位の資格です。都道府県知事が免許を交付する二級建築士や木造建築士とは性質が大きく異なります。具体的な仕事内容は、家の「設計業務」と設計後の「工事管理業務」に分かれます。設計業務では、見た目のデザイン性から家の安全性や骨組みの設計まで、細やかな気配りが必要です。工事管理業務では、建設業者による工事が図面どおり行われているか、責任者として管理監督を行います。
上記のふたつの業務は二級建築士にも課されていますが、一級建築士は扱う建物の大きさに限りがないため、設計業務や工事管理業務の規模も大きくなります。学校・病院・百貨店などの大型施設は、一級建築士でなければ設計できません。

実際の仕事の流れ

一級建築士の実際の仕事は、お客様からの依頼を受けることでスタートします。「こんな建物にしてほしい」「デザインはこうしたい」というお客様の気持ちを聞いたうえで実際に設計を行います。設計図といえば、方眼紙に定規とペンでつくるイメージが強いかもしれませんが、今はCADという設計ソフト使って図面を描くことがほとんどです。

作成した図面をもとにお客様とのすり合わせを行い、納得してもらえたところで実際の施工に移ります。一級建築士が自ら施工するわけではありませんが、前述のとおり現場の責任者として図面どおり工事が行われているか管理監督する必要があります。工事がすべて終了したら、完成した建物をお客様に引き渡し一級建築士の仕事は完了です。この際、工事に不備がないかお客様立ち会いのもと、確認が行われます。

AIにできることとは?

「技術的特異点」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。コンピューターや人工知能(AI)の能力が、私たち全人類の知能を合わせたものと同等になる時期のことを指します。そして、2045年にこの技術的特異点を迎えるという著名な学者の予想も発表されています。つまり、近い将来AIの能力が私たちを超えることは確実視されているのです。ただ、現状のAIは決して万能ではなく、得意・不得意がはっきり分かれています。例えば、データに基づいて演算を行い処理すること、異なるデータから共通点を見つけまとめること、などはAIが得意とする単純作業です。

反対に、新しいものを生み出す「0から1を創造する」作業や、物事の意味や人の気持ちを考えて問題を解決すること、などはAIが苦手としている分野です。
現状でも、AIが得意とする単純作業に近い仕事は、徐々にAIが人に代わって活躍し始めています。一方、苦手とする分野にAIが進出するにはまだ時間がかかるといわれており、いきなり人が不要になる事態にはならないでしょう。

建設業界のAI活用事例

建設業界は、依頼者の希望やイメージをくみ取り、それを建物の形で表現します。クリエイティブな要素が強く、上述の様に人工知能が得意とはいえない分野の仕事です。そのため、今すぐ一級建築士がAIに取って代わられることはないでしょう。
ただ、大手メーカーでは業務の効率化や生産性の向上を目的として、AIの導入が徐々に実施されています。そこで次は、建設業界のAIの活用事例を確認します。

無人施工システム

建設機械の自律走行システムと、作業員との接触を防止する検知システムです。建設機械にセンサーやGPSを搭載することで可能にします。人員の削減ができるため、施工の人件費を抑えられます。
最終的には、AIに熟練作業員の操作を学習させ、無人での施工を目標にしている様です。導入されれば建設業界に革命が起きるかもしれません。

路面調査システム

道路の凹凸やひび割れなどの不具合をAIが検出するシステムです。目視では見落としがちな欠陥まで発見できるので、交通事故の危険性を減らすことが期待されています。AIが学習しつつ作業にあたるため、前例のない不具合も検知できるというメリットがあります。

入居者への運動提案

マンションの共有スペースや施設などに設けられたセンサーにAIを埋め込み、入居者の運動記録や健康状態を管理するシステムです。個人の所有するスマートフォンやタブレットに各々のデータが届き、生活習慣の改善に活かせます。
将来的には、「住むだけで健康になるマンション」という謳い文句が私たちの目に留まるかもしれません。

建設工程の管理

現場写真や残りの資材の量などから工程の進み具合を確認し、建設工程の管理をするシステムです。
建設工程は、品質維持や安全管理の視点からも欠かすことができないもので、今までは技術者が現場を自分で確認して行っていました。それをAIで行うことで、より効率的に建設工程の管理ができます。

構造の劣化診断

インフラ構造物、特に高速道路の劣化診断をAIで支援するシステムです。表面上は無事な構造物でも、地震や台風などの災害を受けた場合にどの様な被害ができるのかまで想定して診断されます。

今後実用化が見込まれるAIの活用法

建設業界にもAI活用の波が到来しています。そこで次は、今後実用化が見込まれるAIの活用法をご紹介します。

無人施工

もっとも期待されているのは、AIによる無人施工です。機械の移動や資材の移動だけでなく、施工業務までAIだけで行えば、人件費の削減以外にも施工中の事故防止にもつながります。実際にはタブレットや携帯端末でAIに指示を出す方が必要ですが、限りなく少ない人数で施工が可能です。

トンネルのシールド工事計画支援システム

地下鉄・水道・道路などのために行うトンネル工事のことを「シールド工事」と呼びます。従来のシールド工事は、三角関数を用いて最適な工事ルートを算出し、掘進作業を進めていました。こうした計算はAIの得意分野であり、AIに任せることで瞬時に最適解を導くことが可能です。

AIによる構造設計

AIによる構造設計も近い将来実現するといわれています。構造設計は一級建築士の業務のひとつで、安全性・デザイン性・機能性など、多角的な視点から建物の構造を決定する作業です。AI活躍の場となっている将棋と建物の構造設計が近いことから話題となったシステムで、現在開発が進められています。AIによる構造設計が可能になった場合、建築士の仕事の一部がAIに取って代わられるかもしれません。

お客様へのインテリアの提案

AIがデータを集積しお客様の好みに合わせた提案を行える様になれば、単なる建築にとどまらずインテリアの提案もできるかもしれません。外観だけでなく内観も含めてお客様の理想に近づけば、より満足度の高い家になるでしょう。

人の力が必要な部分はまだまだ多い

AIの発達によって私たちの生活はさらに豊かになります。その反面、AIによって奪われる職業も少しずつ増えていくでしょう。技術的特異点を迎える日も遠くないのかもしれません。しかし、現状のAIは完璧ではありません。人類の持つクリエイティブな思考や柔軟な発想はAIに勝っており、人の力が必要とされる場面はまだまだあるはずです。

これは建築の現場においても同様です。一級建築士の仕事が今すぐAIに取って代わられることはなく、今まで培ったプロの知識や経験は、今後も素敵な建築物を生み出すでしょう。

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