失敗への対応によって、ビジネスの信用度が決まる
更新日:2023.03.31ビジネス豆知識ビジネスに失敗はつきものであり、完全に防ぐことはできません。一度失った信頼を取り戻せるかどうかは、問題発覚後の対応にかかっています。本記事では、過去に発覚した大手企業の不祥事や対応を例に挙げ、お詫びの気持ちが伝わる謝罪テクニックを解説します。
目次
大手企業による不祥事と対応
近年、国内企業による不祥事が度々発覚しています。記憶に新しいのが、2014年7月に発覚した個人情報流出事件です。通信教育事業における国内最大手企業の不祥事を、連日のようにメディアが取り上げました。事件が発覚したきっかけは、同社の顧客に届いたダイレクトメールです。同社のみに登録した個人情報にも関わらず、他社からメールが届いたことを不審に思った顧客は、「個人情報が流出しているのでは?」と問い合わせました。
同社がすぐに社内調査を行ったところ、最大2,070万件の個人情報流出が判明します。犯行に及んだのは、同社の100%グループ会社に勤務するエンジニアでした。顧客の個人情報を名簿業者に販売し、私的に利益を得ていたそうです。同社の最終報告では、4,800万人の個人情報が業者に流れ、推計4,000万人が被害に遭ったことが分かりました。
“史上最大の顧客情報流出”と謳われた本件ですが、その対応処理に2つの失点がありました。ひとつは、当時の経営者が「自分が社長になる前の流出だ」と記者会見で述べたことです。もうひとつは、「流出したのは氏名や住所であり、銀行口座などの情報ではないため保障しない」と明言したことです。こういった対応により、消費者や関係各所から大きな批判を浴びました。
通信教育事業は、顧客情報がビジネスの根幹となります。それにも関わらず、情報管理に落ち度があるなど問題です。また経営者の発言も波紋を呼び、対応すればするほど裏目に出る結果となりました。最終的には、高等裁判所において元エンジニアの減刑が認められ、同社の情報管理の甘さが指摘されることとなります。
不祥事の処理においては、迅速な初動対応と心からの謝罪、また再発防止の姿勢を経営者自らが見せなければなりません。これは大企業のみならず、中小企業や個人事業主も当てはまります。
見事な対応で信頼を回復したケースも
一度失った信頼を取り戻すは、非常に困難です。一方で、「見事」といえるトラブル対応により、信頼回復に成功した事例があります。2014年に発覚した「まるか食品株式会社」の異物混入事件です。ことの発端は、ある消費者がSNSに投稿した1枚の写真でした。同社が販売するカップ焼きそば「ペヤング」に昆虫が入っている様子が映し出された写真は、瞬く間に拡散されていきました。
同社は問題発覚当初「弊社の製造ラインではありえない」と対応し、SNS上で炎上しました。その後の社内調査により、「製造ラインにおける異物購入の可能性は否定できない」と報告します。そして、あらゆる再発防止策を公開しました。製造ラインへのカメラの導入や製造設備の刷新、パッケージの変更など、細やかな対応をすべて公表し、信頼回復に乗り出します。その結果、再販売後の同商品の売り上げは、大きく向上しました。
企業広報に詳しい弁護士の「中島茂(なかじましげる)」氏いわく、「同社は当初、トラブル対応に慣れていなかったのかもしれない」とのことです。それでもなお、誠心誠意の対応から消費者の信頼を取り戻し、現在も売り上げを伸ばしています。一度失った信頼を取り戻せるかどうかは、問題発覚後の対応がすべてです。その意味が良く分かる、見事なトラブル対応事例といえるでしょう。
お詫びの気持ちが伝わる謝罪方法とは?
これまで企業単位のトラブル対応を解説しましたが、基本部分は個人も変わりません。そこで、お詫びの気持ちが伝わる謝罪方法やポイントをご紹介します。
まずは頭を下げる
いかなる状況においても、まずは「大変申し訳ございませんでした」と頭を下げることが大切です。最初に謝罪を述べると相手の気分が穏やかとなり、善後策を話し合いやすくなります。逆にNGなのが、「○○の発生により○○できません。大変申し訳ございません」と謝罪の前に事情説明をすることです。人によっては、言い訳に捉える可能性があります。なお、ビジネスシーンにおいては「大変申し訳ございませんでした」「私の不手際でご迷惑をおかけしました」といった言葉遣いが適切です。
仕事のミスは直接謝罪
仕事のミスは、相手に直接謝罪するのが理想です。こちらの表情が相手に見えることで、誠意とお詫びの気持ちが伝わりやすくなります。ただし、相手のスケジュールによっては、直接謝罪することが困難なケースもあるでしょう。対面で謝罪できない場合、電話で謝罪した後にメールでもう一度謝ることをおすすめします。
電話やメールは便利ですが、こちらの表情が見えないのがネックです。よって直接謝罪以上に、発する言葉や文面を工夫しなければなりません。もし言葉選びを間違えると、さらなる不快を招いたり誤解を生んだりします。電話やメールで謝罪する場合、細心の注意を払うようにしましょう。
他者を引き合いに出さない
部下の不手際により、クライアントに謝罪することがあるかもしれません。その際に「弊社○○不適切ですので・・・」と自身に責任がないことをアピールするのは、逆効果です。謝罪時は他者を引き合いに出さず、自身の責任だけを言及するようにしましょう。
謝罪と同時に解決策を提示する
「大変申し訳ございませんでした」というフレーズに加え、すぐに解決策を提示することが大切です。例えば、上司から指示されていた企画書の提出を失念したとします。心からの謝罪をした上で、「○日の○時までに提出します」と具体的な解決策を伝えましょう。さらに再発防止に努める一言や、その具体案を添えます。自身のミスを認めた上で、今後どうするのかを述べることが大切です。
謝罪はスピードが命
仕事のミスが発覚した段階で、すぐさま上司に報告します。日をまたぐのはNGであり、時間が経てば経つほど状況は悪化します。その際、具体的に何が問題なのか、また現時点で分かっていることを整理し、解決策も沿えて伝えてください。
謝罪におけるNGな対処法
「これだけ避けたい」という謝罪時のNG対処法をご紹介します。
「誤解を与えてしまい申し訳ありません」はNG
ビジネスシーンにおいては、自身に非がなくても謝罪を求められる状況があります。その際、「誤解を与えてしまい申し訳ありません」と謝罪するのは避けましょう。“誤解”という表現には、自身に非がないこと主張するニュアンスがあります。失礼なフレーズなため、使わないように心がけましょう。
不用意に反論する
謝罪時に叱責を受け、それに対して反論する方がいます。不用意な反論は相手の怒りを買うだけでなく、さらに信頼を失いかねません。もし状況を改善したいのであれば、心から謝罪した上で質問すると良いでしょう。「厚かましいお願いではございますが、こうした場合はどうすればよろしいのでしょうか?」と聞くことで、状況を打開したいという意思が伝わります。
叱責に対して黙り込むのはNG
ミスを報告した結果、上司から叱責されることもあります。叱責を受けている最中に黙り込むのは、絶対に避けましょう。「黙る=逃げている」と捉えるため、相手の怒りをさらに買う可能性あります。上司の目を見ながら相づちを打ち、しっかりと反省の意を示すことも大切です。それが自身の成長につながるでしょう。
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