従業員の睡眠不足は生産性の低下を招く?

更新日:2023.03.23スタッフブログ

寝不足の従業員

仕事の生産性やモチベーションに影響を及ぼす習慣はさまざまですが、睡眠不足はその代表例です。睡眠不足が続けば、仕事に集中できず、思う様な成果を残せないでしょう。そこで今回は、企業側が取り組むべき従業員の睡眠不足を防ぐ秘訣をご紹介します

睡眠負債とは何か?

睡眠不足が慢性化した状態を「睡眠負債」と呼びます。睡眠不足が借金の様に積み重なっており、返済しなければならないものというニュアンスを含めて「負債」と表現されています。2017年の「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10にも選ばれ、世間から注目を集めました。

睡眠不足による経済損失

睡眠不足は、単に個人の問題にとどまりません。会社全体の利益にも影響を与えているのです。経済協力開発機構(OECD)の2018年の調査では、日本の睡眠時間がOECDに加盟している先進国のなかで、もっとも短くなったことがわかりました。
そして、米国の調査では、日本は睡眠不足によって年間15兆6000億円もの経済損失を受けていると報告されています。GDP換算で2.92%の損失です。日本の企業のなかには、従業員の睡眠不足によって、自ら利益を手放しているところもあるかもしれません。

過去には、睡眠時間を削ってまで働くことが美徳とされていたり、「寝る=休んでいる」とみなされたりした時代もありました。しかし、働き方改革が叫ばれている昨今、従業員の睡眠時間を確保し、働きやすい環境を整える対策も、企業側に課せられた課題といえるでしょう。

睡眠負債チェックリスト

睡眠負債は、自覚のないまま溜まっているケースも珍しくありません。睡眠負債に関するチェックリストを下記でご紹介します。従業員の睡眠不足チェックにお使いください。当てはまるものが多い場合は、生活習慣を見直す、専門のクリニックを訪れるなど対策が必要かもしれません。

□朝起きるまでに時間がかかる
□起きた直後にだるさを感じる
□午前中でも強い眠気におそわれる
□横になるといつでもどこでも寝てしまう
□平日と比べて休日は睡眠時間が2時間以上長い
□食事の時間や回数が日によってバラバラ

睡眠不足が進む原因

睡眠不足を日々感じている方は多いはずです。なぜ睡眠不足は解消できず、睡眠負債へとつながってしまうのでしょうか。

就寝前のスマートフォンやパソコン

近年とくに指摘されているのが、就寝前のスマートフォンやパソコンです。スマートフォンやパソコンから発せられる光(ブルーライト)は、体内のメラトニンの分泌量を減らす効果があります。メラトニンは眠気を引き起こすホルモンのため、その分泌量が減ることで眠れなくなってしまうのです。就寝前のスマートフォンは、とくに若年層に多く、厚生労働省も注意喚起を行っています。

寝酒、アルコール

「お酒を飲まないと寝られない」という言葉を耳にすることがあります。しかし、アルコールには睡眠の質を低下させる効果があるため、飲酒量には気をつけなければなりません。アルコールの利尿作用によって夜中に起きてしまうこともあるでしょう。アルコールを利用して眠る習慣は、早めに直さないと癖になってしまいます。気づいた段階でなるべく早く対策を立てましょう。

企業の都合で従業員の睡眠時間を削ってはいけない

睡眠不足の原因は、従業員個人だけでなく企業側にあるケースも目立ちます。不必要な残業や過度なストレスなど、眠るべき時間に眠れなくなってしまう原因はさまざまです。

注意したいのは、企業の都合で従業員の睡眠時間を削ってはいけない点です。従業員は会社の財産であり、従業員の健康状態を気にかけるのも企業の役目といえます。もし眠れない従業員がいる場合は、今すぐに対策を打ち出しましょう。

睡眠不足がもたらす問題について

睡眠不足は、従業員や会社に大きな問題をもたらします。以下では、その一例をご紹介します。

仕事のパフォーマンスが下がる

睡眠の質と仕事のパフォーマンスには密接な関係があります。睡眠不足の状態で仕事に取り組んでも、普段のパフォーマンスを発揮できないでしょう。6時間睡眠を2週間続けた場合、2日間徹夜したときと同様の作業効率になるという研究結果もあります。この状態では仕事に集中することも難しく、企業にとっては大きなマイナスです。

生活習慣病との関連性

睡眠は、仕事だけでなく健康状態にも影響を与えます。自治医科大学の研究によると、睡眠時間が6時間以下の方と7~8時間の方を比較すると、前者のほうの死亡率が2.4倍高くなるそうです。その他にも、交通事故による死亡率や免疫力の低下など、睡眠不足に関する健康被害は多数報告されています。

会社側ができるマネジメント

経営的な観点から従業員の健康管理を行うことを「健康経営」と呼びます。健康経営は、企業の持続可能性や生産性向上のためには、欠かせない視点です。以下では、健康経営を実現するために、会社側ができる従業員の睡眠に関するマネジメントをご紹介します。

睡眠に関する知識を身につける

まず、経営者や上層部は睡眠に関する知識を身につける必要があります。「睡眠時間は5、6時間もあれば大丈夫」「寝ずに仕事をすることが美徳」など、間違った理解が蔓延してしまいます。正しい知識を取得できれば、夜遅くまで飲みに連れまわしたり、不必要な残業を強要したりすることもなくなるでしょう。

勤務間インターバルを意識する

勤務間インターバルとは、仕事を終えてから次の仕事がはじまるまでの時間を指します。EUの主要国では11時間や12時間以上と法令で決まっており、違反した場合の罰則も制定されています。
日本でも、度重なる過労死や労働問題を受けて、勤務間インターバルに関する議論が進んでいます。2019年4月に施行された働き方改革関連法案では、勤務間インターバル制度が努力義務化されました。しかし、罰則規定はなく、制度の導入も各企業の裁量に任せているのが現状です。
勤務間インターバルをしっかりと確保することで、従業員の精神的な安定が保たれ、睡眠不足の解消にも一役買ってくれるでしょう。「勤務間インターバルは●時間」と、社内規則等で定めるのがおすすめです。

個人でできる睡眠改善

質の良い睡眠を摂るには、企業側だけでなく個人でも努力しなければなりません。以下では、個人で取り組める睡眠改善についてご紹介します。

就寝1時間前には電子機器を片づける

就寝前の電子機器の使用は、脳を覚醒させ、深い睡眠の妨げになります。その状態で眠っても、十分な休息をとれず、翌朝の目覚めが悪くなってしまいます。就寝の1時間前には電子機器をすべて片づけ、視界や意識から遠ざけましょう。スマートフォンやタブレットは機内モードに切り替えておくのがおすすめです。c

睡眠サイクルを意識する

人間には、あらかじめ一定の睡眠サイクルが設けられています。しかし、慢性的な睡眠不足に陥っている方は、睡眠サイクルが崩れ、眠るべき時間に眠れない傾向にあります。夜眠って朝起きる、といった本来の睡眠サイクルに戻すことが、睡眠負債を取り返す秘訣です。

睡眠補助ツールを使用する

サプリメントやアプリ、デバイスなど、現在はさまざまな睡眠補助ツールが販売されています。自分の力ではなかなか寝付けない場合は、外部の睡眠補助ツールを利用するのもひとつの手段です。お酒の力を借りて眠ることがない様にして下さい。
睡眠不足は、現代人が抱える大きな問題です。個人で解決できないケースも目立つため、経営層がトップダウンで改革することが重要です。従業員の睡眠不足解消に取り組めば、会社としても大きな利益を得られるでしょう。

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