優良誤認とは?違反しないためのポイント
更新日:2023.07.19ビジネス豆知識商品・サービスの広告を作成する際、誇張表現を避けるのは難しいとの声が多く聞かれます。ただし、優れた品質などを強調する場合は、景品表示法の優良誤認に該当しないか注意する必要があります。安易に誇張表現を用いると禁止事項に触れ、規制を受けるかもしれません。違法行為を防ぐには、優良誤認について理解しておくとよいでしょう。そこで今回は、優良誤認の定義や規制対象になる要件を解説し、違法行為を防ぐためのポイントをご紹介します。
目次
優良誤認の定義や判断基準
優良誤認は、自社の商品・サービスが備える品質や性能を実際より優れていると誤解させる表示です。違法かどうかの判断には、原材料の品質などが用いられます。以下では、言葉の定義や法律上の判断基準をご紹介します。
言葉の定義
景品表示法における優良誤認とは、商品・サービスの優良性について誤解される恐れがあるケースを指した言葉です。消費者庁の説明によれば、次のケースが該当します。
- 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
- 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
いずれのケースも、一般消費者の自主的・合理的な判断や公正な市場競争を妨げる可能性があり、景品表示法で禁止されています。高性能を誇る商品・サービスも、品質などを過大評価した表示は法律違反です。優良性を実際より誇張した表示は、消費者を不当に誘導する恐れがあると認定された場合、「優良誤認表示の禁止」に抵触します。
“優良誤認とは”.消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/
(参照2023-06-21).
法律上の判断基準
法律上、優良誤認表示の禁止に抵触するか検討する時は、品質・規格・その他の3つが判断基準に用いられます。それぞれの具体的な内容は、次の通りです。
- 品質:原材料・純度・添加物・鮮度・栄養価など
- 規格:国や専門機関が定めた規格・等級など
- その他:原産地・製造方法・有効期限など
優良誤認に該当するかどうかは、これらの項目に関する表示が社会的に許される範囲か否かで判断されます。商品・サービスの宣伝は消費者の興味を引く必要があり、誇張表現を避けにくいため、すべての誇張が法律違反になるわけではありません。
有利誤認との違い
優良誤認に類似する表示としては、有利誤認が挙げられます。これらの違いは、主に規制対象の差異です。優良誤認の規制対象は、商品の原材料やサービスのレベルが実際より高いと偽った表示です。テレビCMから新聞広告、商品のラベル、店内のポップ、動画配信の宣伝文句まで含まれます。
有利誤認の場合、販売価格をはじめ取引条件に関する表示が規制対象です。値引きやアフターサービスに関する表示が実態を伴わなければ、消費者に誤解される恐れがあるとの理由により規制を受けます。商品・サービスの品質や取引条件を宣伝する時は誇張表現になりやすいため、優良誤認や有利誤認に該当しないか注意する必要があります。
優良誤認の要件や行政処分の流れ
商品・サービスが優良誤認に認定される要件は、「事業者による表示」などです。優良誤認の要件を満たすと、行政処分を受ける場合があります。以下では、優良誤認の主な要件や行政処分の流れをご紹介します。
優良誤認の要件
商品・サービスの表示が優良誤認になる主な要件は、次の4つです。
事業者による表示
事業者による表示は、一般企業の広告だけにとどまりません。医療法人や学校法人まで、経済活動を伴う事業者の表示は規制対象に含まれます。
自己が供給する商品・役務についての表示
自己が供給する商品・役務は、自分で販売する品々を指します。アフィリエイターなど他社に広告媒体のみ提供する事業者は、基本的に優良誤認の適用対象外です。
一般消費者の誤解につながる表示
優良誤認表示の規制は、一般消費者を守るために設けられています。適切な消費活動が阻害される事態を防ぐ目的があり、事業者向けの広告表示には適用されません。
商品・役務の品質や規格を偽った表示
品質や規格の虚偽表示も、優良誤認を適用するうえで必須の要件です。実際は虚偽がなくても、その根拠となる資料を示さないと規制を受ける場合があります。
なお、これらの要件の詳細については、消費者庁の公式ページで確認可能です。
行政処分の流れ
優良誤認を疑われた時の行政処分は、大きく措置命令と課徴金納付命令の2段階で進められます。措置命令の内訳は、違反行為の差止め・消費者への周知・再発防止策の計画および実行などです。優良誤認に限らず景品表示法に抵触すると、これらの措置の実施を消費者庁から命じられます。
また、優良誤認の恐れがある事業者は、消費者庁から虚偽表示でないと説明できる資料を求められる場合があります。この規定は「不実証広告規制」と呼ばれ、資料の提出期限は消費者庁の請求から15日以内です。正当な理由がない場合、該当資料を期限内に提出しなければ、虚偽表示の有無に関係なく不当表示と見なされます。
課徴金納付命令は、商品・サービスの表示が不当と認められた時に下されます。課徴金の適用範囲は、違反行為が実施された期間です。具体的な金額は、規制対象になった商品・サービスの売上額×3%で計算されます。また、措置命令に違反すると刑事罰に発展する可能性もあるため、優良誤認を疑われた時は速やかに対処することが望まれます。
優良誤認を防ぐためのポイント
優良誤認は意図的でなくても規制を受けるため、違法行為を防ぐには日頃から対策することが大切です。以下では、広告表示を作成する時に心がけたいポイントをご紹介します。
景品表示法の周知
優良誤認を防ぐうえで、社内における景品表示法の周知徹底は重要です。従業員に景品表示法を周知してもらう方法としては、新人研修や定期的な社内研修が挙げられます。同法に詳しい弁護士を講師に招けば、研修の参加者は法的知識への理解を深められるでしょう。
また、いずれの広告表示が優良誤認につながるか知るには、消費者庁のガイドラインを熟読する方法も効果的です。景品表示法関係のガイドラインに目を通せば、何が問題になるか把握できると考えられます。景品表示法に関する法的知識を社内全体で身につければ、優良誤認の防止策は進めやすくなると期待できます。
根拠資料の準備
新たに商品・サービスの広告を作成する時は、根拠資料の準備が不可欠です。商品・サービスの優良性を裏付ける資料があると、それを根拠に広告表示を考案できます。客観性の高い資料を活用すれば、不当な過大評価や誇張表現を防ぐのに役立つと考えられます。
優良誤認の防止に使える根拠資料を知るには、消費者庁が示したガイドラインを確認するとよいでしょう。不実証広告に関するガイドラインは、優良誤認を疑われた時に必要な根拠資料が示されています。ガイドラインの条件に合う資料を準備しておけば、優良誤認の疑いを避けやすくなると見込めます。
チェック体制の構築
自社で商品・サービスの広告を作成する場合、第三者のチェックを受ける体制づくりも必要です。社内研修で法的知識を身につけても、言葉選びの些細なミスが優良誤認と判断される事態は各所で起きています。法律に抵触するリスクを下げるには、広告を作成した後にチェックする体制の構築が望まれます。
ただし、広告の作成者が客観的に点検するのは難しいでしょう。そのため、広告表示のチェック作業は、外部機関に任せるのが理想的です。社内で点検する場合も、当事者でなくコンプライアンス部門で作業を引き受ける必要があるといわれています。
商品・サービスの広告で誇張表現は避けにくく、優良誤認を防ぐため万全を期すのは簡単ではありません。それでも、法的知識・根拠資料・チェック体制について対策を進めておけば、違法行為を防止するうえで大きな効果を発揮すると考えられます。
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