リカレント教育とは?企業向け支援制度について解説
更新日:2024.07.22ビジネス豆知識リカレント教育は、社会に出てから再び学習活動に取り組む行為です。昨今は、デジタル技術の進歩もあり多くの企業がDXの導入を進めています。従業員は最新技術に対応するための能力向上が欠かせなくなってきました。ただし、企業が人材育成するにはお金や時間がかかり、簡単には実践できないとの声が少なくありません。このような悩みがある場合、各種の支援制度を活用すると問題解決に役立つでしょう。そこで今回は、リカレント教育の概要やビジネスの場で必要な理由を解説し、企業が取り入れるメリットや企業向けの支援制度をご紹介します。
目次
リカレント教育とは
リカレント教育は、簡単に表現すると、社会人による学び直しです。最近は、時代の変化が激しい状況もあり、仕事関係の能力を磨き続ける姿勢の重要性が増しているといわれています。
リカレント教育の概要
厚生労働省などが示した公的な見解によると、リカレント教育は、すでに学校教育を離れた社会人が再び学習活動に取り組むことです。そもそもリカレント:recurrentは、「再発する・頻発する」や「周期的に起こる」の意味をもち、何度も繰り返される様子を表した言葉です。この表現が教育方面やビジネスの場でも用いられ、社会人の学び直しを指すようになりました。
具体的な学習方法は、就職後に会社を辞めて留学する、あるいは仕事を休まず業務関係の専門知識・スキルを学ぶといったスタイルです。これらの方法により、語学力の向上や専門的な資格の取得を目指すケースが知られています。また、行政機関はリカレント教育による労働者の能力向上を重要と認識し、さまざまな支援策を提供しています。
厚生労働省 リカレント教育 (参照 2024-06)
政府広報オンライン 「学び」に遅すぎはない!社会人の学び直し「リカレント教育」 (参照 2024-06)
リスキリング、生涯学習との違い
リカレント教育とリスキリング・生涯学習との違いは、学習活動の主体者や学習する目的の差です。一般的に、リカレント教育の主体者は、会社などで働く社会人です。また、主な目的は仕事面の能力向上であり、多くの学習者は自分の業務で必要になる知識・スキルのレベルアップを目指しています。
それに対し、リスキリングは業務スキルを再教育する意味でリカレント教育と似ていますが、学習活動を進める主体者は企業と説明されています。
さらに、生涯学習の主体者は社会人にとどまらず広範囲に及び、人生を豊かにすることが主目的です。以上のような違いから、リカレント教育とリスキリング・生涯学習は、厳密な意味で区別されています。
リカレント教育の普及率
日本におけるリカレント教育の普及率は、世界の主要な国・地域に比べて低いといわれている状況です。パーソナル総合研究所が2022年に実施した調査によると、日本は、社外の学習活動や自己研鑽を「とくに何も行っていない」との回答が5割を超えました。
一方、調査対象となった18カ国・地域の結果は、同じ回答の全体平均が18%にとどまっています。回答割合の内訳を示すと、日本の52.6%が最高であり、後はオーストラリア28.6%・スウェーデン28.1%・イギリス24.1%と続きました。
以上の結果をふまえ、まだ日本ではリカレント教育に対する意識が弱く、制度の整備が十分に進んでいないと指摘されています。また、このような現状が、リカレント教育の普及率の低さにつながっていると見られています。
パーソナル総合研究所 グローバル就業実態・成長意識調査(2022年) (参照 2024-06)
リカレント教育が必要な理由
日本でリカレント教育が必要な理由は、DX関連の人材育成や人生100年時代への対応が求められているためでしょう。
DX人材育成を推進するため
DX人材育成の推進が急がれている状況は、国内でリカレント教育の必要性が高まっている大きな理由です。最近は人手不足を補う必要から、さまざまな作業のデジタル化による業務の効率化が急務になってきています。
とはいえ、ITやAIの技術が著しく進歩する一方で、DX人材は十分に育っていないとの声が少なくありません。ビジネスの場では、急速な技術進歩に取り残されないために新たな知識・スキルの習得が欠かせなくなってきました。従来のノウハウが通用しない場合もあり、業務経験に関係なく、多くの社会人は能力向上を求められ始めています。幅広い業務のDX化を実現するうえで人材育成の重要性は増し、社会人が自主的に学習するリカレント教育の注目度も上がっています。
人生100年時代への対応
人生100年時代に対応する必要が出てきたことも、リカレント教育の需要が高まっている理由のひとつです。現代は医療技術の進歩や衛生環境の改善もあり、以前に比べて国内の平均寿命は長くなりました。また、定年後も仕事や趣味に励むケースが多くなり、人生100年時代といわれています。
ただし、定年退職してから働き続けたいと考えても、新しい技術に関する知識やスキルがなければ再就職は難しいと見られています。昨今は労働力不足といっても、長く働いていくとなれば、能力向上は怠れないでしょう。そのため、人生100年時代に対応するうえでも、リカレント教育に取り組む姿勢は必要と指摘されています。
企業がリカレント教育を取り入れるメリット
企業がリカレント教育を取り入れるメリットは、従業員の能力アップやDX化の促進につながり人材の定着率向上に役立つところなどです。
従業員の能力アップ
従業員の能力アップが見込まれる点は、リカレント教育が企業にもたらす代表的なメリットです。社内の従業員がリカレント教育を通じて新しい専門知識やビジネススキルを身につけた場合、仕事の能力は高まると考えられます。レベルアップした能力が業務に活かされれば、作業効率が向上するでしょう。さまざまな社内業務を効率よく進められた時は、これまで以上に多くの成果を出せる可能性があります。結果的に職場の生産性が向上し、売上が伸びれば、企業にとっては大きなメリットです。
DX化の促進
リカレント教育は、社内業務のDX化をスムーズに進める方法としても有用です。従業員は、リカレント教育に取り組むなかで、DXの知識やスキルを学習する場合があります。その際、DX関係の最新情報を習得すれば、業務をデジタル化する時に活用できると考えられます。正しい知識・スキルで各業務のデジタル化が進められた場合、社内全体のDX化は速やかに実現できるでしょう。さまざまなシステムが素早くDX化されれば、企業は多大なメリットを得られると期待できます。
人材の定着率向上
人材の定着率向上につながるところも、リカレント教育に見込まれるメリットのひとつです。従業員は、リカレント教育で仕事の能力が磨かれた場合、同じ業務を処理する時でも以前より作業が楽になると考えられます。結果的に業務負担が減れば、それだけでも離職率は下がるかもしれません。
また、企業がリカレント教育を後押しすると、従業員は勤務先への愛着心や信頼感を強める可能性があります。その場合も、就労環境は快適に感じられ、従業員の定着率は向上するでしょう。このように、企業がリカレント教育を導入すれば従業員の能力向上などに役立ち、さまざまなメリットがもたらされると期待できます。
企業向けリカレント教育支援制度まとめ
公的機関が企業向けに提供するリカレント教育支援制度は、人材開発支援助成金・生産性向上支援訓練・企業内のキャリアコンサルティングが代表的です。これらの施策は、厚生労働省が中心となって推進しています。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、事業主が職務関連の訓練につながる取組みを実施すると活用できる支援制度です。この制度は、厚生労働省が進める人材開発施策の一環であり、企業が行う人材育成の支援を目的としています。特定訓練コースや一般訓練コースがあり、適用対象は事業主・事業主団体等です。実際に適用されるケースとしては、事業主が従業員に職務上の訓練を実施した時や従業員向けに教育訓練休暇制度を導入した場合が挙げられます。具体的には、訓練にかかった経費や訓練中の給与の一部について支援を受けられます。
生産性向上支援訓練
生産性向上支援訓練は、事業主の意向をふまえ、講義形式や演習スタイルの訓練が実施される仕組みです。この支援訓練は、在職者訓練のうち公共訓練施設における中小企業等の訓練支援として行われています。支援対象は中小企業等であり、専門的な知識・ノウハウのある民間機関等が行政から委託を受けて実施する方式です。実際に従業員が訓練を受ける時は、各企業の課題に合わせて支援プログラムをカスタマイズできます。
また、全国の公共職業能力開発施設には生産性向上人材育成支援センターがあり、人材育成に関する相談や育成プランの提案も行っています。
キャリアコンサルティング
企業内のキャリアコンサルティングは、新たに企業がキャリアコンサルティングを導入する際、試験的にキャリアコンサルタントと相談できる制度です。最近は人生100年時代といわれ働き方が多様化した影響もあり、企業が従業員のキャリア形成を手助けする必要性は増したと認識されています。このような状況から、2016年にキャリアコンサルタントは国家資格となりました。
現在は、キャリア形成サポートセンター事業が展開され、すべての拠点にキャリアコンサルタントが配置されています。そのため、企業がキャリアコンサルティングを実施する場合、キャリア形成に詳しいコンサルタントの支援を受けられます。社内でリカレント教育の実施を検討しているものの、資金面や職業訓練の内容に悩んでいる場合、ここで取り上げた支援制度を活用するとよいでしょう。なお、リカレント教育支援制度の詳細は、事前に厚生労働省の資料や問合せ窓口で確認できます。
厚生労働省 リカレント教育 (参照 2024-06)
厚生労働省 リカレント教育の推進に関する厚生労働省の取組について (参照 2024-06)
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