成果主義にはリスクあり?知っておきたいポイント

更新日:2023.03.01ビジネス豆知識

成果主義で利益増

かつて、成果主義はバブル崩壊をきっかけに多くの企業から注目されました。とくに関心を持たれた点は、コストを削減しやすいところです。ただ、このシステムにはメリットばかりでなく職場が結果を優先しがちになるといった欠点もあります。有効活用するには、システムの特徴をよく理解する必要があるでしょう。そこで今回は、成果主義の基本的な知識やビジネスで取り入れる際のメリット、注意点などをご紹介します

成果主義の基本的な知識

成果主義とは、簡単に表現すると成績や成果で評価するシステムのことです。日本では、バブルの崩壊を契機に本格的に導入され始めました。

成果主義の概要

成果主義では、個人の能力や仕事の良し悪しを成績や成果にもとづき判断します。年齢、学歴、勤務年数などは考慮されません。ビジネスの場合、あくまで評価期間中の成績・成果が判断基準に用いられ、採点結果は給与額や役職を決める際に反映されます。仕事の成果が評価対象に選ばれる意味では、とてもシンプルなシステムと考えられます。

能力主義および結果主義と混同される場合もありますが、これらとは似て非なるシステムです。能力主義は、仕事の成果でなく個人の能力について評価します。結果主義では、最終的に示された数値のみが評価対象です。

成果主義は、能力主義と異なり将来的なポテンシャルや習得している仕事のスキルには目を向けられません。結果主義との違いは、仕事の成果とともに最終的な結果が出るまでのプロセスも評価する点です。スキルに結果が伴わない時にはとくに着目せず、作業過程まで含めて成果と見なすところは成果主義ならではの特徴といえるでしょう。

日本で導入された背景

日本で成果主義が注目された主な要因は、1990年代に起きたバブル崩壊です。景気の大幅な悪化により、多くの企業はこれまでの運営システムを見直す必要に迫られます。1990年、不動産価格や株価の暴落によりバブル景気は終わりました。ほとんどの企業はその影響を避けられず、業績が悪化の一途をたどります。さまざまな分野でコストの削減が必要になり、数々の事業が縮小していきました。

なかでも人件費の問題は、企業にとって大きなネックになりました。従来通りに年功序列制度のもとで勤続年数にしたがい全社員の給与を上げると、人件費は膨らむばかりです。何も対策しなければ、売上が伸びなくても人件費のカットは望めません。そんな状況下で多くの企業が関心を寄せた仕組みが、成果主義による評価方法です。

このシステムであれば人件費の負担を軽減できると見込んだ経営者は、積極的に成果主義を導入していきます。当時は景気回復の兆候がなかなか見えないなか、従来型のスタイルから成果主義への移行は大きな流れになったと考えられます。

ビジネスに取り入れるメリット

成果主義をビジネスに取り入れる主なメリットは、社員のモチベーションの向上、コストの削減、優れた人材の確保、公平な評価を見込める点です。

モチベーションの向上

成果主義のもとでは仕事で業績を上げるほど、その社員の評価は高くなります。日頃の努力が実を結ぶと、それだけ昇給や昇進の可能性は広がるわけです。年齢や学歴に関係なく自分の頑張りが認められるとなれば、仕事へのモチベーションが向上しても不思議ではありません。勤続年数も問われないため、業務経験が浅い場合にも努力が無駄にならないと感じられます。それぞれの職場で従業員の士気が高まり多くの成果をもたらせば、企業全体の生産性の向上も期待できます。

コストの削減

成果主義では業績の有無が給与額を大きく左右するため、コストを削減しやすい特徴が見られます。これまで一般的であった年功序列の場合、昇給は当たり前でも余程の問題がなければ賃金カットは難しい状況でした。成果主義であれば年齢を考慮する必要はなく、成果に見合った分だけ給与を支払えば良くなります。

優れた人材の確保

成果主義は、優れた人材の確保にも効果的といわれています。高いスキルをもち多くの業績を上げられる自信のある人材ほど、このシステムを歓迎すると期待されるためです。優れたスキルがあれば難しい業務も迅速かつ的確に処理し、次々と成果に結び付けられる可能性は高くなります。そんな有能な人材にとって、成果主義は高評価を得るのに好都合といえるシステムです。就職するなら、まだ若いからと給与が低くなる職場より成果主義を導入した企業を選ぶのが自然と考えられます。

公平な評価

企業で成果主義を導入すると、社員や仕事に対する評価で公平性が増すメリットも期待できます。年齢は、どれほど努力しても変えられません。同じ業績を上げた場合、昇給するかどうか年齢によって決められたら若い従業員は不公平に感じるでしょう。それに対し、同等の評価が示されれば公平感は増すと見込まれます。仕事の成果でなく年齢を理由に昇給・昇進していると、人によっては努力する意味を見失うかもしれません。そんな事態を避けるためにも、成果主義の導入は効果を発揮すると考えられます。

導入時に注意したいデメリット

成果主義を導入する時に注意したいデメリットは、目先の成果にとらわれる、スタンドプレーに走りやすい、チャレンジ精神が乏しくなる、公平な評価基準の設定が難しいといった点です

目先の成果にとらわれがち

企業に成果主義が取り入れられると、業績の数が最優先され目先の成果にとらわれるケースが多く見られます。
成果主義では評価期間中の業績が採点の判断基準になるため、それに合わせ短期間で結果を出せる取り組みに目が向きやすい傾向があります。中長期的なビジョンで仕事を進めにくいところは、よく成果主義の欠点と指摘される問題です。

スタンドプレーに走りやすい

個人間ではお互いに成果を出すため競争意識が芽生えやすい反面、それぞれスタンドプレーに走る場合があります。自分を評価してほしいとの思いが強まると、他の従業員を手助けしなくなる、あるいは足を引っ張るかもしれません。従業員同士の仲間意識や弱まれば職場全体のチームワークは乱れ、生産性は落ちると考えられます。

チャレンジ精神は乏しくなる

成果主義は結果が重んじられるシステムであり、うまく成果を出せるか分からない新しい分野へのチャレンジ精神は乏しくなります。すでに売れている定番商品とまだ売れるかどうかデータがない新商品とでは、定番商品を手がけるほうが成果を出すには効率的です。新商品には失敗するリスクも十分にあり、成果主義のもとでは新規開発を避ける場面が増えるといわれています。

公平な評価基準の設定は難しい

成果主義は効果的に機能すると公平感を生みますが、実際に公平な評価基準を設定するのは難しい作業です。営業職は契約件数で、開発分野なら新商品を発表した数で成果をはっきり示せますが、事務職や研究職、また中長期的なプロジェクトの業績は数字に出にくい特徴をもっています。結果が見えないからと評価を下げると、不公平な印象を与えます。従業員が評価を不当に感じれば、モチベーションの喪失や離職を招くこともあります。評価を実施する際には、評価項目や判断基準が公平かどうか慎重に検討しなければならないでしょう。

企業がビジネスの現場で成果主義をうまく機能させるにはメリットばかりに注目せず、さまざまなデメリットもしっかり理解したうえで従業員が採点内容に納得できる評価方法を工夫することが望まれます。

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