コールセンターは地方活性化の起爆剤になるか?

更新日:2023.08.09コールセンター

北海道に進出するコールセンター

多くの自治体が「コールセンター支援制度」を設けることにより、『コールセンターの地方進出』が進んでいます。コールセンターが地方に増えれば、雇用創出、地域活性化などさまざまな期待が膨らむでしょう。今回は、地方に目を向けはじめたコールセンターの現状と動向についてお伝えします。

双方にメリットがある地方進出

コールセンター支援制度とは?

地方自治体では現在、コールセンターの地方進出を促進する目的で、さまざまな助成制度を設けています。支援や助成を行っている地方都市は全144自治体。その中から主な助成内容をいくつかご紹介します。

北海道千歳市『千歳市工業振興条に基づく助成措置』

コールセンターを新設・増設した企業に対し、固定資産税相当額の3年間(合計限度2億円)と、新規雇用ひとりにつき30万円が支給されます。投資額2,500万円超、3人以上雇用を増やすことが条件。また、賃借施設での開設の場合は、500万円限度の研修費が支給されます。

福島県福島市『福島市企業立地促進条例に基づく奨励措置』

助成対象となる企業は、コールセンターはじめ、製造・物流・研究開発関連企業など。事業所を市内に新設・増設・移設した企業に対し、用地取得助成金が支払われます。そのほか、一定の条件を満たした企業に対して助成される「操業奨励助成金」「雇用奨励助成金」などがあります。

徳島県『コールセンターに対する優遇制度』

新規地元雇用に積極的なコールセンター新設事業所(操業開始から1年以内に10人以上雇用が条件)に対し、正規雇用者ひとりにつき70万円が支給されます。そのほか、「専用通信回線使用料の半額助成」「研究経費半額助成」など、条件に応じて特例措置が受けられるさまざまな助成があります。

コールセンターが地方にもたらす効果

地方自治体が助成制度を打ち出す目的は、雇用の創出を増やして、地域振興に役立てることにあります。企業の進出が盛んとなれば、その地域に多くの雇用が生まれ、都市部に人口が流出してしまうリスクを回避できるでしょう。企業が磁力となり、若い世代を中心に地域住民が根付いてくれれば、税収も安定し、財政難に悩む地方都市にとっては打開策になることも。人口減・財政難に悩む地方自治体にとって、コールセンターの誘致はこれらの問題を解決する“起爆剤”となり得るのです。

また、製造業や工業関係の企業と異なり、コールセンター設備は環境に与える負荷がほとんどありません。そのため、用地に大きな施設を建設しても地元住民の理解が得られやすいメリットがあります。雇用の機会を増やして地域の活性化につなげ、なおかつ地元住民との融和も図れる。地方にとって魅力ある要素が多い点を考えると、この流れはしばらく続きそうです。

公害を発生させる工場

コールセンターにとっての地方進出メリット

地方で事業展開するメリットは、コールセンター側にもあります。従来、地方進出を果たすコールセンターの目的は、人件費のカットにありました。都心部より低い労働単価で人材を抱えることができる地方は、経費削減を狙うコールセンターにとって魅力的。さらに地価も低く、賃料や設備コストなども抑えられます。これまで沖縄県がコールセンター集積地としての役割を持ったのも、そうした一面があったのです。

ところが、2011年の東日本大震災以降、防災意識の高まりを受け、コストよりBCP対策として地方進出を重視するコールセンターが増えています。関東や東海など、将来的に大規模震災の発生が予想される地域は特に何らかの対策が必要。リスク分散の意味合いから、地方への進出を加速させる動きが目立っています。

さらに、雇用機会の増加を狙う地方自治体の助成制度もあり、地方での事業展開は設備投資や人件費の抑制に大きな効果を生みます。「コールセンター業界は人手不足?背景にある問題とは?」でもご説明した通り、離職率が高いことで知られるコールセンター業界にとって、人材確保も大きな課題のひとつ。新規雇用に助成を出す自治体のバックアップがあれば、人材難を克服する打開策としての期待感もあるわけです。

>>BCPについて詳しく知りたい方はこちら

全国には、コールセンターの集積地がある

地方には、「コールセンター集積地」と呼ばれる地域があります。コールセンターの拠点を多く構える地域では、昨今の地方の“コールセンター熱”の影響を受け、状況に変化が見られます。

下記は、コールセンター集積地の拠点数の順位です。(2016年7月時点)

  1. 北海道77(前年比-1)
  2. 沖縄県73(前年比-15)
  3. 福岡県63(前年比+17)
  4. 宮城県45(前年比+5)
  5. 宮崎県35(前年比+5)
  6. 青森県34(前年比+3)
  7. 新潟県16(前年比+1)
  8. 長崎県15(前年比-13)
  9. 愛媛県14(前年比±0)

国内有数の集積地だった沖縄県も、昨今は減少傾向にあります。一方、福岡県では1年間で17拠点も増加しており、誘致が加速する地域と消極的な地域の二極化が進んでいる状況です。

助成制度の影響もあり、一極集中ではなく、多くの地域にコールセンターが分散されていく状況が加速するかもしれません。とはいえ、一部の上位自治体に多くのコールセンターが集中している状況には変わりありませんので、コールセンター進出の恩恵が広く地方に行きわたるような政策や施策が期待されます。

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